笹山登生のウォッチ&アナライズ –


2009年10月20日

アメリカ各州での新型H1N1ワクチン接種順位事情

Category: 未分類 – Tatsuo Sasayama 3:36 PM

日本における今回の新型インフルエンザ・ワクチン優先接種順位は、
医療関係者→妊婦・合併症患者→低年齢児童,小学生低学年→小学生高学年→65歳以上高年齢者→その他
となっているのだが、アメリカ各州ではどうなっているのだろう?

Nasal spray H1N1 flu vaccine becoming available 」によれば次のようなことらしい。

多くの州では、日本と同じく、医療関係者や介護関係者が最初の接種順位のようであるが、次のような順位の州もあって、予想以上に、ばらばらの対応のようである。

シカゴでは、医療関係者とともに、消防士など、緊急出動関係者が優先されている。

アラスカでは、2歳から4歳までの学齢前児童が優先されている。

ペンシルベニアでは、5歳から9歳までの児童が優先されている。

これは、この年齢では二回の接種が義務付けられているという時間的な問題と、この年齢帯をもっとも長い間保護しなければならない、という考え方からのようだ。

最初のワクチンは、鼻からの吸入によるフル・ミストだったが、これは、2歳から49歳までの健康な人々対象に限られる。

ワクチン注射は、最初の10月第一週では6百万から7百万服、10月第二週から4千万服、
であり、これによって、妊婦、ハイリスク者、生後6ヶ月から24歳までの子供や学生、喘息、糖尿病、幼児の介護人などの大人をまかなうとしている。

新生児については、ワクチン接種をしないので、その親や家族については、優先的にワクチン接種をすることでカバーする予定のようだ。

また、マサチューセッツ州では、ハイリスクの病気を持たない健常者については、11月まで、ワクチン注射をおくらせてもらうようにしている。

ちょっと変わっているのがミルウォーキーで、ここでは、健常な勤労者を最優先し、その次に、学童、幼稚園、ハイスクールとしている。

そして、10月下旬からは、誰でもオーケーということにしている。

限られたワクチンの各州への分け方だが、人口割で、割り付ける。

接種場所は、医者、病院、公的診療所のほか、ドラッグストアでもオーケーというのが、アメリカらしい。

もっとも、これは、フル・ミストに限られるのかも知れないが。

また、イリノイ州のように、人口密集地区や貧困地区を優先に、郵便番号コード(ZIPコード)で、接種の優先順位を決めている州もある。

このようにみてみると、新型ワクチン接種順位に対する考え方も、さまざまで、日本のような一律対応というわけではないようだ。

日本の接種順位は、基本的には、医療関係者を優先するなどについて見れば、強毒型H5N1鳥インフルエンザのパンデミック対応を踏襲した感じがぬぐえないが、弱毒性だということがわかっている新型H1N1インフルエンザへのワクチン接種対応としては、果たして、この順位でいいのだろうかという疑念はある。

むしろ、児童→小学生→中学生→高校生などを優先したほうが、ターゲットとしては、今回の場合、あっていたのではなかろうか?

また、日本においては、集団接種の可否についての議論も未成熟であったようにも思える。

特に、もっともかかりやすいといわれている、しかも、二回接種を義務付けられている小学生低学年の第一回接種がこのままだと、クリスマスになってしまう、というのでは、あまりに遅すぎると思う。

第二波が、当初予測されたほどのものではないとの見方が広がっている折から、このクリスマスの段階では、大方、第二波は、すでに勝負あったということになるのではないか?というような見方を、私はしているのだが。

いまだに、H5N1鳥インフルエンザ対応のトラウマから抜け出せていない、日本のインフルエンザ対応のように、総じて、見受けられる。

ヒトから豚への新型H1N1感染が懸念されはじめている。

Category: 未分類 – Tatsuo Sasayama 3:34 PM

養豚関係者には嫌われる話とはなるが、そもそも、今回の新型H1N1インフルエンザ・ウイルスが、どこを発祥にしたかといえば、メキシコなりカリフォルニアなりノースカロライナなりに、1998年以降、ここ十数年、養豚地帯で、静かなる循環をしていたH3N1とH1N1との豚におけるハイブリッドウイルスを、その始祖とするという説が有力であるようだ。
参考
やはり新型ではなかった、今回のH1N1新型インフルエンザ・ウイルス
気になるアメリカの養豚地帯でのH1N1感染拡大
「「今回の新型インフルエンザの祖先ウイルスは、約十年前からつい最近まで、沈黙の循環を続けていた」とする昨日のネイチャーの論文

そこで、ここにきて、今回の新型H1N1インフルエンザ・ウイルスが、今度は、ヒトから豚へ逆感染拡大を続けているのではないか、との懸念を、ニーマン博士などがしている。

このサイト「Pandemic H1N1 Spread in Swine Raises Pandemic Concerns 」などがそうだが、内容は次のとおりである。

かねてから、この問題は、今年4月末に、カナダのアルバータ州やカルガリーなどで人から豚への感染が確認された例があったが、今度は、アメリカのミネソタ州でのことである。

先週金曜日、農業関係当局が発表したところによると、8月26日から9月1日にかけて開催されたミネソタ州博覧会(the Minnesota State Fair)において、一部の大学当局者が研究プロジェクトの一環として、博覧会出品の豚からサンプルを採取したが、そのうち、三頭の豚のサンプルに新型H1N1インフルエンザ・ウイルスが検出されたということである。

この豚は、インフルエンザ症状を示してはいなかったが、関係者の話では、この博覧会には、180万人の来訪者があり、これらの人々から感染したのではないかと、推測している。

また、これらの博覧会出展用豚は、コマーシャル豚とは、隔離されて管理されているといっている。

USDAは、したがって、輸出豚肉の安全性には関係ない、と、強調しているようだ。

この件に関してのUSDAの発表内容は、このサイト「 USDA CONFIRMS 2009 PANDEMIC H1N1 INFLUENZA VIRUS PRESENT IN MINNESOTA FAIR PIG SAMPLE 」をご参照

The U.S. Department of Agriculture’s National Veterinary Services Laboratories は、公式に、この確認をした。

しかし、アメリカ以外に数カ国でも、すでに、豚への新型HN1感染が報告されている。

先にあげたカナダのほか、アルゼンチン、オーストラリア、アイルランド、ノルウェー、イギリスでは、すでに、その確認をし、OIEへの報告をしている。

そのほか、シンガポール、インドネシアにおいても、確認されているようだ。

このようなことから、ヒトから豚への新型H1N1インフルエンザ感染は、相当拡大しているものとおもわれる。

しかし、その事実を持って、例の「豚インキュベーション論」(”mixing vessels”)が再び一人歩きしてしまうと、無用の社会的な混乱を招くことになるので、このことについては、十分な検証が必要のように思える。

後記 2009年10月20日午後8時

日本でも同様のケースが出たようだ。

農林水産省は20日、大阪府内の養豚農場で飼育している豚から、新型インフルエンザの疑いがあるウイルスが確認されたと発表した。府が今月8日に実施した検査をきっかけに発覚したもので、動物衛生研究所(茨城県つくば市)で詳細な検査を行い、ウイルスの型の判定を急いでいる。感染が確定すれば、新型インフルの豚の感染例としてはカナダ、米国などに次ぎ8カ国目。国内で初めてとなる。
大阪府は新型インフルを警戒し、府内の養豚農場に対して年2回前後実施している定期検査の回数を増やすことを検討している。