養豚関係者には嫌われる話とはなるが、そもそも、今回の新型H1N1インフルエンザ・ウイルスが、どこを発祥にしたかといえば、メキシコなりカリフォルニアなりノースカロライナなりに、1998年以降、ここ十数年、養豚地帯で、静かなる循環をしていたH3N1とH1N1との豚におけるハイブリッドウイルスを、その始祖とするという説が有力であるようだ。
参考
「やはり新型ではなかった、今回のH1N1新型インフルエンザ・ウイルス」
「気になるアメリカの養豚地帯でのH1N1感染拡大」
「「今回の新型インフルエンザの祖先ウイルスは、約十年前からつい最近まで、沈黙の循環を続けていた」とする昨日のネイチャーの論文」
そこで、ここにきて、今回の新型H1N1インフルエンザ・ウイルスが、今度は、ヒトから豚へ逆感染拡大を続けているのではないか、との懸念を、ニーマン博士などがしている。
このサイト「Pandemic H1N1 Spread in Swine Raises Pandemic Concerns 」などがそうだが、内容は次のとおりである。
かねてから、この問題は、今年4月末に、カナダのアルバータ州やカルガリーなどで人から豚への感染が確認された例があったが、今度は、アメリカのミネソタ州でのことである。
先週金曜日、農業関係当局が発表したところによると、8月26日から9月1日にかけて開催されたミネソタ州博覧会(the Minnesota State Fair)において、一部の大学当局者が研究プロジェクトの一環として、博覧会出品の豚からサンプルを採取したが、そのうち、三頭の豚のサンプルに新型H1N1インフルエンザ・ウイルスが検出されたということである。
この豚は、インフルエンザ症状を示してはいなかったが、関係者の話では、この博覧会には、180万人の来訪者があり、これらの人々から感染したのではないかと、推測している。
また、これらの博覧会出展用豚は、コマーシャル豚とは、隔離されて管理されているといっている。
USDAは、したがって、輸出豚肉の安全性には関係ない、と、強調しているようだ。
この件に関してのUSDAの発表内容は、このサイト「 USDA CONFIRMS 2009 PANDEMIC H1N1 INFLUENZA VIRUS PRESENT IN MINNESOTA FAIR PIG SAMPLE 」をご参照
The U.S. Department of Agriculture’s National Veterinary Services Laboratories は、公式に、この確認をした。
しかし、アメリカ以外に数カ国でも、すでに、豚への新型HN1感染が報告されている。
先にあげたカナダのほか、アルゼンチン、オーストラリア、アイルランド、ノルウェー、イギリスでは、すでに、その確認をし、OIEへの報告をしている。
そのほか、シンガポール、インドネシアにおいても、確認されているようだ。
このようなことから、ヒトから豚への新型H1N1インフルエンザ感染は、相当拡大しているものとおもわれる。
しかし、その事実を持って、例の「豚インキュベーション論」(”mixing vessels”)が再び一人歩きしてしまうと、無用の社会的な混乱を招くことになるので、このことについては、十分な検証が必要のように思える。
後記 2009年10月20日午後8時
日本でも同様のケースが出たようだ。
農林水産省は20日、大阪府内の養豚農場で飼育している豚から、新型インフルエンザの疑いがあるウイルスが確認されたと発表した。府が今月8日に実施した検査をきっかけに発覚したもので、動物衛生研究所(茨城県つくば市)で詳細な検査を行い、ウイルスの型の判定を急いでいる。感染が確定すれば、新型インフルの豚の感染例としてはカナダ、米国などに次ぎ8カ国目。国内で初めてとなる。
大阪府は新型インフルを警戒し、府内の養豚農場に対して年2回前後実施している定期検査の回数を増やすことを検討している。