うーん。
これですよね。
市場はどう受け止めるんでしょうかね。(立会い時間中の発表であったにもかかわらず、日経平均は反応せず。)
この成長戦略の基本方針要旨をみますと、
これら項目すべて、結果の荷姿ですよね。
ストーリーがない。
この荷姿に至るインセンティブについては、皆目かたられていないんですよ。
馬が水を飲んだ後の姿しか書いてなくて、どうやって、馬を水辺に連れて行くか、どうやって、馬に水を飲ませるのか、についての、戦略はまるきし書いていないんですわ。
需要創造という言葉は、文中に踊れども、その創造のための戦略については、まったく触れていないのである。
馬を水辺に連れて行くニンジンの中身を示さないで、何が戦略ですか。
政治のリーダーシップにより「新需要創造」「需要からの成長」を目指し、「環境・エネルギー」「健康(医療・介護)」「アジア」「観光・地域活性化」の4分野で、国民生活向上に主眼をおいた需要や雇用の創出をはかる
とはいわれているんですが。
ディマンド・プッシュ(demand-push)型の成長のお題目を唱えるのであれば、そこにいたるインセンティブのストーリーを示さなければならないのに、そのストーリーを示せ得ないでいる。
どうもこの政権は、「内需」というキーワードを狭義に捉えすぎているような感じがしていますね。
一口に「内需」といっても、①生活必需品、②最終消費財、③中間財、④インフラ耐久消費財 これらそれぞれに対する内需があるわけでして、その最終消費先の帰属が、日本か海外かによって、内需か外需かの仕切りができているということでしょう。
ですから、外需振興と内需振興とを、画然と分けて考えること自体がナンセンスのようにも思えますね。
ところが、どうも、民主党政権は、このうちの、生活必需品、最終消費財にのみ目が行ってしまって、直接型支払いをすれば、内需がついてくる、との短絡的な考えをもっていらっしゃるようにも、見受けられますね。
ごくマクロ的に考えれば、内需振興を標榜するのであれば、
①デフレ対策
②円高対策
③新しい形の公共事業によるビッグプッシュ対策、
④地域への細かいSME換金回路の構築、
この四つに絞られうると思うんですけど。
なぜなら、
①いくら、直接型支払いによって、末端消費者の購買力を高めようと思っても、そこには、すでに「デフレの罠」が存在しているので、その罠に、購買力は、吸われてしまうということ。
②いかに、内需振興といっても、クローズドシステムでの内需振興はありえないわけで、当然、円高対策を含めた、従来どおりの輸出振興策を伴わなければ、波及効果のある中間財に対する内需は生まれ得ないということ、
③インフラ耐久消費財に対する新しい形の公共事業での内需振興対策を、新しい視点から考えなおさなければならないこと
④バラ撒きが単なるバラ撒きに終わらないためには、バラまきからの卒業回路が必要ということですよね。これは、マイクロ・クレジットの考えに似たもので、地域に細かいSME(Small and medium enterprises)の回路を作っていく
ということですよね。
このそれぞれに、インセンティブを引っ付けていけば、成長戦略の骨格はできると思うんですけど。
このようなマクロの整理から見てみると、果たして、この民主党政権の新成長戦略は、答えているかと言えば、何も答えていないということになるんじゃないでしょうかね。
やはり、これをみると、経済オンチがそろった内閣という世間のそしりは、まぬがれえないようですね。
まあ、菅さんは、「やっつけ仕事でホッチキスでとめるのはいやだ。」というのですが、この要旨を見ると、とめうるホッチキスの針自体も、かなり危ういんでは、などと、心配になってきますね。
この新成長戦略には「輝きのある日本へ」という副題がついていますが、これでは、「輝きのある日本」ではなくて、「つぶやきのある日本」、「ポヤキのある日本」になってしまいますよ。
最後に、このサイト『A Tale of Two Theories: Supply Side and Demand Side Economics 』の紹介をしときましょう。
サプライ・サイドに立った経済政策も、デマンド・サイドに立った経済政策も、ともに、限界がある、というお話ですね。
参考 その他のサプライ・サイドとデマンド・サイドの経済政策に関するサイト
「Demand-Side versus Supply-Side Theories of Trade Policy: An Empirical Test」
「Demand-Side or Supply-Side – Tax as a Policy Tool 」
「Link between demand-side and supply-side sources of inflation 」
「Resurrecting Fisher and the demand for supply-side economics」
「The Supply-side and Demand-side Effects of Government Size and Investment」
「Macroeconomics – Cyclical fluctuations – demand and supply-side shocks 」
「Demand Side Supply side Infrastructure」