本日、WHOから発表された
「Experts advise WHO on pandemic vaccine policies and strategies」
の概訳です。
WHOの免疫化に関する戦略的勧告専門家グループ(SAGE)は、10月27日から29日にわたって会議をひらき、 現在における世界の感染流行の疫学的状況について再検討し、公衆衛生的な観点からの問題を考慮した。
そこでは、ワクチンの免疫原性についての臨床実験からみてのワクチン接種の可能な状況や、現在接種中の国々における安全性のモニタリングについての速報結果などについて、議題とした。
同時に、ウイルスからの防御に必要な接種回数についてや、ことなった年齢層における季節性と新型とのワクチンとの同時接種や、妊婦へのワクチン接種の問題についても議題とした。
さらに、2010年における南半球での季節性インフルエンザワクチンの推奨インフルエンザワクチン製造株の構成についても、議題とした。
①現在の状況
世界の現状は、ティーンエージャーやヤングアダルトの感染が依然として増加し続けており、また、乳幼児の入院率も増加している。
患者の1パーセントから10パーセントが、入院を 必要としている状況である。
また、入院した患者の10パーセントから25パーセントが、集中治療室への入室を必要とする状況である。
そのうちの2パーセントから9パーセントが重症である。
すべての入院者の7パーセントから10パーセントが妊婦であり、一般人と比較すると、妊婦は、その10倍、集中治療室での看護を必要とする状況である。
このような現在の状況を踏まえ、 専門家は、以下の勧告をする。
②ワクチン接種は、一回を推奨する
現在認可されているワクチンについて、それが、生であろうと、不活化であろうと、アジュバ゜ント入りであろうとなかろうと、監督機関からの指示が一致している場合には、10歳以降の成人・青年への接種は、一回接種を推奨する。
生後6ヶ月から10歳以下の子どもについては、免疫原性データが限られており、更なる研究が必要である。
国が子供たちに優先接種順位を 置いている国においては、できるだけ多くの子どもたちにワクチン接種がいきわたるように、一回接種を推奨する。
なお、免疫障害を持つ人々に対しては、その投与量如何について、更なる研究が必要であるということを強調しなければならない。
③季節性インフルエンザワクチンと新型インフルエンザワクチンの同時投与について
季節性インフルエンザワクチンと新型インフルエンザワクチンの同時投与については、臨床実験が進行中であるが、CDCの見解では、弱毒化した生ワクチンについては、同時投与は避けるべきである、としている。
季節性・新型両方のワクチンが不活化ワクチンであったり、片方のみ生ワクチンであった場合では、同時投与は許される。
このような場合の同時投与では、有害事象のリスクを増大させる証拠は、なんら見当たらない。
ワクチンの安全性については、これまでワクチン接種したものについてのモニターでは、異常な副作用(副反応)は見られていない。
いくつかの副作用(副反応)例は、あるが、それらは、季節性インフルエンザワクチン投与で見られる範囲のものにとどまっている。
現在のところは、安全性は確認されているが、引き続きモニターは続ける。
④妊婦へのワクチン投与の安全性について
妊婦へのワクチンについて、実験動物への生弱毒化ワクチンの投与では、アジュバントのあるなしにかかわらず、受胎能力,妊娠、胎芽の発達、胎児の発達に対しての、直接的・間接的影響は見られていない。
これらのことから、特定の禁忌症状が確認されない限り、認可されたワクチンであれば、妊婦へのワクチン使用は可能である。
⑤2010年の南半球での推奨インフルエンザワクチン製造株の構成について
二つのオプションについて、検討された。
ひとつは、三価ワクチン(H1N1.H3N2.B型)、
もうひとつは、二価ワクチン(H3N2.B型)である。
後者については、現在の新型H1N1ワクチンを補う形での接種となる。
専門家グループとしては、両者のオプションとも可能な選択である、とする。
以上