笹山登生のウォッチ&アナライズ –


2009年10月14日

羽田空港ハブ化とサード・パーティー・リスクの増大

Category: 未分類 – Tatsuo Sasayama 3:46 PM

前原誠司国土交通相が、羽田空港の「ハブ空港」化を鮮明にする方針を打ち出した。

同時に、これまでの成田・国際化を尊重しつつ、羽田の国際化につとめる、という方針を一転し、「成田・羽田の国際・国内の分離を取っ払う」との踏み込んだ発言をした。

さらに、来年10月の第4滑走路完成を機に、24時間態勢で国際便を運航する構想についても、言及した。

関西空港など、羽田以外の拠点空港の今後については、「併せて関西3空港(関空、伊丹、神戸)のあり方を検討していきたい」などと述べた。

ここで、気になるのは、羽田空港の「ハブ空港」化と、24時間態勢化にともなう、サード・パーティー・リスクの増大である。

航空機そのもの自体の安全性は、年々高まっているが、空港におけるサード・パーティー・リスクは、ますます増大しているというのが、世界のハブ空港での趨勢であるからだ。

サード・パーティー・リスクとは、次のようなことである。

航空機事故の原因としては、全体の事故件数に占める割りあいを見ると、着陸34パーセント、離陸16パーセント、最終進入11パーセント、クルージング9パーセント、駐機8パーセント、となっており、圧倒的に、離発着時の事故が多い。

しかし、航空機の発着に伴う発着一回あたりの離陸・着陸のリスクは低減しつつある。

それにもかかわらず、総発着数の増大が、ハブ空港化によって、巨大な数に及ぶことによって、事故確率が増大し、着陸航路や離陸航路のゾーンにおける第三者に対するリスクが、累乗的に増大するということである。

このサード・パーティー・リスクという問題は、比較的に新しい問題であるが、ヨーロッパでは、すでに深刻な問題として捉えられているようだ。

これまで、このサード・パーティー・リスクは、アセスメントの概念では、騒音などの一般的な環境インパクトへのアセスメントの中に包摂されてしまい、環境問題の中のいっぱひとからげの中で扱われてきた。

しかし、イギリスやオランダでは、このサード・パーティー・リスクについて、独立したアセスメントを行うようになってきた。

また、サード・パーティー・リスクには、さらに、二次的なサード・パーティー・リスクが伴う。

それは、航空路下の精製所や発電プラントへのリスクがさらに近隣の住民リスクにつながるという例である。

サード・パーティー・リスクは、二つのリスク(個人的リスク-Individual Riskと社会的リスク- Societal Risk-)に分かれる。

サード・パーティー・リスクの第一次的なリスクを低減しうる対策としては、鳥対策を含め、いろいろとあるが、決定的なリスク低減の方策は、ないようだ。

むしろ、サード・パーティー・リスクのミティゲーション対策としては、ベースとなる離陸発着数の制限や、ハブ空港の分散化、人口稠密化近辺所在空港の分散化というような、マクロの政策のみ効を奏する。

羽田空港の発着数は現在、1時間当たり31便、年間30・3万回であり、今回、4本目のD滑走路(長さ2500メートル)完成後は、1時間当たり40便、年間40・7万回となるようだ。

航空機事故の確率を100万回に0.34の事故率とし、これに24時間態勢によるリスクが加わるとすれば、相当の数字が出てくるが、これに、さらに、第一次のサード・パーティー・リスクと、第二次のサード・パーティー・リスクが加わるというわけだ。

今回の前原発言は、北東アジアのハブ空港化を進める韓国・仁川国際空港などの動きに乗り遅れまいとする気概に満ちたものではあったが、肝心の、現在、世界のハブ空港が抱える新しい問題であるサード・パーティー・リスクの増大という問題には、頭が回らなかったのだろう。

羽田空港ハブ化のみについてみれば、前原さんの言われるような「プラス・サム」とはならないのである。

今後、トピックス的な政策課題にのみ踊らされない、そして、それこそ、効率性に惑わされない、冷静な政策スタンスが、民主党政権全体にも求められるような気がする。

参考 サード・パーティー・リスク・アセスメントに関する参考サイト

The assessment and management of third party risk around a major airport 」 by B. J. M. Alea, and M. Piers

SAFETY IN AND AROUND AIRPORTS

「Third Party Risk around airports

Third Party Risks posed by Air-craft Accidents in the Vicinity of Geneva Airport

THIRD PARTY RISK NEAR AIRPORTS AND PUBLIC SAFETY ZONE POLICY

参考 2008年世界主要空港のトラフィック・データ一覧

Annual Traffic Data

The Top 30 Airports 2008 – Total passenger traffic

The Top 30 Airports 2008 – Cargo traffic

The Top 30 Airports 2008 – Aircraft movements

羽田ハブ空港化とサード・パーティー・リスクの増大

Category: 未分類 – Tatsuo Sasayama 3:44 PM

前原誠司国土交通相が、羽田空港の「ハブ空港」化を鮮明にする方針を打ち出した。

同時に、これまでの成田・国際化を尊重しつつ、羽田の国際化につとめる、という方針を一転し、「成田・羽田の国際・国内の分離を取っ払う」との踏み込んだ発言をした。

さらに、来年10月の第4滑走路完成を機に、24時間態勢で国際便を運航する構想についても、言及した。

関西空港など、羽田以外の拠点空港の今後については、「併せて関西3空港(関空、伊丹、神戸)のあり方を検討していきたい」などと述べた。

ここで、気になるのは、羽田空港の「ハブ空港」化と、24時間態勢化にともなう、サード・パーティー・リスクの増大である。

航空機そのもの自体の安全性は、年々高まっているが、空港におけるサード・パーティー・リスクは、ますます増大しているというのが、世界のハブ空港での趨勢であるからだ。

サード・パーティー・リスクとは、次のようなことである。

航空機事故の原因としては、全体の事故件数に占める割りあいを見ると、着陸34パーセント、離陸16パーセント、最終進入11パーセント、クルージング9パーセント、駐機8パーセント、となっており、圧倒的に、離発着時の事故が多い。

しかし、航空機の発着に伴う発着一回あたりの離陸・着陸のリスクは低減しつつある。

それにもかかわらず、総発着数の増大が、ハブ空港化によって、巨大な数に及ぶことによって、事故確率が増大し、着陸航路や離陸航路のゾーンにおける第三者に対するリスクが、累乗的に増大するということである。

このサード・パーティー・リスクという問題は、比較的に新しい問題であるが、ヨーロッパでは、すでに深刻な問題として捉えられているようだ。

これまで、このサード・パーティー・リスクは、アセスメントの概念では、騒音などの一般的な環境インパクトへのアセスメントの中に包摂されてしまい、環境問題の中のいっぱひとからげの中で扱われてきた。

しかし、イギリスやオランダでは、このサード・パーティー・リスクについて、独立したアセスメントを行うようになってきた。

また、サード・パーティー・リスクには、さらに、二次的なサード・パーティー・リスクが伴う。

それは、航空路下の精製所や発電プラントへのリスクがさらに近隣の住民リスクにつながるという例である。

サード・パーティー・リスクは、二つのリスク(個人的リスク-Individual Riskと社会的リスク- Societal Risk-)に分かれる。

サード・パーティー・リスクの第一次的なリスクを低減しうる対策としては、鳥対策を含め、いろいろとあるが、決定的なリスク低減の方策は、ないようだ。

むしろ、サード・パーティー・リスクのミティゲーション対策としては、ベースとなる離陸発着数の制限や、ハブ空港の分散化、人口稠密化近辺所在空港の分散化というような、マクロの政策のみ効を奏する。

羽田空港の発着数は現在、1時間当たり31便、年間30・3万回であり、今回、4本目のD滑走路(長さ2500メートル)完成後は、1時間当たり40便、年間40・7万回となるようだ。

航空機事故の確率を100万回に0.34の事故率とし、これに24時間態勢によるリスクが加わるとすれば、相当の数字が出てくるが、これに、さらに、第一次のサード・パーティー・リスクと、第二次のサード・パーティー・リスクが加わるというわけだ。

今回の前原発言は、北東アジアのハブ空港化を進める韓国・仁川国際空港などの動きに乗り遅れまいとする気概に満ちたものではあったが、肝心の、現在、世界のハブ空港が抱える新しい問題であるサード・パーティー・リスクの増大という問題には、頭が回らなかったのだろう。

羽田空港ハブ化のみについてみれば、前原さんの言われるような「プラス・サム」とはならないのである。

また、今回の一連の騒ぎの中で、ハブの話は出たが、スポークの話は出なかったようである。

スポークには、国内のスポークもあれば、国際的なスポークもある。

今後、トピックス的な政策課題にのみ踊らされない、そして、それこそ、効率性に惑わされない、冷静な政策スタンスが、民主党政権全体にも求められるような気がする。

参考 サード・パーティー・リスク・アセスメントに関する参考サイト

The assessment and management of third party risk around a major airport 」 by B. J. M. Alea, and M. Piers

SAFETY IN AND AROUND AIRPORTS

「Third Party Risk around airports

Third Party Risks posed by Air-craft Accidents in the Vicinity of Geneva Airport

THIRD PARTY RISK NEAR AIRPORTS AND PUBLIC SAFETY ZONE POLICY

参考 2008年世界主要空港のトラフィック・データ一覧

Annual Traffic Data

The Top 30 Airports 2008 – Total passenger traffic

The Top 30 Airports 2008 – Cargo traffic

The Top 30 Airports 2008 – Aircraft movements