笹山登生のウォッチ&アナライズ –


2009年10月9日

鳩山さんの言う温室効果ガス排出量25%削減目標達成手段には、京都メカニズムは入るのか?

Category: 未分類 – Tatsuo Sasayama 8:48 PM

鳩山さんが、教条主義的に、2020年までに温室効果ガス排出量を90年比で25%削減する目標を高らかにうたい上げたのはいいのだが、その達成のための具体的な戦略の中身が、みえてこない。

つまり、90年比25%削減は、国内削減だけの”真水”なのか、それとも、海外での削減分もカウントできる京都メカニズムもカウントに入れての削減なのか、という点がはっきりしていないのである。

各国での温室効果ガス排出量をキャップの水準にとどめるためには、単に、自国での削減による目標達成によるほか、他国での削減量を自国の削減としてカウントできる京都メカニズムがある。
(ちなみに、平成17年4月閣議決定の「京都議定書目標達成計画」における京都メカニズム活用分削減は△1.6%にすぎない。その他、GIS(グリーン投資スキーム、Green Investment Scheme)△3.8%がある。)

もし、鳩山さんが、その京都メカニズムによる削減分もカウントして、90年比25%削減といっているのであれば、それは、説明不足といわざるを得ない。

マーケットメカニズムを利用して、他国での削減量を自国の削減としてカウントできる京都メカニズム(Kyoto Mechanismsまたは、Mechanisms under the Kyoto Protocolともいう。)には、次の三つがある。

①排出量取引(排出権の売買によるもの)

②CDM(クリーン開発メカニズム、Clean Development Mechanism)(途上国対応の削減プロジェクト実施、削減できた部分について、クレジットを受領するもの)、

③JI(共同実施、Joint Implementation)(先進国対応の削減プロジェクト実施し、削減できた部分について、クレジットを受領するもの)

からなっている。

この「Mechanisms under the Kyoto Protocol」を採用している国としては、カナダ、中国、オーストラリア、ニュージーランド、EUなどがある。

アメリカは、京都議定書には、署名はしていないが、シカゴ気候取引所でのFINRA(the Financial Industry Regulatory Authority)の承認下での排出権取引では、世界を引っ張っている。

世界におけるカーボン削減のためのシェーマは、排出権市場も含めて、断片化されており、京都メカニズムを除いては、アメリカのCCXGreen ExchangeRGGIWCI、California Climate Act、EUのEEXEUETS(EU 排出量取引制度)、北欧のBlue NextNord Pool、ロンドンのLEBAECX、オーストラリアのAustralia Carbon Trading Scheme、NSW Abatement SchemeNSWACX、そして、日本の経団連環境自主行動計画に基づくシェーマなどがある。
参考「State and Trends of the Carbon Market 2008

このほか、現在、新たなスキームとして検討されているのが、「REDD」(途上国の森林維持に与えるクレジット)「セクトラル・クレディティング・メカニズム(SCM)」(産業部門別に達成部門に対して与えるクレジット)「NAMAクレジット」(途上国に与えるクレジット)などである。

ここで、注目すべきは、排出権取引の活発化である。

日本は、完全にこの分野では出遅れている。

日本にあるのは、「環境省自主参加型国内排出量取引制度」と「中小企業などCO2排出量削減制度」のみである。

前者は、一応は、キャップ・アンド・トレード方式ではあるが、自主参加のキャップ・アンド・トレードということなので、擬似的なキャップ・アンド・トレード方式といえる。

一部に日本に排出権取引市場を設けようとの構想もあるようだが、日本では、参加人も少なく、流動性の乏しい市場では、設立はもはやムリである。

むしろ、以下に述べるユーロのECXやシカゴ気候取引所のCCXでの取引のほうが現実的であろう。

ユーロのECXとシカゴ気候取引所のCCXは、この分野で世界的な主流を行くものである。

シカゴでは、CO2も含め6種類(二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素、HFC-ハイドロフルオロカーボン、PFC-パーフルオロカーボン、SF6-六フッ化硫黄、最後の三つは代替フロン)の温暖化ガスの排出権取引が可能である。

シカゴでは、これに加えて、先物取引のCCFEも、加わった。

また、ECXを原資産としたオプションとして、ICE ECX CER Futures Options があるが、これらをヘッジにした各企業の取引もよりいっそう活発になって行くのではなかろうか。

ECXの排出権取引高は、月間500メトリックトンに達している。

また、シカゴ取引所でのCCX排出権取引高も、月間432メトリックトンに達している。

ちなみに、現在の時価相場は、ECXで13.72ユーロ、CCXで10.60ドル程度となっている。

CCXのメンバー・リストを見ると、その多彩さに驚かされる。

航空機では、ロールスロイス、自動車では、フォード、化学では、デュポン、商業では、クノール、その他、コダックなどなど、多士済々である。

中に、変わり種としては、デンマーク大使館やフィンランド大使館なども混じっているのが面白い。

また、地方自治体のアスペン市、オーストラリアのメルボリン市の名前なども見ることができる。

今後、CCXは、インドのNGOや北京のエネルギー関係会社などをも、会員に含めていくようだ。

また、シカゴ気候取引所では、今後、中国やインドでも、排出権取引市場を作っていく計画のようである。

こうしてみると、世界の温室効果ガス排出量削減対策は、マーケットメカニズムに頼った削減策に、大きく傾いているようだ。

鳩山さんのように、削減のキャップを低く(削減目標を高めに)すればするほど、排出権枠の需給関係は、排出権の売り手市場になっていく、という構図のようだ。

鳩山さんへの各国の拍手が、自国内削減の手法によってはできもしないことを言ってしまって、結局は、日本は、京都メカニズムの手法に依存せざるをえなくなり、そのつじつまを合わせのために、京都メカニズム排出権の巨大な買い手となることを見込んでの、巨大なお客さん出現を歓迎する拍手だった。鳩山発言が「日本がキャップ・アンド・トレードを受け入れる」公式宣言となったことへの欧州勢の歓迎拍手だった。などとしたら、情けない。

だから、これらのマーケットメカニズムが働くには、排出枠の売り手と買い手とがバランスをとれたキャップ水準でないと、いたずらな、マーケットの暴走にもつながってしまう可能性も大きいということだ。

たとえ、需給バランスの失調によって、排出権枠の暴騰となっても、では、それをインセンティブにして、マクロで、削減枠の拡大が進むかといえば、そうでもなさそうなのだが。

低ければいい(削減目標が高ければいい)という代物でもないようだ。

その辺も考えての鳩山発言なのかどうか、非常に疑問もある。

はたして、鳩山さんの今回の発言は、この京都メカニズムによるカウントをも含めないで、自国のみの削減努力で、削減目標25パーセントとしているのか、それとも、京都メカニズムによるカウントを含めて、削減目標25パーセントといっているのか、その辺が、ちょっとわからないのだが。

茅陽一さんの指摘によれば、当初民主党は公約に30%目標を掲げていたが、これは“真水”ではなく、森林吸収と京都メカニズム分(現在は京都メカニズム△1.6%+GIS△3.8%=合計5.4%)を含んでおり、これをさらに大きくすることは国際社会も反発するだろうとの指摘もあり、森林吸収と京都メカニズム分を現状とすれば、、削減目標は30-5.4≒25%となる。というあたりが、今回の25パーセント削減の根拠らしいのだが。(つまり、この茅さんの指摘に従えば、今回の25パーセントは、京都メカニズム分を入れない真水分ということになってしまう。となれば、今度は、当初の、そもそもの30%削減目標の根拠はなに?ということになってしまうのだが。)

その辺を白黒はっきりさせないと、いたずらな、削減目標25パーセント目標提示は、産業界に恐怖感をあたえてしまうばかりとなる。

そして、もし、後者だとすると、世界の削減目標到達の多くがカーボン・マーケット・メカニズムに依存しているという現状からすれば、あまりに低いキャップの設定(高すぎる削減目標)は、かえって、健全な排出権市場の育成の妨げになることだけは確かだろう。

後記

このサイト「国連気候変動枠組条約AWG会合@タイ・バンコク 中間まとめ」によると、「タイ・バンコクで開催されていた国連気候変動枠組条約のAWG会合で、南アフリカから「日本の目標は『真水』なのか?」という質問があり、これに対して日本は、「今後の交渉次第(it’s up to negotiation.)であり、現時点ではなんとも言えない」と回答。また、京都議定書の延長を意図していないことについても説明。」との記述がある。

この辺を、日本側はあいまいにしてはおられない状況のように見えるのだが。

さらに後記

経済産業省の近藤洋介政務官は10月13日夜に出演したCS放送「日経CNBC」の番組で、2020年時点の温室効果ガス排出量を90年比25%削減する鳩山政権の中期目標について「基本的には真水(での達成)を目指すべきだ」と述べ、排出権購入以外の国内対策主体で削減を進める考えを明らかにした。

近藤経産政務官は、90年比25%減は「主要排出国が加わるのが大前提。実現可能かと言えば難しい」と指摘する一方、「税金で海外から排出権を買ってくることは目指すべきでない。あらゆる政策と技術力を駆使して実現したい」と強調した。

鳩山政権は90年比25%のうち、どれだけを国内対策で達成するのか明らかにしていないが、この近藤発言が本当だとすれば、鳩山発言は、クレージーといえる。

国土交通省は、ダム廃止にミティゲーション手法を使うべき時

Category: 未分類 – Tatsuo Sasayama 8:46 PM

国土交通省は、いよいよ、本体未着工のダムについて、今年度中は、これ以上、次段階での工事の進捗はせずに、いちから、費用対効果を見直すという。

なるほど、政権交代直後なのだから、これほどドラスティックな方向転換を図らないと、ダム事業はとまらないのだろう。

しかし、ただ、工事をとめればそれでいいということではないのだろう。

つまり、政府はNGOではないので、公共事業廃止のスキームをさけぶだけではだめなので、責任政権としては、出口戦略のスキームが必要になるというわけだ。

また、本体着工前のダムのみの事業凍結というのも、素人考えにありがちな直線的な考えにもとづくもののような感じもする。

すなわち、既存のダムの除去なども含めた生態系の回復という視点が、ここでは、抜け落ちているようにも見える。

ダムのオルタナティブとして、どのような環境にやさしい公共事業を起こしていくのかは、これからの国土交通省にとって、今後の大きな課題になりうるし、そのことが、これからの国土交通省の大きな社会的存在の基盤にもなりうるものと思われる。

ここにおいて、ミティゲーションの手法が、クローズアップされうる。

ミティゲーションについては、私のサイト「日本にミティゲーション・バンキングは可能か」をご参照

日本では、「環境振替」という言葉で、本来のミティゲーションの趣旨とはまったく異なる概念(というか、まったく正反対の意味)で使われている場合が多いので、此の点、要注意だ。

ミティゲーション・バンキングの手法とは、簡単に言えば、環境価値をクレジットとし、環境破壊をデビットとし、そのデポジット(預け入れ)とウィズドゥロー(引き出し)によって成り立つ、バンキング・システムといえる。

ここで、
環境価値=環境創造される空間の現在の環境価値=クレジット
であり、
環境破壊=開発許可となる空間における環境価値の損傷=デビット
となる。
この二つが クレジット=デビット となることによって、ノー・ネット・ロス原則(No-Net-Loss)が確立しうる、というものだ。

クレジットを預けいれることによって、ウィズドゥローとして、開発許可が下りる。

アメリカ・ノースカロライナ州では、ダム除去(Dam Removal)に、このミティゲーション・バンキング手法を使っている。

以下は、その概要である。

アメリカ・ノースカロライナのミティゲーション・バンキング手法によるダム除去(Dam Removal)手法

1.まず、除去するダムまでの本流の河川長と、支流の河川長を確定する。

2.つぎに、その本流と支流において、護岸度がどの程度か、河川幅がどの程度かを確定する。

3.以下の公式によって、最大可能ベースラインのクレジットが確定する。

最大可能ベースライン・ミティゲーション・クレジット(水生生物や人的要因による要素の修正前)=ダムにいたるまでの本流の河川長×係数+ダムにいたるまでの支流の河川長×係数

係数は、
護岸度が高いほど低く、護岸度が低いほど高い。
河川幅が狭いほど高く、河川幅が広いほど低い。

4.つぎに、この本流・支流における環境状況の度合いに応じて、この3の最大可能ベースライン・ミティゲーション・クレジットを修正していく。

修正の要素としては、
①水質はどうか?
②水生生物のコミュニティが確保されているか?
③希少性水生生物種や絶滅危惧水生生物種がいるか?
の三点である。

5.この三点のいくつが該当しているかによって、相当の修正係数を適用し、以下の公式によって、修正後ベースライン・ミティゲーション・クレジットを確定していく。
さらに、人的要因としての修正係数として、河川沿岸のレクリェーション的な利用度や、環境教育的な利用度などをカウントし、修正していく。

修正後ベースライン・ミティゲーション・クレジット=最大可能ベースライン・ミティゲーション・クレジット×修正係数(修正係数は、①水質はどうか?、②水生生物のコミュニティが確保されているか?、③希少性水生生物種や絶滅危惧水生生物種がいるか?、の三つのうちのいくつに該当するかによって、該当する割合が多いほど修正係数は大きくなる。)

6.このダム除去によって生まれる環境価値をクレジット(Credit)として、ミティゲーション・バンキングにデポジット(Deposit)し、対価として、環境にやさしい公共事業の開発権をデビット(Debit)として引き出す(Withdraw)というスキームである。

以上に見たように、ダム除去によって、膨大なクレジットをミティゲーション・バンキングにデポジットすることによって、このデポジットしたクレジットを基に、環境にやさしい大規模開発の開発許可権を得ることで、総体としては、ダム除去以前よりも、社会全体の環境価値のたくわえが大きくなっていく、というスキームである。

前原国土交通大臣も、いまのような、エキセントリックなダム潰しばかりに奔走されるのでなく、上記のようなミティゲーション手法を使った、総体として、日本の国土の環境資産が増大していくような、新しい公共事業のスキームを、そろそろ、それこそ、いまはやりの出口戦略として、用意すべき時期に来ているのではなかろうか?

その社会的使命として、より多くの環境インフラを創出すべき立場にある国土交通省は、不可逆的なNGO的主張のみをしてばかりいてはいけないのである。

参考 凍結対象ダム一覧

北海道
幾春別川総合開発
夕張シューパロダム■
<沙流川総合開発>
<サンルダム>-本体未着工-
留萌ダム▲

青森
津軽ダム■

岩手
胆沢ダム■

宮城
鳴瀬川総合開発※

秋田
森吉山ダム■
成瀬ダム-本体未着工-
鳥海ダム※-本体未着工-

山形
長井ダム■

茨城
霞ケ浦導水

栃木
湯西川ダム■
<思川開発>

群馬
八ッ場ダム-すでに凍結-
吾妻川上流総合開発※
利根川上流ダム群再編※

埼玉
滝沢ダム■
荒川上流ダム再開発※

富山
利賀ダム-本体未着工-

福井
足羽川ダム-本体未着工-

愛知
設楽ダム-本体未着工-

岐阜
新丸山ダム
<木曽川水系連絡導水路>
上矢作ダム※●-すでに凍結-

三重
川上ダム

滋賀
大戸川ダム-すでに凍結-
丹生ダム-本体未着工-

奈良
大滝ダム■

和歌山
紀の川大堰▲

鳥取
殿ダム■

島根
尾原ダム■
志津見ダム■

愛媛
<山鳥坂ダム>-本体未着工-

高知
中筋川総合開発

福岡
<小石原川ダム>-本体未着工-

福岡・大分
筑後川水系ダム群連携※

佐賀
嘉瀬川ダム■
城原川ダム※-本体未着工-

長崎
本明川ダム-本体未着工-

熊本
川辺川ダム-すでに凍結-
立野ダム-本体未着工-
七滝ダム※-本体未着工-

大分
大分川ダム-本体未着工-
大山ダム■

沖縄
沖縄東部河川総合開発■
沖縄北西部河川総合開発■

<>内文字は今年度凍結
※は建設着手前
▲は今年度完成予定で今後の建設段階移行はないため、実際には完成する
●は来年度中止が決定済み
■は本体工事中で今後の建設段階移行はないため、完成まで工事が進む見込み

国と水資源機構が建設中の直轄ダムは全国56、うち48ダムで現段階の工事は行うものの、次段階に進まないことになり、ダム建設が一時ストップする。
今年度は新たに用地買収や本体建設工事の契約手続に進まない。
来年度は来年度に対応する。
中止されるのはダム本体工事であって、周辺整備事業は中止にならない。
国直轄56ダムのうち、すでにダム本体があり、放流能力増大など維持管理段階にある8ダムは除く。
・48ダムは建設中だが、現段階から▽用地買収▽生活再建工事▽水の流れを切り替えるための転流工工事▽本体工事の次段階に移ることは今年度はしない。

国土交通省は、ダム廃止にミチゲーション手法を使うべき時

Category: 未分類 – Tatsuo Sasayama 8:45 PM

国土交通省は、いよいよ、本体未着工のダムについて、今年度中は、これ以上、次段階での工事の進捗はせずに、いちから、費用対効果を見直すという。

なるほど、政権交代直後なのだから、これほどドラスティックな方向転換を図らないと、ダム事業はとまらないのだろう。

しかし、ただ、工事をとめればそれでいいということではないのだろう。

つまり、政府はNGOではないので、公共事業廃止のスキームをさけぶだけではだめなので、責任政権としては、出口戦略のスキームが必要になるというわけだ。

また、本体着工前のダムのみの事業凍結というのも、素人考えにありがちな直線的な考えにもとづくもののような感じもする。

すなわち、既存のダムの除去なども含めた生態系の回復という視点が、ここでは、抜け落ちているようにも見える。

ダムのオルタナティブとして、どのような環境にやさしい公共事業を起こしていくのかは、これからの国土交通省にとって、今後の大きな課題になりうるし、そのことが、これからの国土交通省の大きな社会的存在の基盤にもなりうるものと思われる。

ここにおいて、ミチゲーションの手法が、クローズアップされうる。

ミチゲーションについては、私のサイト「日本にミティゲーション・バンキングは可能か」をご参照

日本では、「環境振替」という言葉で、本来のミティゲーションの趣旨とはまったく異なる概念(というか、まったく正反対の意味)で使われている場合が多いので、此の点、要注意だ。

ミチゲーション・バンキングの手法とは、簡単に言えば、環境価値をクレジットとし、環境破壊をデビットとし、そのデポジット(預け入れ)とウィズドゥロー(引き出し)によって成り立つ、バンキング・システムといえる。

ここで、
環境価値=環境創造される空間の現在の環境価値=クレジット
であり、
環境破壊=開発許可となる空間における環境価値の損傷=デビット
となる。
この二つが クレジット=デビット となることによって、ノー・ネット・ロス原則(No-Net-Loss)が確立しうる、というものだ。

クレジットを預けいれることによって、ウィズドゥローとして、開発許可が下りる。

アメリカ・ノースカロライナ州では、ダム除去(Dam Removal)に、このミチゲーション・バンキング手法を使っている。

以下は、その概要である。

アメリカ・ノースカロライナのミチゲーション・バンキング手法によるダム除去(Dam Removal)手法

1.まず、除去するダムまでの本流の河川長と、支流の河川長を確定する。

2.つぎに、その本流と支流において、護岸度がどの程度か、河川幅がどの程度かを確定する。

3.以下の公式によって、最大可能ベースラインのクレジットが確定する。

最大可能ベースライン・ミチゲーション・クレジット(水生生物や人的要因による要素の修正前)=ダムにいたるまでの本流の河川長×係数+ダムにいたるまでの支流の河川長×係数

係数は、
護岸度が高いほど低く、護岸度が低いほど高い。
河川幅が狭いほど高く、河川幅が広いほど低い。

4.つぎに、この本流・支流における環境状況の度合いに応じて、この3の最大可能ベースライン・ミチゲーション・クレジットを修正していく。

修正の要素としては、
①水質はどうか?
②水生生物のコミュニティが確保されているか?
③希少性水生生物種や絶滅危惧水生生物種がいるか?
の三点である。

5.この三点のいくつが該当しているかによって、相当の修正係数を適用し、以下の公式によって、修正後ベースライン・ミチゲーション・クレジットを確定していく。
さらに、人的要因としての修正係数として、河川沿岸のレクリェーション的な利用度や、環境教育的な利用度などをカウントし、修正していく。

修正後ベースライン・ミチゲーション・クレジット=最大可能ベースライン・ミチゲーション・クレジット×修正係数(修正係数は、①水質はどうか?、②水生生物のコミュニティが確保されているか?、③希少性水生生物種や絶滅危惧水生生物種がいるか?、の三つのうちのいくつに該当するかによって、該当する割合が多いほど修正係数は大きくなる。)

6.このダム除去によって生まれる環境価値をクレジット(Credit)として、ミチゲーション・バンキングにデポジット(Deposit)し、対価として、環境にやさしい公共事業の開発権をデビット(Debit)として引き出す(Withdraw)というスキームである。

以上に見たように、ダム除去によって、膨大なクレジットをミチゲーション・バンキングにデポジットすることによって、このデポジットしたクレジットを基に、環境にやさしい大規模開発の開発許可権を得ることで、総体としては、ダム除去以前よりも、社会全体の環境価値のたくわえが大きくなっていく、というスキームである。

前原国土交通大臣も、いまのような、エキセントリックなダム潰しばかりに奔走されるのでなく、上記のようなミチゲーション手法を使った、総体として、日本の国土の環境資産が増大していくような、新しい公共事業のスキームを、そろそろ、それこそ、いまはやりの出口戦略として、用意すべき時期に来ているのではなかろうか?

その社会的使命として、より多くの環境インフラを創出すべき立場にある国土交通省は、不可逆的なNGO的主張のみをしてばかりいてはいけないのである。

参考 凍結対象ダム一覧

北海道
幾春別川総合開発
夕張シューパロダム■
<沙流川総合開発>
<サンルダム>-本体未着工-
留萌ダム▲

青森
津軽ダム■

岩手
胆沢ダム■

宮城
鳴瀬川総合開発※

秋田
森吉山ダム■
成瀬ダム-本体未着工-
鳥海ダム※-本体未着工-

山形
長井ダム■

茨城
霞ケ浦導水

栃木
湯西川ダム■
<思川開発>

群馬
八ッ場ダム-すでに凍結-
吾妻川上流総合開発※
利根川上流ダム群再編※

埼玉
滝沢ダム■
荒川上流ダム再開発※

富山
利賀ダム-本体未着工-

福井
足羽川ダム-本体未着工-

愛知
設楽ダム-本体未着工-

岐阜
新丸山ダム
<木曽川水系連絡導水路>
上矢作ダム※●-すでに凍結-

三重
川上ダム

滋賀
大戸川ダム-すでに凍結-
丹生ダム-本体未着工-

奈良
大滝ダム■

和歌山
紀の川大堰▲

鳥取
殿ダム■

島根
尾原ダム■
志津見ダム■

愛媛
<山鳥坂ダム>-本体未着工-

高知
中筋川総合開発

福岡
<小石原川ダム>-本体未着工-

福岡・大分
筑後川水系ダム群連携※

佐賀
嘉瀬川ダム■
城原川ダム※-本体未着工-

長崎
本明川ダム-本体未着工-

熊本
川辺川ダム-すでに凍結-
立野ダム-本体未着工-
七滝ダム※-本体未着工-

大分
大分川ダム-本体未着工-
大山ダム■

沖縄
沖縄東部河川総合開発■
沖縄北西部河川総合開発■

<>内文字は今年度凍結
※は建設着手前
▲は今年度完成予定で今後の建設段階移行はないため、実際には完成する
●は来年度中止が決定済み
■は本体工事中で今後の建設段階移行はないため、完成まで工事が進む見込み

国と水資源機構が建設中の直轄ダムは全国56、うち48ダムで現段階の工事は行うものの、次段階に進まないことになり、ダム建設が一時ストップする。
今年度は新たに用地買収や本体建設工事の契約手続に進まない。
来年度は来年度に対応する。
中止されるのはダム本体工事であって、周辺整備事業は中止にならない。
国直轄56ダムのうち、すでにダム本体があり、放流能力増大など維持管理段階にある8ダムは除く。
・48ダムは建設中だが、現段階から▽用地買収▽生活再建工事▽水の流れを切り替えるための転流工工事▽本体工事の次段階に移ることは今年度はしない。

国土交通省は、ダム廃止にミチゲーション手法を使うべき時

Category: 未分類 – Tatsuo Sasayama 8:43 PM

国土交通省は、いよいよ、本体未着工のダムについて、今年度中は、これ以上、次段階での工事の進捗はせずに、いちから、費用対効果を見直すという。

なるほど、政権交代直後なのだから、これほどドラスティックな方向転換を図らないと、ダム事業はとまらないのだろう。

しかし、ただ、工事をとめればそれでいいということではないのだろう。

つまり、政府はNGOではないので、公共事業廃止のスキームをさけぶだけではだめなので、責任政権としては、出口戦略のスキームが必要になるというわけだ。

また、本体着工前のダムのみの事業凍結というのも、素人考えにありがちな直線的な考えにもとづくもののような感じもする。

すなわち、既存のダムの除去なども含めた生態系の回復という視点が、ここでは、抜け落ちているようにも見える。

ダムのオルタナティブとして、どのような環境にやさしい公共事業を起こしていくのかは、これからの国土交通省にとって、今後の大きな課題になりうるし、そのことが、これからの国土交通省の大きな社会的存在の基盤にもなりうるものと思われる。

ここにおいて、ミチゲーションの手法が、クローズアップされうる。

ミチゲーションについては、私のサイト「日本にミティゲーション・バンキングは可能か」をご参照

日本では、「環境振替」という言葉で、本来のミティゲーションの趣旨とはまったく異なる概念(というか、まったく正反対の意味)で使われている場合が多いので、此の点、要注意だ。

ミチゲーション・バンキングの手法とは、簡単に言えば、環境価値をクレジットとし、環境破壊をデビットとし、そのデポジット(預け入れ)とウィズドゥロー(引き出し)によって成り立つ、バンキング・システムといえる。

ここで、
環境価値=環境創造される空間の現在の環境価値=クレジット
であり、
環境破壊=開発許可となる空間における環境価値の損傷=デビット
となる。
この二つが クレジット=デビット となることによって、ノー・ネット・ロス原則(No-Net-Loss)が確立しうる、というものだ。

クレジットを預けいれることによって、ウィズドゥローとして、開発許可が下りる。

アメリカ・ノースカロライナ州では、ダム除去(Dam Removal)に、このミチゲーション・バンキング手法を使っている。

以下は、その概要である。

アメリカ・ノースカロライナのミチゲーション・バンキング手法によるダム除去(Dam Removal)手法

1.まず、除去するダムまでの本流の河川長と、支流の河川長を確定する。

2.つぎに、その本流と支流において、護岸度がどの程度か、河川幅がどの程度かを確定する。

3.以下の公式によって、最大可能ベースラインのクレジットが確定する。

最大可能ベースライン・ミチゲーション・クレジット(水生生物や人的要因による要素の修正前)=ダムにいたるまでの本流の河川長×係数+ダムにいたるまでの支流の河川長×係数

係数は、
護岸度が高いほど低く、護岸度が低いほど高い。
河川幅が狭いほど高く、河川幅が広いほど低い。

4.つぎに、この本流・支流における環境状況の度合いに応じて、この3の最大可能ベースライン・ミチゲーション・クレジットを修正していく。

修正の要素としては、
①水質はどうか?
②水生生物のコミュニティが確保されているか?
③希少性水生生物種や絶滅危惧水生生物種がいるか?
の三点である。

5.この三点のいくつが該当しているかによって、相当の修正係数を適用し、以下の公式によって、修正後ベースライン・ミチゲーション・クレジットを確定していく。
さらに、人的要因としての修正係数として、河川沿岸のレクリェーション的な利用度や、環境教育的な利用度などをカウントし、修正していく。

修正後ベースライン・ミチゲーション・クレジット=最大可能ベースライン・ミチゲーション・クレジット×修正係数(修正係数は、①水質はどうか?、②水生生物のコミュニティが確保されているか?、③希少性水生生物種や絶滅危惧水生生物種がいるか?、の三つのうちのいくつに該当するかによって、該当する割合が多いほど修正係数は大きくなる。)

6.このダム除去によって生まれる環境価値をクレジット(Credit)として、ミチゲーション・バンキングにデポジット(Deposit)し、対価として、環境にやさしい公共事業の開発権をデビット(Debit)として引き出す(Withdraw)というスキームである。

以上に見たように、ダム除去によって、膨大なクレジットをミチゲーション・バンキングにデポジットすることによって、このデポジットしたクレジットを基に、環境にやさしい大規模開発の開発許可権を得ることで、総体としては、ダム除去以前よりも、社会全体の環境価値のたくわえが大きくなっていく、というスキームである。

前原国土交通大臣も、いまのような、エキセントリックなダム潰しばかりに奔走されるのでなく、上記のようなミチゲーション手法を使った、総体として、日本の国土の環境資産が増大していくような、新しい公共事業のスキームを、そろそろ、それこそ、いまはやりの出口戦略として、用意すべき時期に来ているのではなかろうか?

その社会的使命として、より多くの環境インフラを創出すべき立場にある国土交通省は、不可逆的なNGO的主張のみをしてばかりいてはいけないのである。

参考 凍結対象ダム一覧

北海道
幾春別川総合開発
夕張シューパロダム■
<沙流川総合開発>
<サンルダム>-本体未着工-
留萌ダム▲

青森
津軽ダム■

岩手
胆沢ダム■

宮城
鳴瀬川総合開発※

秋田
森吉山ダム■
成瀬ダム-本体未着工-
鳥海ダム※-本体未着工-

山形
長井ダム■

茨城
霞ケ浦導水

栃木
湯西川ダム■
<思川開発>

群馬
八ッ場ダム-すでに凍結-
吾妻川上流総合開発※
利根川上流ダム群再編※

埼玉
滝沢ダム■
荒川上流ダム再開発※

富山
利賀ダム-本体未着工-

福井
足羽川ダム-本体未着工-

愛知
設楽ダム-本体未着工-

岐阜
新丸山ダム
<木曽川水系連絡導水路>
上矢作ダム※●-すでに凍結-

三重
川上ダム

滋賀
大戸川ダム-すでに凍結-
丹生ダム-本体未着工-

奈良
大滝ダム■

和歌山
紀の川大堰▲

鳥取
殿ダム■

島根
尾原ダム■
志津見ダム■

愛媛
<山鳥坂ダム>-本体未着工-

高知
中筋川総合開発

福岡
<小石原川ダム>-本体未着工-

福岡・大分
筑後川水系ダム群連携※

佐賀
嘉瀬川ダム■
城原川ダム※-本体未着工-

長崎
本明川ダム-本体未着工-

熊本
川辺川ダム-すでに凍結-
立野ダム-本体未着工-
七滝ダム※-本体未着工-

大分
大分川ダム-本体未着工-
大山ダム■

沖縄
沖縄東部河川総合開発■
沖縄北西部河川総合開発■

<>内文字は今年度凍結
※は建設着手前
▲は今年度完成予定で今後の建設段階移行はないため、実際には完成する
●は来年度中止が決定済み
■は本体工事中で今後の建設段階移行はないため、完成まで工事が進む見込み

国と水資源機構が建設中の直轄ダムは全国56、うち48ダムで現段階の工事は行うものの、次段階に進まないことになり、ダム建設が一時ストップする。
今年度は新たに用地買収や本体建設工事の契約手続に進まない。
来年度は来年度に対応する。
中止されるのはダム本体工事であって、周辺整備事業は中止にならない。
国直轄56ダムのうち、すでにダム本体があり、放流能力増大など維持管理段階にある8ダムは除く。
・48ダムは建設中だが、現段階から▽用地買収▽生活再建工事▽水の流れを切り替えるための転流工工事▽本体工事の次段階に移ることは今年度はしない。

国土交通省は、ダム廃止にミチゲーション手法を使うべき時

Category: 未分類 – Tatsuo Sasayama 8:42 PM

国土交通省は、いよいよ、本体未着工のダムについて、今年度中は、これ以上、次段階での工事の進捗はせずに、いちから、費用対効果を見直すという。

なるほど、政権交代直後なのだから、これほどドラスティックな方向転換を図らないと、ダム事業はとまらないのだろう。

しかし、ただ、工事をとめればそれでいいということではないのだろう。

つまり、政府はNGOではないので、公共事業廃止のスキームをさけぶだけではだめなので、責任政権としては、出口戦略のスキームが必要になるというわけだ。

また、本体着工前のダムのみの事業凍結というのも、素人考えにありがちな直線的な考えにもとづくもののような感じもする。

すなわち、既存のダムの除去なども含めた生態系の回復という視点が、ここでは、抜け落ちているようにも見える。

ダムのオルタナティブとして、どのような環境にやさしい公共事業を起こしていくのかは、これからの国土交通省にとって、今後の大きな課題になりうるし、そのことが、これからの国土交通省の大きな社会的存在の基盤にもなりうるものと思われる。

ここにおいて、ミチゲーションの手法が、クローズアップされうる。

ミチゲーションについては、私のサイト「日本にミティゲーション・バンキングは可能か」をご参照

日本では、「環境振替」という言葉で、本来のミティゲーションの趣旨とはまったく異なる概念(というか、まったく正反対の意味)で使われている場合が多いので、此の点、要注意だ。

ミチゲーション・バンキングの手法とは、簡単に言えば、環境価値をクレジットとし、環境破壊をデビットとし、そのデポジット(預け入れ)とウィズドゥロー(引き出し)によって成り立つ、バンキング・システムといえる。

ここで、
環境価値=環境創造される空間の現在の環境価値=クレジット
であり、
環境破壊=開発許可となる空間における環境価値の損傷=デビット
となる。
この二つが クレジット=デビット となることによって、ノー・ネット・ロス原則(No-Net-Loss)が確立しうる、というものだ。

クレジットを預けいれることによって、ウィズドゥローとして、開発許可が下りる。

アメリカ・ノースカロライナ州では、ダム除去(Dam Removal)に、このミチゲーション・バンキング手法を使っている。

以下は、その概要である。

アメリカ・ノースカロライナのミチゲーション・バンキング手法によるダム除去(Dam Removal)手法

1.まず、除去するダムまでの本流の河川長と、支流の河川長を確定する。

2.つぎに、その本流と支流において、護岸度がどの程度か、河川幅がどの程度かを確定する。

3.以下の公式によって、最大可能ベースラインのクレジットが確定する。

最大可能ベースライン・ミチゲーション・クレジット(水生生物や人的要因による要素の修正前)=ダムにいたるまでの本流の河川長×係数+ダムにいたるまでの支流の河川長×係数

係数は、
護岸度が高いほど低く、護岸度が低いほど高い。
河川幅が狭いほど高く、河川幅が広いほど低い。

4.つぎに、この本流・支流における環境状況の度合いに応じて、この3の最大可能ベースライン・ミチゲーション・クレジットを修正していく。

修正の要素としては、
①水質はどうか?
②水生生物のコミュニティが確保されているか?
③希少性水生生物種や絶滅危惧水生生物種がいるか?
の三点である。

5.この三点のいくつが該当しているかによって、相当の修正係数を適用し、以下の公式によって、修正後ベースライン・ミチゲーション・クレジットを確定していく。
さらに、人的要因としての修正係数として、河川沿岸のレクリェーション的な利用度や、環境教育的な利用度などをカウントし、修正していく。

修正後ベースライン・ミチゲーション・クレジット=最大可能ベースライン・ミチゲーション・クレジット×修正係数(修正係数は、①水質はどうか?、②水生生物のコミュニティが確保されているか?、③希少性水生生物種や絶滅危惧水生生物種がいるか?、の三つのうちのいくつに該当するかによって、該当する割合が多いほど修正係数は大きくなる。)

6.このダム除去によって生まれる環境価値をクレジット(Credit)として、ミチゲーション・バンキングにデポジット(Deposit)し、対価として、環境にやさしい公共事業の開発権をデビット(Debit)として引き出す(Withdraw)というスキームである。

以上に見たように、ダム除去によって、膨大なクレジットをミチゲーション・バンキングにデポジットすることによって、このデポジットしたクレジットを基に、環境にやさしい大規模開発の開発許可権を得ることで、総体としては、ダム除去以前よりも、社会全体の環境価値のたくわえが大きくなっていく、というスキームである。

前原国土交通大臣も、いまのような、エキセントリックなダム潰しばかりに奔走されるのでなく、上記のようなミチゲーション手法を使った、総体として、日本の国土の環境資産が増大していくような、新しい公共事業のスキームを、そろそろ、それこそ、いまはやりの出口戦略として、用意すべき時期に来ているのではなかろうか?

その社会的使命として、より多くの環境インフラを創出すべき立場にある国土交通省は、不可逆的なNGO的主張のみをしてばかりいてはいけないのである。

参考 凍結対象ダム一覧

北海道
幾春別川総合開発
夕張シューパロダム■
<沙流川総合開発>
<サンルダム>-本体未着工-
留萌ダム▲

青森
津軽ダム■

岩手
胆沢ダム■

宮城
鳴瀬川総合開発※

秋田
森吉山ダム■
成瀬ダム-本体未着工-
鳥海ダム※-本体未着工-

山形
長井ダム■

茨城
霞ケ浦導水

栃木
湯西川ダム■
<思川開発>

群馬
八ッ場ダム-すでに凍結-
吾妻川上流総合開発※
利根川上流ダム群再編※

埼玉
滝沢ダム■
荒川上流ダム再開発※

富山
利賀ダム-本体未着工-

福井
足羽川ダム-本体未着工-

愛知
設楽ダム-本体未着工-

岐阜
新丸山ダム
<木曽川水系連絡導水路>
上矢作ダム※●-すでに凍結-

三重
川上ダム

滋賀
大戸川ダム-すでに凍結-
丹生ダム-本体未着工-

奈良
大滝ダム■

和歌山
紀の川大堰▲

鳥取
殿ダム■

島根
尾原ダム■
志津見ダム■

愛媛
<山鳥坂ダム>-本体未着工-

高知
中筋川総合開発

福岡
<小石原川ダム>-本体未着工-

福岡・大分
筑後川水系ダム群連携※

佐賀
嘉瀬川ダム■
城原川ダム※-本体未着工-

長崎
本明川ダム-本体未着工-

熊本
川辺川ダム-すでに凍結-
立野ダム-本体未着工-
七滝ダム※-本体未着工-

大分
大分川ダム-本体未着工-
大山ダム■

沖縄
沖縄東部河川総合開発■
沖縄北西部河川総合開発■

<>内文字は今年度凍結
※は建設着手前
▲は今年度完成予定で今後の建設段階移行はないため、実際には完成する
●は来年度中止が決定済み
■は本体工事中で今後の建設段階移行はないため、完成まで工事が進む見込み

国と水資源機構が建設中の直轄ダムは全国56、うち48ダムで現段階の工事は行うものの、次段階に進まないことになり、ダム建設が一時ストップする。
今年度は新たに用地買収や本体建設工事の契約手続に進まない。
来年度は来年度に対応する。
中止されるのはダム本体工事であって、周辺整備事業は中止にならない。
国直轄56ダムのうち、すでにダム本体があり、放流能力増大など維持管理段階にある8ダムは除く。
・48ダムは建設中だが、現段階から▽用地買収▽生活再建工事▽水の流れを切り替えるための転流工工事▽本体工事の次段階に移ることは今年度はしない。

国土交通省は、ダム廃止にミチゲーション手法を使うべき時

Category: 未分類 – Tatsuo Sasayama 4:00 PM

国土交通省は、いよいよ、本体未着工のダムについて、今年度中は、これ以上、次段階での工事の進捗はせずに、いちから、費用対効果を見直すという。

なるほど、政権交代直後なのだから、これほどドラスティックな方向転換を図らないと、ダム事業はとまらないのだろう。

しかし、ただ、工事をとめればそれでいいということではないのだろう。

つまり、政府はNGOではないので、公共事業廃止のスキームをさけぶだけではだめなので、責任政権としては、出口戦略のスキームが必要になるというわけだ。

また、本体着工前のダムのみの事業凍結というのも、素人考えにありがちな直線的な考えにもとづくもののような感じもする。

すなわち、既存のダムの除去なども含めた生態系の回復という視点が、ここでは、抜け落ちているようにも見える。

ダムのオルタナティブとして、どのような環境にやさしい公共事業を起こしていくのかは、これからの国土交通省にとって、今後の大きな課題になりうるし、そのことが、これからの国土交通省の大きな社会的存在の基盤にもなりうるものと思われる。

ここにおいて、ミティゲーションの手法が、クローズアップされうる。

ミチゲーションについては、私のサイト「日本にミティゲーション・バンキングは可能か」をご参照

日本では、「環境振替」という言葉で、本来のミティゲーションの趣旨とはまったく異なる概念(というか、まったく正反対の意味)で使われている場合が多いので、此の点、要注意だ。

ミチゲーション・バンキングの手法とは、簡単に言えば、環境価値をクレジットとし、環境破壊をデビットとし、そのデポジット(預け入れ)とウィズドゥロー(引き出し)によって成り立つ、バンキング・システムといえる。

ここで、
環境価値=環境創造される空間の現在の環境価値=クレジット
であり、
環境破壊=開発許可となる空間における環境価値の損傷=デビット
となる。
この二つが クレジット=デビット となることによって、ノー・ネット・ロス原則(No-Net-Loss)が確立しうる、というものだ。

クレジットを預けいれることによって、ウィズドゥローとして、開発許可が下りる。

アメリカ・ノースカロライナ州では、ダム除去(Dam Removal)に、このミチゲーション・バンキング手法を使っている。

以下は、その概要である。

アメリカ・ノースカロライナのミチゲーション・バンキング手法によるダム除去(Dam Removal)手法

1.まず、除去するダムまでの本流の河川長と、支流の河川長を確定する。

2.つぎに、その本流と支流において、護岸度がどの程度か、河川幅がどの程度かを確定する。

3.以下の公式によって、最大可能ベースラインのクレジットが確定する。

最大可能ベースライン・ミチゲーション・クレジット(水生生物や人的要因による要素の修正前)=ダムにいたるまでの本流の河川長×係数+ダムにいたるまでの支流の河川長×係数

係数は、
護岸度が高いほど低く、護岸度が低いほど高い。
河川幅が狭いほど高く、河川幅が広いほど低い。

4.つぎに、この本流・支流における環境状況の度合いに応じて、この3の最大可能ベースライン・ミチゲーション・クレジットを修正していく。

修正の要素としては、
①水質はどうか?
②水生生物のコミュニティが確保されているか?
③希少性水生生物種や絶滅危惧水生生物種がいるか?
の三点である。

5.この三点のいくつが該当しているかによって、相当の修正係数を適用し、以下の公式によって、修正後ベースライン・ミチゲーション・クレジットを確定していく。
さらに、人的要因としての修正係数として、河川沿岸のレクリェーション的な利用度や、環境教育的な利用度などをカウントし、修正していく。

修正後ベースライン・ミチゲーション・クレジット=最大可能ベースライン・ミチゲーション・クレジット×修正係数(修正係数は、①水質はどうか?、②水生生物のコミュニティが確保されているか?、③希少性水生生物種や絶滅危惧水生生物種がいるか?、の三つのうちのいくつに該当するかによって、該当する割合が多いほど修正係数は大きくなる。)

6.このダム除去によって生まれる環境価値をクレジット(Credit)として、ミチゲーション・バンキングにデポジット(Deposit)し、対価として、環境にやさしい公共事業の開発権をデビット(Debit)として引き出す(Withdraw)というスキームである。

以上に見たように、ダム除去によって、膨大なクレジットをミチゲーション・バンキングにデポジットすることによって、このデポジットしたクレジットを基に、環境にやさしい大規模開発の開発許可権を得ることで、総体としては、ダム除去以前よりも、社会全体の環境価値のたくわえが大きくなっていく、というスキームである。

前原国土交通大臣も、いまのような、エキセントリックなダム潰しばかりに奔走されるのでなく、上記のようなミチゲーション手法を使った、総体として、日本の国土の環境資産が増大していくような、新しい公共事業のスキームを、そろそろ、それこそ、いまはやりの出口戦略として、用意すべき時期に来ているのではなかろうか?

その社会的使命として、より多くの環境インフラを創出すべき立場にある国土交通省は、不可逆的なNGO的主張のみをしてばかりいてはいけないのである。

参考 凍結対象ダム一覧

北海道
幾春別川総合開発
夕張シューパロダム■
<沙流川総合開発>
<サンルダム>-本体未着工-
留萌ダム▲

青森
津軽ダム■

岩手
胆沢ダム■

宮城
鳴瀬川総合開発※

秋田
森吉山ダム■
成瀬ダム-本体未着工-
鳥海ダム※-本体未着工-

山形
長井ダム■

茨城
霞ケ浦導水

栃木
湯西川ダム■
<思川開発>

群馬
八ッ場ダム-すでに凍結-
吾妻川上流総合開発※
利根川上流ダム群再編※

埼玉
滝沢ダム■
荒川上流ダム再開発※

富山
利賀ダム-本体未着工-

福井
足羽川ダム-本体未着工-

愛知
設楽ダム-本体未着工-

岐阜
新丸山ダム
<木曽川水系連絡導水路>
上矢作ダム※●-すでに凍結-

三重
川上ダム

滋賀
大戸川ダム-すでに凍結-
丹生ダム-本体未着工-

奈良
大滝ダム■

和歌山
紀の川大堰▲

鳥取
殿ダム■

島根
尾原ダム■
志津見ダム■

愛媛
<山鳥坂ダム>-本体未着工-

高知
中筋川総合開発

福岡
<小石原川ダム>-本体未着工-

福岡・大分
筑後川水系ダム群連携※

佐賀
嘉瀬川ダム■
城原川ダム※-本体未着工-

長崎
本明川ダム-本体未着工-

熊本
川辺川ダム-すでに凍結-
立野ダム-本体未着工-
七滝ダム※-本体未着工-

大分
大分川ダム-本体未着工-
大山ダム■

沖縄
沖縄東部河川総合開発■
沖縄北西部河川総合開発■

<>内文字は今年度凍結
※は建設着手前
▲は今年度完成予定で今後の建設段階移行はないため、実際には完成する
●は来年度中止が決定済み
■は本体工事中で今後の建設段階移行はないため、完成まで工事が進む見込み

国と水資源機構が建設中の直轄ダムは全国56、うち48ダムで現段階の工事は行うものの、次段階に進まないことになり、ダム建設が一時ストップする。
今年度は新たに用地買収や本体建設工事の契約手続に進まない。
来年度は来年度に対応する。
中止されるのはダム本体工事であって、周辺整備事業は中止にならない。
国直轄56ダムのうち、すでにダム本体があり、放流能力増大など維持管理段階にある8ダムは除く。
・48ダムは建設中だが、現段階から▽用地買収▽生活再建工事▽水の流れを切り替えるための転流工工事▽本体工事の次段階に移ることは今年度はしない。