2009年10月30日
この論文「Effectiveness and Cost-Effectiveness of Vaccination Against Pandemic Influenza (H1N1) 2009」(スタンフォード大学のNayer Khazeniらの研究)は、『内科開業医のお勉強日記』さんのサイトでも紹介されていた論文だが、非常に興味深い分析がされている。
妙な政治主導で、せっかく決まりかけていたワクチン一回接種の方針を覆し、結果として、一番インフルエンザ脳症にかかりやすい小学校低学年への接種を、クリスマスまで遅らせてしまった厚生労働省政務官殿に見せたい論文である。
概要は、次のとおりである。
研究目的の意図は、もっとも効果的なタイミングと範囲で、ワクチン接種を 行うには、どうしたらいいいのか、ということである。
そこで、10月から11月にかけてのタイミングにおいて、いくつかのシナリオを用意した。
対象は、アメリカの主要都市で、人口は、八百三十万人とする。
ワクチン接種は、10月中旬から11月中旬のあいだとする。
評価の手法は、感染・死亡回避可能数、コスト、QALYs (質調整余命年数=健康の質で補正した生存年数、数値が高いほど、健康な状態での長生きを表しうる。)、増分費用対効果(incremental cost-effectiveness ratio: ICER)
とする。
前提
初感染の患者が、1.5倍の二次感染者を生むとして、人口の40パーセントに対するワクチン接種を10月と11月のいずれのタイミングでおこなったら、コスト削減につながるのか?
分析の結果
ワクチン接種を10月に行った場合、
2051人の死者を回避できる。
QALYs値は、69 679である。
コスト削減は、
ワクチン接種を行わなかった場合に比して、4億六千九百万ドルの節減となる。
ワクチン接種を11月に行った場合、
1458人の死者を回避できる。
QALYs値は、49 422 である。
コスト削減は、
ワクチン接種を行わなかった場合に比して、三億二百万ドルの節減となる。
ワクチン接種のコスト節減効果は、
ウイルスの潜伏期間が長いほど
感染率が低いほど
薬剤によらない感染介入が、感染ピークに遅れれば遅れるほど
大きい。
したがって、もし、感染ピークが10月中旬より速い場合は、ワクチン接種によって人命を救う確率が低くなり、また、対コスト効果は少なくなる。
結論
早期のワクチン接種がより多くの死者を回避でき、また、コスト節減につながる。
ワクチン皆接種は、必ずしも、パンデミックの期間を 短くしうるウイルス増殖率の減少には、つながらない。
以上
このところ、一度やりたかったのと、半分ボランティア気取りで、暇をみて、近くの小学校の通学安全指導をしている。
簡単に言えば、「緑のおじさん」だ。
子供たちとの会話にも、いろいろな発見があって、面白い。
「ホットケーキの粉で、クッキー作る方法、おじさん、知っている?」なんて質問をされても、答えられるはずがない。
「大根ってのは、古代ギリシャ・ローマの時代からあったんだよ。」知らなかったぜ-。
ネットで調べたら、たしかに、古代ギリシャでは、刑罰として、大根を尻の穴に突っ込む、っていうのもあったらしい。
今の子供たちの情報源は、飛躍的に拡大しているらしい。
時に、「子供たちに注意したら、馬鹿といわれた」といって、苦情を言ってくるおばさんもいる。
今日も、そんなおばさんが来て、「このごろの子供は、どうしようもない。」っていきり立つものだから、ここは、「親に代わって」というべきか「先生に代わって」というべきか、迷ったが、結局、「子供にかわって、お詫びします。」って、謝まっている最中に、後ろから、野太い声が—-
「曲がるんだけど」そして、もう一回、「曲がるんだけど」
振り返ると、白い三輪バイクに、白いヘルメットのおっさんが—
もっとも、この道は、一方通行なので、ちょっと大きめの車は、曲がるのに、縁石ぎりぎりを使って、曲がらなければならないところだ。
でも、このおっさんの乗っているのは、三輪バイクなんで、ちょっと大回りをすれば、難なく曲がれるはずなのに—-
と思いながら、その声の主のヘルメットを見ると、黒々と「〇〇区議会」の大文字が—
そういえば、このおじさん、確か、この小学校のOBで、卒業式なんかでも、よく、見る顔だ。(お名前は、一定期間は出しません。)
しかし、このものの言い方から見る限り、区議会議員としてのノブレス・オブリージュのひとかけらも、見当たらない。
「だったら、自分で旗振ってみたらいいじゃないか。」といいたい気持ちをぐっとおさえて、にこやかに笑みのみを返した。
水戸黄門なら、ここで、「助さん、格さん、懲らしめておやりなさい。」というところだが。
それとも、このおじさん、石*伸*さん系統なんで、政権交代で、このところ、ちょっと、余裕なくして、オヤジ同様(w)機嫌悪いんかしら?なんて、余計なことも思ってしまった。
それにしても、世間一般の挨拶と、ものの言い方もしらない絶滅危惧種的な区議会議員は、これに限らず、まだ、多く生息しているのかもしれない。
元議会人である私としては、なんとも、やり切れない気持ちになった、今日の一幕ではあった。
本日、WHOから発表された
「Experts advise WHO on pandemic vaccine policies and strategies」
の概訳です。
WHOの免疫化に関する戦略的勧告専門家グループ(SAGE)は、10月27日から29日にわたって会議をひらき、 現在における世界の感染流行の疫学的状況について再検討し、公衆衛生的な観点からの問題を考慮した。
そこでは、ワクチンの免疫原性についての臨床実験からみてのワクチン接種の可能な状況や、現在接種中の国々における安全性のモニタリングについての速報結果などについて、議題となった。
同時に、ウイルスからの防御に必要な接種回数についてや、ことなった年齢層において、季節性と新型とのワクチンのと同時接種や妊婦へのワクチン接種の問題についても議題となった。
さらに、2010年における南半球での季節性インフルエンザワクチンの推奨構成株についても、議題となった。
①現在の状況
世界の現状は、ティーンエージャーやヤングアダルトの感染が依然として増加続けており、また、乳幼児の入院率も増加している。
患者の1パーセントから10パーセントが、入院を 必要としている状況である。
また、入院した患者の10パーセントから25パーセントが、集中治療室への入室を必要とする状況である。
そのうちの2パーセントから9パーセントが重症である。
すべての入院者の7パーセントから10パーセントが妊婦であり、一般人と比較すると、妊婦は、その10倍、集中治療室での看護を必要とする状況である。
このような現在の状況を踏まえ、 専門家は、以下の勧告をする。
②ワクチン接種は、一回を推奨する
現在認可されているワクチンについて、それが、生であろうと、不活化であろうと、アジュバ゜ント入りであろうとなかろうと、監督機関からの指示が一致している場合には、10歳以降の成人・青年への接種は、一回接種を推奨する。
生後6ヶ月から10歳以下の子どもについての免疫原性データが限られており、更なる研究が必要である。
国が子供たちに優先接種順位を 置いている国においては、て゜きるだけ多くの子どもたちにワクチン接種がいきわたるように、一回接種を推奨する。
なお、免疫障害を持つ人々に対しては、その投与量如何について、更なる研究が必要であると強調している。
③季節性インフルエンザワクチンと新型インフルエンザワクチンの同時投与について
季節性インフルエンザワクチンと新型インフルエンザワクチンの同時投与については、臨床実験が進行中であるが、CDCの見解では、弱毒化した生ワクチンについては、同時投与は避けるべきであるとしている。
季節性・新型両方のワクチンが不活化クチンであったり、片方のみ生ワクチンであった場合では、同時投与は許される、としている。
このような場合の同時投与では、有害事象のリスクを増大させる証拠は、なんら見当たらない、と、している。
ワクチンの安全性については、これまでワクチン接種したものについてのモニターでは、異常な副作用は見られていない。
いくつかの副作用例は、あるが、それらは、季節性インフルエンザワクチン投与で見られる範囲のものにとどまっている。
現在のところは、安全性は確認されているが、引き続きモニターは続ける。
④妊婦へのワクチン投与の安全性について
妊婦へのワクチンについて、実験動物への生弱毒化ワクチンの投与では、アジュバントのあるなしにかかわらず、受胎能力,妊娠、胎芽の発達、胎児の発達に対しての、直接的・間接的影響は見られていない。
これらのことから、特定の禁忌症状が確認されない限り、認可されたワクチンであれば、妊婦へのワクチン使用は可能である、としている。
⑤2010年の南半球でのワクチン推奨株について
二つのオプションについて、検討された。
ひとつは、三価ワクチン(H1N1.H3N2.B型)、
もうひとつは、二価ワクチン(H3N2.B型)である。
後者については、現在の新型H1N1ワクチンを補う形での接種となる。
専門家グループとしては、両者のオプションとも可能な選択である、とした。
以上
本日、WHOから発表された
「Experts advise WHO on pandemic vaccine policies and strategies」
の概訳です。
WHOの免疫化に関する戦略的勧告専門家グループ(SAGE)は、10月27日から29日にわたって会議をひらき、 現在における世界の感染流行の疫学的状況について再検討し、公衆衛生的な観点からの問題を考慮した。
そこでは、ワクチンの免疫原性についての臨床実験からみてのワクチン接種の可能な状況や、現在接種中の国々における安全性のモニタリングについての速報結果などについて、議題とした。
同時に、ウイルスからの防御に必要な接種回数についてや、ことなった年齢層における季節性と新型とのワクチンとの同時接種や、妊婦へのワクチン接種の問題についても議題とした。
さらに、2010年における南半球での季節性インフルエンザワクチンの推奨インフルエンザワクチン製造株の構成についても、議題とした。
①現在の状況
世界の現状は、ティーンエージャーやヤングアダルトの感染が依然として増加し続けており、また、乳幼児の入院率も増加している。
患者の1パーセントから10パーセントが、入院を 必要としている状況である。
また、入院した患者の10パーセントから25パーセントが、集中治療室への入室を必要とする状況である。
そのうちの2パーセントから9パーセントが重症である。
すべての入院者の7パーセントから10パーセントが妊婦であり、一般人と比較すると、妊婦は、その10倍、集中治療室での看護を必要とする状況である。
このような現在の状況を踏まえ、 専門家は、以下の勧告をする。
②ワクチン接種は、一回を推奨する
現在認可されているワクチンについて、それが、生であろうと、不活化であろうと、アジュバ゜ント入りであろうとなかろうと、監督機関からの指示が一致している場合には、10歳以降の成人・青年への接種は、一回接種を推奨する。
生後6ヶ月から10歳以下の子どもについては、免疫原性データが限られており、更なる研究が必要である。
国が子供たちに優先接種順位を 置いている国においては、できるだけ多くの子どもたちにワクチン接種がいきわたるように、一回接種を推奨する。
なお、免疫障害を持つ人々に対しては、その投与量如何について、更なる研究が必要であるということを強調しなければならない。
③季節性インフルエンザワクチンと新型インフルエンザワクチンの同時投与について
季節性インフルエンザワクチンと新型インフルエンザワクチンの同時投与については、臨床実験が進行中であるが、CDCの見解では、弱毒化した生ワクチンについては、同時投与は避けるべきである、としている。
季節性・新型両方のワクチンが不活化ワクチンであったり、片方のみ生ワクチンであった場合では、同時投与は許される。
このような場合の同時投与では、有害事象のリスクを増大させる証拠は、なんら見当たらない。
ワクチンの安全性については、これまでワクチン接種したものについてのモニターでは、異常な副作用(副反応)は見られていない。
いくつかの副作用(副反応)例は、あるが、それらは、季節性インフルエンザワクチン投与で見られる範囲のものにとどまっている。
現在のところは、安全性は確認されているが、引き続きモニターは続ける。
④妊婦へのワクチン投与の安全性について
妊婦へのワクチンについて、実験動物への生弱毒化ワクチンの投与では、アジュバントのあるなしにかかわらず、受胎能力,妊娠、胎芽の発達、胎児の発達に対しての、直接的・間接的影響は見られていない。
これらのことから、特定の禁忌症状が確認されない限り、認可されたワクチンであれば、妊婦へのワクチン使用は可能である。
⑤2010年の南半球での推奨インフルエンザワクチン製造株の構成について
二つのオプションについて、検討された。
ひとつは、三価ワクチン(H1N1.H3N2.B型)、
もうひとつは、二価ワクチン(H3N2.B型)である。
後者については、現在の新型H1N1ワクチンを補う形での接種となる。
専門家グループとしては、両者のオプションとも可能な選択である、とする。
以上