笹山登生のウォッチ&アナライズ –


2009年10月6日

原油決済をドルから元、円、ユーロ、金のバスケット決済にする陰謀あり、とのネタ的ニュース

Category: 未分類 – Tatsuo Sasayama 8:51 PM

出典がIndependentのニュースなのできわめてネタくさいのだが、今日のこのニュース「The demise of the dollar」は、為替相場に一時的に与えた影響は大きかったようだ。

で、このニュースの中身なのだが、次のようなものである。

湾岸産油国が、中国・ロシア、日本、フランスの四カ国と協調して、極秘裏に次のような計画を立てているという。

すなわち、これまでの原油の決済がドル・ペッグであったのを、これからは、中国の元、日本の円、ユーロ、金、それに湾岸協力会議(GCC)関係国が計画している統一通貨、の各相場のバスケット相場で決済するというものである。

この計画に携わっているのは、サウジアラビア、アブダビ、クウェート、カタールの湾岸協力会議(GCC)のメンバーであるという。

これに関する秘密会合は、すでに、ロシア、中国、日本、ブラジルの各国の大蔵大臣、中央銀行総裁が集まって開かれたという。

アメリカは、この国際的な陰謀の中に、これまでアメリカに忠実だった日本やガルフ・アラブが入っていることにたいして、戦うとしている。

これらの陰謀が広がることについて、中国の前中東特使のSun Bigan氏は、「このことで、中国と米国との間に溝ができることを懸念する」と警告している。

また、気の早い向きは、中東の石油をめぐっての、中国とアメリカとの経済戦争が勃発するのではないか、と、予測する向きもある。

こうして、このニュースを読んでみると、かなり、いい加減なソースのようにも見えるのだが。

慶良間海域でのエコツーリズム推進法の適用には、いくつかの法的問題点がある。

Category: 未分類 – Tatsuo Sasayama 8:49 PM

沖縄県の慶良間諸島の周辺海域のサンゴ礁を守るため、地元の渡嘉敷村と座間味村の両村は、エコツーリズム推進法の定める特定自然観光資源への立ち入り制限を利用し、周辺海域でダイバーの立ち入り人数の制限を図ろうとしている。

この慶良間では、エコツーリズム推進法制定以前に慶良間エコツーリズム推進協議会をすでに立ち上げているが、この協議会をエコツーリズム推進法の定める推進協議会とし、ここで環境保全策や規制内容を定めた「全体構想」を策定し、環境省など4省に対し、10月中に申請する方針とのことである。

そして、4省の構想の認定を得た上で、エコツーリズム推進法第八条に規定している特定自然観光資源の指定を可能とするため、サンゴ礁を特定自然観光資源に指定する内容の関連条例を両村で策定し、早ければ、両村議会12月定例会で関係条例を提案するという。

この条例の制定によって、サンゴ礁が特定自然観光資源に指定されることになり、これによって、エコツーリズム推進法第九条にもとづく特定自然観光資源に関する規制を可能にさせるという。

協議会の構想によると、各島周囲の水深30メートルより浅い範囲を「特定自然観光資源」に設定するという。

また、特定自然観光資源となるサンゴ礁への立ち入りには、関係村長の承認が必要となり、その許可の対象は、ダイビングガイドなど事業者になるという。

許可を与える上限の人数については、半減規制を目処とし、一番人数の多い8月で渡嘉敷村1万1100人、座間味村1万1500人、一番少ない2月で渡嘉敷村1800人、座間味村1200人に制限されるという。

以上が、慶良間海域におけるサンゴ礁への、エコツーリズム推進法を利用した立ち入り規制の動きの概要である。

総論としては、まことに時宜を得た動きだとは思うが、法的に見ると、いろいろな問題点も、浮かび上がっている。

海域の特定自然観光資源に地先権は、及ぶのか?

それは、今回、両村が特定自然観光資源として指定しようとしているサンゴ礁が、当然のことながら、海域の底地にあるということである。

海域における特定自然観光資源を地先の原点となる村が指定するということである。

いわば、海域にある特定自然観光資源に対し、これらの村は、地先権を有している、という考え方にたったものだ。

平成8年11月の東京高裁「静岡県沼津市大瀬崎ダイビング訴訟」においては、ダイビングスポットで、大瀬崎の内浦漁協が、ダイバーたちから、徴収する潜水料は、違法とする判決が出された。(ただし、その後、最高裁から高裁へ差し戻しとなり、2000年11月30日に東京高裁で原告の請求が棄却。)

許可の対象を、ダイビングガイドなど事業者に限定すると言う、今回の慶良間海域での立ち入り規制に対しては、将来、訴訟がおきうる可能性を、この大瀬崎ダイビング東京高裁訴訟は、しめしている。

すなわち、現在、全国レベルでは、地先の海をスクーバダイビング事業者などが使用することについて、漁協が利用料という名目で金銭を徴収することについて、トラブルが生じている例が見られるが、もし、今回、慶良間が、特定自然観光資源についても実質地先権を及ぼし、地元のエコツーリズム推進協議会がダイバー業者から利用料を徴収するというスキームを作り上げると、現在の漁協などとの間にあると同様のトラブルが生じかねないということだ。

そのほか、各島周囲の水深30メートルとなると、相当の広い範囲での指定となってしまうことについての疑問もある。

では、その海域への立ち入り規制とは、海の底地のフローラなのか、それとも、その特定自然観光資源の上の海上をもふくむのか?
サンゴ礁の上の海上へのグラス・ボートなどによる立ち入り規制も、含むのであろうか?
店を通すダイバー客と異なり、店を通さないシュノーケリング客の規制はどうするのか?
海人などの伝統漁法に基づく人々への立ち入り規制はどうなるのであろうか?
などの疑問点も、沸いてくる。

私も、この海域の島々にたびたび行っており、上記の座間味島、渡嘉敷島のほか、阿嘉島や、ちょっと離れるが、渡名喜島や粟国島などにも、足を伸ばしている。

幸か不幸か、これらの島々には、漁業者は、稀有である。

渡名喜島では、昔は、カツオ漁が盛んだったが、いつのころより漁業資源が枯渇してしまい、今は、近海魚の一本釣り程度のようである。

座間味島などには、漁業者はあまり見当たらない。

ただ、今回の慶良間の例に倣って、他の全国の市町村が、共同漁業権区域内にある特定自然観光資源を指定するようになったら、そして、その地域に漁業権をもつ漁業者が存在していたとしたら、相当な混乱を起こすことになりかねない。

エコツーリズム推進法施行規則第七条では、「立入りの承認を要しない行為」として、次のような規定がある。

(立入りの承認を要しない行為)
第七条  法第十条第二項 ただし書の主務省令で定める行為は、次に掲げるものとする。
一  農林水産業を営むために必要な行為
二  農山漁村における住民の生活水準の維持改善、森林の保続培養並びに水産資源の適切な保存及び管理を図るために行う行為

このエコツーリズム推進法施行規則第七条に基づく、行為の範囲については、この慶良間海域についても、慎重な取り決めが必要のように思える。

今回の措置について、結果、特定の自然観光資源に地先権を及ぼすことにつながっているところから、「この規制は、慶良間のダイビング業者が、那覇のダイビング業者を排除するための囲い込み措置である。」との見解を示す向きもある。

まさに、「海は誰のもの?」という永遠の課題に、この場合も、行き当たってしまうのである。

コモンズへのアクセス権は、侵害されないか?

さらに、対象海域へのコモンズとしてのアクセス権は、これによって侵害されないのであろうか?

たとえば同じ沖縄・石垣島の名蔵アンバル干潟などは、まさに、コモンズとしてのアクセスをする人でにぎわっている。

そこには、用と美をかねそなえたコモンズとしての理想的な海域利用の形が具現化されている。

エコツーリズム推進法制定の議論の過程においては、これらの民法263条規定の共有の性質を有する入会権や入浜権など、地域における慣行化した権利(「旧慣」または、「旧習」と呼ばれる権利)との調整についての対応が、すっぽり抜け落とされていた。

入浜慣行という社会事実を基盤とした入浜権は、①海浜に自由に立ち入りし、自然物を自由に使用出来る権利、②海浜に至るまでの土地を自由にアクセス・通行できる権利、からなる。

この権利は、現在の法解釈では、妨害排除請求権をもつものの、それは漁業権や付近の住民の生活権(人格権)に劣後するものであるとされている。
参考「『海を守る』とはどういうことか?」
憲法論議に環境権を明確に位置づけるために

海浜の自然公物の自由使用権や海浜までのパブリック・アクセス権を含んではいるが、私権という性格が強いとされている

これらを争点にして訴訟が起こった場合、エコツーリズム推進法にもとづく、海域の特定自然観光資源立ち入り規制は、法的に耐えられるものかどうか、環境省は、じっくり吟味しておく必要があるのではなかろうか。

なお、今年6月3日に「自然公園法及び自然環境保全法の一部を改正する法律案」が交付され、この改正によって、自然公園法に「海域の保全」が書き込まれたことになったが、エコツーリズム推進法第八条の「ただし、他の法令により適切な保護がなされている自然観光資源として主務省令で定めるものについては、この限りでない。 」との関係で、慶良間海域も国定公園のようなので、この点での海域での利用規制の整合性も、あわせて考えられたいものだ。

直接支払い的補助金は、「流動性の罠」にひっかかるのでは?

Category: 未分類 – Tatsuo Sasayama 10:20 AM

民主党がマニフェストで打ち出した各種の直接支払い的な補助金(子供手当て、農業者戸別所得補償、高速料金無料化などなど)が、どのような経済効果をもたらすのか、については、あんまり、経済学者たちの検証がないようにみえる。

ただ、ざっと考えただけでも、歳出段階では意図した政策目的を持った直接支払い的な補助金が、マニフェストで打ち出した政策への整合性を持って、意図したインセンティブでの家計の支出に回ると考えるのは、あまりに高校生的な経済学の発想なのだろう。

ある病に効くとして飲み込んだ薬が、確実にその疾患を持った臓器に到達するとはかぎらないのだ。

おそらく、歪曲化された支出構造に、家計の段階では、なっていくのだろう。

ましてや、所得制限がないということでのモラルハザードは、血税納税者にとっては、反吐が出るほどのものとなるであろう。

高所得の家計では、子供手当てが、ペットの餌の支払い代金に消えることなんて、ザラだと考えたくらいのほうがいいのだろう。

流動性の罠(Liquidity Trap)というのは、次のようなトラップだ。

「金利を下げる→景気の見通しが悪く、通貨供給量(マネーサプライ=現金流通量+預金など)が増えない→不況やデフレがとまらない→供給した金が貯蓄や債券の購入にまわり、銀行に戻るため、通貨流通量が増えない。」

まあ、今の日本経済はますます、このトラップにはまって、身動きのできない状態にあるのだが、この罠にかかっている日本の家計経済に、これらの直接支払い的な補助金をぶっこんでも、砂漠の中に染み入る水のごとく、家計の中にしみこんでいくのだろう。

しばらくの間は、意図的にポンプアップしても、消費者需要としては顕在化せずに、消費者の先行き見通しがかなりブリッシュなものにならない限り、家計の中に沈潜した地下水として滞留しつづけるのであろう。

これらの罠から脱出できるのは、ビッグ・プッシュ的な政策の施行しかないのだ。

むしろ、今、民主党が志向すべきは、新しい公共事業のスキームなのだろう。

それは、人的なインフラ構築的な、ソフトインフラ構築のための諸策なのだろう。

現在苦境にあえぐ地方の土建業者の出自は、昭和恐慌時の救農土木を元祖とするものである。

それの平成版というのは、人材ソフト多使用型のソフトとハードの入り混じった新公共事業である。

それを、ただ、民間にまかぜるのではなく、官民一体で、そのような新インフラの基礎を立ち上げることが必要のように思えるのだが。

G20でのG4構想憶測後、きな臭くなってきた、中国元切り上げの可能性

Category: 未分類 – Tatsuo Sasayama 10:17 AM

今回ピッツバーグで行われた20カ国・地域(G20)首脳会議(金融サミット)時に、アメリカから暗に提案があったとされるG4(米国・日本・欧州・中国)構想について、各国の首脳は、「そんなことはなかった、なかった」と一様に否定している。

また、もっともポンドの帰趨をめぐってG4構想では蚊帳の外になりかねないイギリスのAlistair Darling蔵相も、「G4提案は長い間議論されてきたことだ。考え過ぎは、しないほうがいい。」
(These proposals have been around for a long time. You shouldn’t read too much into these proposals)
と、平静を装った発言はしている。

しかし、なぜ、今回のG4サミットで、 わざわざ、声明文で「われわれは、中国がより柔軟な為替レートへ移行することについて、持続的コミットメントをすることを示したことを歓迎する。」
(We welcome China’s continued commitment to move to a more flexible exchange rate, which should lead to continued appreciation of the Renminbi in effective terms and help promote more balanced growth in China and in the world economy. )
という趣旨の一文がもりこまれたのか?不思議である。

その根底には、弱くなったドルを回復させる唯一無二の政策は、「中国人民元の切り上げにしかない。」との発想に立って、「そのためには、G20以前にG4-米国・日本・欧州・中国による合意が必要になる」との筋書きがあったのではなかろうか。

つまり、このG4構想は、G20には入っているが、G7には入っていない、中国のための、中国元切り上げを図るためのお仲間作りということだったのではなかろうか?

この場合、日本は一応は入っているが、刺身のツマ的存在に過ぎないのだろう。

そうかんぐれば、G20直前に、わざわざIMFのゼーリック氏が「もし、アメリカの財政赤字が好転しなけば、アメリカのドルは、世界の準備通貨としてのランクを失うであろう。」
(it may lose its rank as the only reserve currency if budget deficits aren’t curbed. )
などと発言した発言の意図もわかってくるのである。

また、ガイトナー氏は、G20後、次のような発言をしている。

「しかし、米国の貯蓄と投資が国内で行われれば、世界は将来の成長を米国の支出に依存できなくなる。つまり、世界経済の高い成長率を望むなら、米国以外の国が輸出に頼ることのない内需主導の成長へと構造的な変化を遂げることが必要になる。 」

つまり、もう、アメリカを各国の輸出市場として頼ってくれるのは、やめてくれ、とのメッセージのようにも聞こえてくる。

そこで、明確になりつつつあるのは、中国の元切り上げこそが、アメリカの貿易構造を変え、アメリカの双子の赤字を解消しうる唯一無二の有力手段になるという構図が浮かび上がってくる。

では、肝心の中国は、その辺をどうかんがえているのか?

このサイト「China shuns efforts to boost yuan」では、その辺を次のように見ている。

「中国が、各国からの暗黙のプレッシャーを得て、柔軟な為替政策に転じようとしている節は見られるが、それほど、乗り気であるようには見えない。

その理由の一部には、アジア共通に見られるIMFへの不信感も一因としてある。

しかし、その柔軟化への胎動らしきものは垣間見られる。

先週、中国は、八億七千九百万ドル相当分のボンドを元で発行し、香港に売却した。
そのことは、クロスポーター取引で、中国元を実質自由化する試みとも見られる。」

まあ、こうしてみると、アメリカのドルを救うのは、唯一、中国の元切り上げであり、これによって、アメリカは、双子の赤字の解消に努めることができるという筋書きのように、私には、見える。

この場合、内需振興というのは、アメリカ側の中国に対する「元切り上げ」への形をかえたメッセージなのであり、それを日本の財務大臣が、鸚鵡返しに言うべきことではないようにも、思える。

中国元切り上げへの思惑の増大は、ツレ高としての円高にもつながりうる。

つまり、中国の元切り上げの功罪論に立てば、アメリカへの輸出減と中国への加工資材輸出減とのダブルパンチをうけることになるのだから、日本の財務大臣としては、そんな、ノー天気なことは、言ってはいられないはずなのだが。