笹山登生のウォッチ&アナライズ –


2010年1月16日

政権交代後の環境政策スキームの課題

Category: 未分類 – Tatsuo Sasayama 5:30 PM

三年前から、明治大学の学部間共通総合講座という講座で、年一回、90分程度、「環境と政治」というようなテーマで、講義らしきものを受け持っているのだが、昨年は、ちょうど予定当日、台風の襲来で講義が流れてしまい、一昨日、実現した。

なんやら、前々日は雪模様なので、今回も流れるのかなと思ったが、どうやら、無事に終わった。

毎年話すことが同じではと思い、今回は、政権交代後の環境行政を中心にしての話とした。

とくに、ダム問題にミチゲーション手法を用いる方法などを、アメリカのノースカロライナの事例をもとに話したり、民主党政権のお好きな直接支払い型政策の限界や、景気対策としての問題点、あるいは、CO2削減に京都メカニズムを用いる問題や、鞆の浦訴訟における景観権の位置づけ、などについて、話した。

相変わらずの汚い私の板書で、受講生の方は、おそらく、あきれていたのではないかと、内心、ちょっと、申し訳ない気がしたが、準備の段階で、事務局の方が、『パワーポイントはお使いではないですね。』などといわれてみると、今時は、板書よりも、パワーポイントが主流なのかな?などとも思ってしまうのだが。

ただ、こうして、三回もやってみると、この板書ってのは、話すほうから見ると、結構息抜きの時間帯になって、書いている間に、次の流れを考えられるっていう利点があるようだ。

それと、時間稼ぎや話の間の要素もかなりある。

聞いているほうも、息抜きになる面があるんではないでしょうかね。

いろいろなシンポジウムに出ているが、今はやりのパワーポイント・スライドによる説明は、素材感がないって言うか、ざらざら感がないって言うか、朗読をしているような無機的な講義に思える。

話すほうがすでにパワーポイント準備の段階で、話のストーリー/展開を予定してしまっているという点で、意外感や新鮮感や端無くもみえてしまう話し手の人間性の要素などが、パワーポイントの素材で隠されてしまう、というデメリットもあるんではなかろうか?

というわけで、今回の講義は、話し足りないことがいっぱいあるままに、あっという間に時間が終わってしまった感じだ。

最後の質問で、『小沢事件の今後の展開は?』なんて、きわどい質問があったが、『国会開会前の昨日(1月13日)の検察の捜索の動きから見ると、今日から開会日の1月18日までの金曜・土曜・日曜のあいだに、石川さんの逮捕はあるでしょうね。』なんて、政治評論家気取りのことを言ったら、昨日(1月16日)、そのとおりの展開になってしまったのには、いささか、後で、びっくりした。

以下は、今年の講義メモである。

講義メモ(2010年01月14日)

わが国における環境政治家の役割の変化について

1.政権交代と環境政策の変化

(1).これまでのスキーム

これまでの「政・官・民」の力関係は、グー・チョキ・パーの関係
政治家は、予算を取れなくなってきたし、小選挙区なので、専門力を行使できなくなってきた。
官僚は、許認可権限を奪われたり、委託研究による民間への甘いえさが行使出来なくなってき た。
民は、業界圧力としての政治家への働きかけが出来なくなってきた。

(2).新しい環境NGO/NPOの動き

このような中で、新しい「三権」として「NPO/NGO・官・民」の力関係が生まれてきた。
一方、環境NPO/NGOは、これまでの抵抗型の活動から、提案型の活動にシフトしてきた。
特に諫早干潟問題における山下弘文さんらの活動が契機になった。
代議制の形骸化と環境NPO/NGOの変質-行政側が、パブリックコメントなどを通じて、代議制をスルーして、直接、環境 NPO/NGOに働きかける比重が多くなってきた。

(3).政権交代後での環境政治家に求められる新たな役割

政治主導と官僚非依存によって、これまでの政・官・民のけん制関係が不透明になってきている。

(政⇔官⇔議)⇔(民)
というような関係に変質しつつある。

それにともなう官僚の萎縮が環境問題にどう影響を及ぼすのか?-よい面、悪い面-
議会内部での健全なチェック機能がはたされるのか?
議員立法の不活発化による影響は?
族議員不在の功罪
民主党政権の環境政策へのスタンスは?

これまでの民主党内における環境問題への取り組みへの評価-公共事業チェック機構を実現する議員の会(公共事業チェック議員の会)の活動や、諫早問題などへの取り組みでは評価できる人材がいる。
これまでのNPOへの近接度は自民党よりもあるが、これまでのNGO関連ブレーンの変質はあるだろう。

これからの民主党の課題-単なる公共事業反対のスタンスではなく、問題解決のための新しい政策スキームや出口戦略のスキームの構築が必要

2.民主党政権が志向しようとしている政策課題についての問題点

(1).ターゲット政策から直接支払い政策への転換

成長戦略としては、サプライ・サイドへのインセンティブからデマンド・サイドへのインセンティブへの転換
菅さんの言われる第三の道とは?
直接支払い政策は、デフレの罠にとらわれる可能性
直接支払い政策は、これまでの面的なインセンティブからホロニックなインセンティブへ、ニュートラルでありフラットなインセンティブへの転換であるが、その点が、民主党自身にも理解されていない嫌いがある。(『直接支払いとは、農協などを経由せずに、直接、国民の口座に現金が振り込まれることをさしている』、などと、平気で言う大臣もいる位だ。この大臣には、ニュートラルなインセンティブという点がまったく理解されていない。)
直接支払い政策の課題-トランザクション・コストの増大(徴税コストと措置コストがダブルにかかる)
必要な、トランザクションコスト低減のための納税者背番号制の導入の必要性

(2)出口戦略が見られないダム問題

すでにダムの費用便益比(B/C)に組み入れられている、ダムの水源をもとにした水系での農業かんがい排水事業などとの関係

ダム除去問題解決にミチゲーション手法を使うことは可能なのか?

アメリカ・ノースカロライナのミチゲーション・バンキング手法によるダム除去(Dam Removal)手法

最大可能ベースライン・ミチゲーション・クレジット(水生生物や人的要因による要素の修正前)=ダムにいたるまでの本流の河川長×係数+ダムにいたるまでの支流の河川長×係数
(係数は、護岸度が高いほど低く、護岸度が低いほど高い。また、河川幅が狭いほど高く、河川幅が広いほど低い。)

修正後ベースライン・ミチゲーション・クレジット=最大可能ベースライン・ミチゲーション・クレジット×修正係数
(修正係数は、①水質はどうか?、②水生生物のコミュニティが確保されているか?、③希少性水生生物種や絶滅危惧水生生物種がいるか?、の三つのうちのいくつに該当するかによって、該当する割合が多いほど修正係数は大きくなる。
また、人的要因としての修正係数は、河川沿岸のレクリェーション的な利用度や、環境教育的な利用度などをカウント修正)

このダム除去によって生まれる環境価値をクレジット(Credit)として、ミチゲーション・バンキングにデポジット(Deposit)し、対価として、環境にやさしい公共事業の開発権をデビット(Debit)として引き出す(Withdraw)というスキーム

(3)25%CO2削減目標は真水か京都メカニズム分をカウントか?

鳩山さんの90年比25%削減の中身が不明
自国での削減による目標達成のほか、他国での削減量を自国の削減としてカウントできる京都メカニズムがある。

京都メカニズム
①排出量取引(日本での排出権市場は成熟していない。シカゴのCCXやCCFE(先物)、ユーロのECXには、すでに勝てない。)、
②CDM(Clean Development Mechanism.途上国対応の削減プロジェクト実施、削減できた部分について、クレジットと受領)、
③JI(Joint Implementation.先進国対応の削減プロジェクト実施し、削減できた部分について、クレジットと受領)
からなっている。
このほか、現在、新たなスキームとして検討されているのが、
「REDD」(途上国の森林維持に与えるクレジット)
「セクトラル・クレディティング・メカニズム(SCM)」(産業部門別に達成部門に対して与えるクレジット)
「NAMAクレジット」(途上国に与えるクレジット)
などである。
日本は、そのどちらを主軸として削減目標25パーセントを鳩山さんが言っているのか、その戦略が不透明である。
環境問題の経済化(炭素関税など)への対応に備えるべきとき

(4)サードパーティーリスクの増大を考慮していない羽田ハブ空港化問題

航空機の発着に伴う発着一回あたりの離陸・着陸のリスクは低減しているが、総発着数の増大が、ハブ空港化によって、巨大な数に及ぶことによって、事故確率が増大。
着陸航路や離陸航路のゾーンにおける第三者に対するリスクが、累乗的に増大
これに、航空路下の精製所や発電プラントなどへの二次的なサード・パーティー・リスクが伴う。

(5)これまでのトレードオフのスキームによる環境利害調整スキームは見直す必要があるのではないのか?

排出権取引

汚染者負担原則
企業が利益拡大のみを目指したがために生じた「一方向外部経済」(One-Directional External DisEconomy)とともに、一地域において、面的に発生する外部不経済は、その地域の被害者が加害者でもある、という複雑な因果関係の下に生じている外部不経済(相互外部不経済-Reciprocal External DisEconomy-)を吸収できない、

No-Net-Loss原則(ミチゲーション・バンキング)
オンサイトでのトレードオフ
オンサイトとオフサイトとのトレード・オフ
イン・カインド(同種)とアウト・オブ・カインド(異種)とのトレード・オフ
期近と期先との間のトレード・オフ(時の要素を盛り込んだ新しいスキーム、拡大ミチゲーション構 想など )

環境スワップ(DNS)
「発展途上国の累積債務の返済負担軽減」

「保護区の設定など, 自然保護政策を確約させ、環境 NGO が金融機関から債権を割引価格で購入し,金融機関は途上 国の現地通貨を債務国に提供」
とのトレードオフ

(6)先進化する司法見解に政治はついていけるのか?

司法見解では認知されつつある環境権
反射的利益からの離脱
利益の比較衡量での環境権のカウント
公共益対私的利益間の利益の衡量から公共益と環境の公共益との比較衡量へ
地域不在者のもつ非使用価値を認めるか-原告適格性の拡大

鞆の浦景観訴訟広島地裁判決を例にして
景観利益は、地先権の利益の中に入り、公有水面埋め立て法の損得カウントに入れる。という画期的判決
反射利益以外のものが考慮された
時のアセスの観点から、環境紛争を長期化させない和解スキームの確立が必要

国立マンション問題-2006年3月30日、最高裁の国立マンション訴訟-の例
「住民の景観利益を認める」

沖縄・慶良間海域でのエコツーリズム推進法によるダイバーの立ち入り制限と海域での自然観光資源に対する地先権の問題

環境政治家に求められる新たな役割 -先進的な司法見解の取り入れと、行政に対する牽制力の発揮
アルビン・トフラー夫妻の「歴史にも時効を」の観点に立った応報的司法から、修復的司法へのシフト、
被害者・加害者和解プログラム(VORP Victim offender Reconciliation Program)や、被害者・加害者仲裁プログラム(VOM Victim Offender Mediation Program)のスキームの導入
除斥期間の起算点となる「不法行為の終了」かラ被害発生、除斥期間の満了(時効)にいたるまでの期間の中断のない長期化と「時のアセス」スキームの必要性
これまでの国家賠償法訴訟は、国側の控訴の連続で、原告の高齢化を待って、除斥期間に逃げ込むケースが見られた。

(7)、環境をスキームにした新しい貧困・雇用・景気対策スキーム確立の必要性

新しい景気刺激策は、サプライサイドに対するビッグプッシュでも、デマンドサイドに対するビッグプッシュでもなく、その中間である第三のサイドである、非利益追求型であり、非措置型でもある、主体に対するビッグプッシュである必要がある。
その第三の主体とは?
市民ビジネスであり
BOP(Bottom of Pyramid)ビジネスでもある。

たんなる直接支払いでなく、持続可能型のビッグプッシュによる景気浮揚を志向すべきである。

BOP(Bottom of Pyramid)ビジネスの国際的な具体的動きー
マイクロ・クレジット、
ITC Limited主体で行っている農業分野におけるe-Choupals、
貧困者特定マーケットに向けた商品の開発(水でゆすげるノンパッケージのシャンプーの商品開発など)、
環境悪化地域におけるごみ収集や環境浄化のための換金回路の構築、など
これらの国内版貧困ビジネス・スキームの構築

コミュニティ・オーガナイザーの必要性
農村開発の新手法としてのSME(Small and Medium-Sized Enterprieses)やLEADERプログラムの構築、ダイバーシフィケーション

直接支払い型の財政支出よりも、持続可能型の換金回路の構築が地域経済にとっては必要

3.その他-住民の環境要望を政策実現するまでのシェーマ-

住民の具体的な環境要望を法制度の実現にまで向かわせるための手順

マスコミ報道などを契機にしての政策変更を促すキーワードの発生と、そのキーワードに関心 を示すNGO/NPOやオピ二オンリーダー、政治家、官僚の発生

その機会を捉えての政治家を中心にしての勉強会やシンポジウムの開催を仕掛けるとともに、 NGO/NPOとの接触・情報交換などの機会の発生

それらを契機にして、これらのテーマを省益にしたい官僚の取り込みと、これらのキーワード を法制化する際の、インセンティブの確定と、調査費などの予算措置の確保

法制化を議員立法(衆法)でやるのか、内閣法(閣法)でやるのかの選択。議員立法でやる場合、担当 する委員会の選択。野党窓口の確保。野党との修正合意の根回し。 内閣法でやる場合は、キーワードが複数省庁にまたがる場合、その繋ぎとして、まず、議員立法 先行型で行う必要もあり。

議員立法でやる場合は、与野党の委員会理事間で合意をはかり、委員長提案で、討論省略、一 挙に採決する方法もある。

パブリック・コメントによる内容修正のフォロー

環境政治家に求められる新たな役割-
提案するNGOからの提案の積極的取り入れと、それをたたき台にして省庁と、解決策を探る努 力
官僚任せにしない、政治家自身の環境要望のシーズ探し 特に、改革特区制度を利用した環境要望の実現化
貧弱な議員立法のインセンティブの改善
フォーカス・グループの結成と、そこからのフィードバック
NPO提案を法制化に結びつけられうるようなアドボケート・プランナーの活用
代議制とNPOとを結びつけうるNPO of NPO的存在の充実

以上

2010年1月15日

秋田県の2010年産米生産数量目標の市町村配分一応決定

Category: 未分類 – Tatsuo Sasayama 5:32 PM

2009年産米で大潟村など3市村に科したペナルティー計5216トンの3分の1に当たる1739トンを残り22市町村から一律に削減し、3市村に追加配分

3年で是正という形になる模様。

大潟村の転作率(生産調整の面積の水田面積に占める割合)は48.7%となる。県平均との差は12ポイントと09年の15.4ポイントから縮まる。

大潟村の削減負担の軽減量は、前年対比△1884トンに終わった。

もっとも、減反破り派は、これまで、ペナルティがかかろうとかかるまいと無視してきたのだから、どうってことはないのかもしれない。

あとは、大潟村内部での、減反遵守派と減反非遵守派とのあいだの問題となる。(大潟村内部では、減反遵守派64.3%作付け可能、減反非遵守派38.2%作付け可能、この両者のアンバランスは、大潟村内部で、さらに、入れ子的にダブルの激変緩和措置がとられ是正するしかない。)

マクロでの謝罪を後回しにして、ミクロでの謝罪を優先させてしまった、赤松農林水産大臣ご自身が昨年11月26日に放ったブーメランが、結局、大潟村にかえってきてしまったという形だ。

これに対して、秋田農政事務所の綿谷弘勝事務所長は「新たに参加する農家にとって高いハードルとなる配分は不適切だ。農林水産省に結果を伝え、判断を仰ぎたい」と述べ、国が配分の再考を求める可能性に含みを残している。

でも、これ以上、農林水産省が突っ張ると、逆に国が痛い目を見るだけなんだが--

もし、それを言うのだったら、なぜ、全国配分段階で、過去のペナルティの処理についてのマクロでの方針なり、調整配分なりをしなかったのか?

国はこの段階で、村への配分増を考慮して県別配分をするべきだったのだ。

国の不作為といわれても、仕方がない。

地域自決主義といいながら、国の意にそわない地域の総意が出たときには、いちゃもんをつける、では、発展途上国のお上と同じような貧しさを感じるのだが。

参考

秋田県の生産数量目標
2006年 497290トン
2007年 499280
2008年 474810
2009年 467160
2010年 461870

国の秋田県に対するペナルティー
2006年 8442トン
2007年 5230
2008年 3542
2009年 292
2010年 0

うち、大潟村のペナルティー
2006年 6085トン
2007年 4341
2008年 3000
2009年 274
2010年 0

秋田県独自の大潟村に対するペナルティー
2006年 -
2007年 -
2008年 924トン
2009年 4830
2010年 3220

大潟村の全削減数量
2006年 6085トン
2007年 4341
2008年 3924
2009年 5104
2010年 3220

追記 配分修正(2010年1月18日)

県の2010年産米の生産数量目標の市町村別配分に対し、赤松農相が再考を求めていた問題で、県は18日、大潟村に実質的に残していたペナルティーを全面的に解消することを決めた配分数量を各市町村に通知した。佐竹知事は「本県が大きな不利益を受けることを避けるための苦渋の決断」と理解を求めた。

新方針では、09年産米の市町村別の生産数量目標で大潟村など3市村に科された5216トン(うち大潟村分4830トン)を解消する一方で、減反達成市町村に同量を割り振った。

これにより、大潟村は生産数量目標は前年比18・2%の大幅増となったが、能代、男鹿、潟上を除く減反達成市町村は、当初よりも減少幅が拡大し、2・4~2・5%減ることになった。

県内一のコメ所で最も大きな数量を削減された大仙市の高嶋良美・農林振興課長は「正直者がバカを見る結果だ」と不満を示した。
一方、大潟村の高橋正行・産業建設課長は「今回、大潟村のペナルティーが他の市町村から減じられることになったが、これまでは逆だったことをご理解いただきたい」と話した。

県では不公平感を払拭(ふっしょく)するため、農家への新たな支援策を10年度当初予算案に計上する方針。具体的には新制度で助成金が目減りする大豆などの転作作物に対し、県独自で上乗せする案などを検討するという。

以下は私の感想

以上の佐竹知事苦渋の選択だったが、この間における秋田県選出衆参国会議員が、秋田県のために調整に動いた節は見られない。

間に立った佐竹知事、木村JA県中会長をはじめとした協議会のメンバーが、自らの立場を犠牲にしての大人の対応でもって、農林水産省の面子もたてて、一応の結論に達したという形だ。

赤松農林水産大臣も大人気ないリアクションぶり、秋田県選出民主党衆参国会議員も能無しの体たらく、いったい、秋田県のこれからの農政はどうなるんでしょうかね。

◇修正後市町村別生産数量目標◇

市町村   生産目標(トン)  増減

(率) (面積)

鹿角市    12,830 ▼ 2.5 ▼ 59

小坂町     1,453 ▼ 2.4 ▼  9

大館市    22,673 ▼ 2.5 ▼111

北秋田市   18,564 ▼ 2.5 ▼ 87

上小阿仁村   1,609 ▼ 2.5 ▼  8

能代市    22,775   0.4   24

藤里町     2,778 ▼ 2.4 ▼ 13

三種町    21,131 ▼ 2.5 ▼101

八峰町     6,540 ▼ 2.5 ▼ 27

秋田市    28,280 ▼ 2.5 ▼140

男鹿市    15,128 ▼ 1.1 ▼ 30

潟上市    11,317 ▼ 0.8 ▼ 16

五城目町    5,751 ▼ 2.5 ▼ 28

八郎潟町    4,167 ▼ 2.5 ▼ 21

井川町     4,179 ▼ 2.5 ▼ 19

大潟村    29,580  18.2  790

由利本荘市  38,502 ▼ 2.5 ▼159

にかほ市   12,165 ▼ 2.5 ▼ 43

大仙市    67,255 ▼ 2.5 ▼272

仙北市    17,215 ▼ 2.5 ▼ 56

美郷町    22,963 ▼ 2.5 ▼ 92

横手市    59,291 ▼ 2.5 ▼289

湯沢市    21,359 ▼ 2.5 ▼ 86

羽後町    13,191 ▼ 2.5 ▼ 49

東成瀬村    1,174 ▼ 2.5 ▼  6

計     461,870 ▼ 1.1 ▼907

※▼はマイナス。増減率は%で面積換算の単位はヘクタール

追記2.1月20日付けの地元紙『秋田魁新報』の社説

社説:コメ配分格差解消 地域事情無視の国指導
2010年産米の生産数量目標の市町村配分で県は、生産調整(減反)未達成の大潟村など3市村に県独自の配分格差(ペナルティー)を残す当初方針を撤回、ペナルティーを10年度で一気に解消することにした。解消しなければ新設の戸別所得補償制度のモデル事業から本県を外すという「圧力」が国からあったためだ。地域事情を無視した国の強権ぶりには憤りを覚える。民主党の掲げる「地域主権」の趣旨にも逆行するだろう。

戸別所得補償制度を導入するに当たって国は、営農に支障を来すとしてペナルティーの全量解消を打ち出したが、地域によっては過去の経緯もあるため暫定期間として3年程度での全量解消もやむなしとしていた。これを踏まえ市町村への配分を協議する県米政策推進協議会(会長・佐竹敬久知事)は、生産調整未達成の3市村に対し09年度に科した県独自のペナルティー5200トンのうち、10年度は3分の1の1700トン(うち大潟村1600トン)を科すことにし、残り3分の2は2年程度で解消することを決定した。

これに赤松広隆農相が「大潟村の減反非協力農家はこれではやっていけない。秋田の決定を認めるわけにはいかない」と激怒。来県した農水省幹部も、10年度での全量解消を強く求め、解消しなければモデル事業の対象外にすることも示唆した。

国がモデル事業などの制度を詳しく都道府県に説明したのは昨年末のことだ。自らの制度設計の遅れから県への指導に適切さを欠いた点は否めない。また県が国の真意を測りかねたことも混乱の一因だろう。

本県の農家の8割は減反に協力してきており、こうした農家へのねぎらいの言葉もなく、とにかく大潟村へのペナルティー解消を強調する国の姿勢には、多くの農家が「正直者がばかをみるようなもの」と強い不満を抱いている。過去を一切水に流せといっても、言うはやすく行うは難しだ。それを数年かけて解決するという県の選択は、ベストではないにしろベターだったと考える。

ただ、国から言われたから従うという県側の姿勢は主体性がなく、弱腰と言わざるを得ない。確かにモデル事業から本県が外されるとなれば、農家への打撃は大きい。しかし、福島県などは数年かけて全量解消することを決め、国も容認する方向だ。本県の場合、解消幅が小さいため国が問題視したのだ。とすれば、解消幅を80%、90%へ引き上げるという選択もあったのではないか。地域の思いを代表して国へ抵抗を示すことも知事には求められる。

ともかく県は全量解消を決定した。生産数量目標の配分は大潟村と能代市を除く23市町村で減少する。生産調整に協力してきた農家には追加的な負担が伴う。県はこれら農家に数億円規模の支援策を打ち出した。着実に実行してもらいたい。

追記3 2010年1月15日の赤松農林水産大臣の記者会見より

以下、大臣記者会見

大臣
それと、あと、昨日、例の、秋田県の、非常に全国注目の中で、協議会が行われたようでございますけれども、秋田県の農政事務所の所長も参加をして、これ、やっていまして、結論で言えば、決まらなかったというのが結論なんですけれども、ただ、信じられないようなことが出ているのが、これ、ちょっと(記者に) 配って。
ここに、要は、全農の人だとか、そういう人たちは、あるいは、今までいい目をしたきた人たちは、ペナルティーは、そのままやるべきだということで、せいぜいあれしても、3分の1ぐらいの補正しか認めないと、俺らは、断固今までの数字を守り抜くんだみたいなことで言っていると。この表の、ここを見てもらうと分かるのですが、「その他の市町村」のところでも、わずか、0.4パーセントぐらいでさえ譲らないと、譲らないと。自分たちは、断固65.何パーセントを保持するんだというようなことを、平気でこういうことを主張しているということで、今まで、とにかく、非協力だったやつは、もう、38パーセントでいいんだということは、そういう低くして、そういうやつは、もう入ってこないようにして、今までどおり自分たちが、高い率の、人の分を全部、こうもらって多くやっているわけですから、それを保持したいというようなことを平気で言っていると、信じられないことですけれども。
ただ、僕らは、簡単に分かりやすく、時代は変わったということ、まだ、分かっていませんねということ、言い方しているのですが、時代が変わったという意味は、前回、去年までは、コメを作ることに、別に、税金は入ってなかったんです。転作したら、転作の方については出るけれども、コメそのものについては、税金入っていないわけ。ところが、今度は、コメ作ることそのものに税金が入っていくわけですから、決められた基準以上の税金を、勝手に自分が枠を拡げて、もらうなんてことは、認められるわけがないので、その辺のところを、やっぱり、ちょっと、まだ理解をしてもらってないんじゃないかというふうに思います。
ただ、私は、非常に、そういう意味では、現実論者ですから、教条的に、そういうことを言っているんじゃなくて、大原則を、まず、それを認めてもらわないと話は進みませんよと。ただ、大原則を認めた上で、激変緩和みたいな形で、今まで65ぐらいだったのを、じゃあ、ドーンと、涌井さんたちと横一列一緒なんていうことを言っているわけじゃなくて、これは2年、3年かけて、そこへ持って行ってもらえばいいけれども、まず、その前提を認めてもらわないと、それは、もう話進みませんし、たまたま、じゃあ、2年後に、3年後に、ゼロに、差はゼロにするから、そのために今年は、まず、このままで、何とか勘弁してくれと、あるいは、ここまでだったら、何とかできるということの話合いでないと、これは、何ともならない。
これは、同様のことを、別に、僕は、涌井さん達だけに肩持っているわけじゃなくて、涌井さんにも言っています。いっぺんに、今までの経過があるから、そんな、直ちに、みんなと一緒というわけにはいかないよと、だから、多少、しかし、ペナルティーを科さないという原則があるのだから、そういうことを見越して、まあ、そこそこのところで、やっぱりきちっと話合いして、合意をして、やりなさいということを言っているわけで、まあ、ここからは、じゃあ、どうするのかという話ですが、今まで、(総合食料局食糧)部長を、(秋田農政事務)所長だけでは、なかなか権限もありませんから、総合食料局の部長を行かせてましたけれども、今度は、部長よりも、一つレベルアップして、もう、(総合食料)局長に、直接、秋田へ行って、きちっと、それ話してこいと、もちろん、こんな、例えば、数字で38.いくつ、片や、65.3なんていうことであれば、農水大臣としては認められないので、これはもう、はっきりそういうことをお伝えしてらっしゃいということを、指示をいたしました。
髙橋(総合食料)局長は、明日行くのか、いつ行くのか分かりませんが、それは、今日、午前中に指示をいたしましたので、基本的には、そういう考え方でいきたいというふうに思っております。涌井さんの方も、今、もう、是非、この生産調整を含む米戸別所得補償制度に、是非、積極的に参加をしたいと、その時には、当然、コメを作れなくなる水田も増えるわけですから、それを一体どうするかということで、今、伝え聞くところによると、例えば、オーストラリアから、米粉のうどんを、是非、それを見積もりしてくれと、1コンテナ分ですね、その分を、見積もりして、値段が合えば、是非、輸入したいと、向こう側から言えば輸入、こちら側から言えば輸出できるということも、今、どんどん進んでいますので、そういう意味で言えば、非常に、食料自給率を向上させていくと、あるいは、今までも、そういう意味で言えば、ものすごい数の、決められた以上のコメを、どんどん作っていたわけですから、これをなくしてもらう代わりに、しかし、空いた水田の、そういう有効利活用ということについても、この制度に従って、米粉を中心としたところにシフトをしてもらえるということになるわけで、これが崩れますと、じゃあ、今までどおり、これは強制じゃありませんから、じゃあ、入らないんだったら、好きに、じゃあ、おコメを作らせてもらいますわというと、もう、作りまくって、全体の供給過剰になって、値段が下がっていくというような最悪のパターンになり得ますので、秋田だけこういうことを認めるというわけにはいきませんし、これは、全国注目をしている案件でございますので、きちっと、適正に、厳しく、原則を重視してやっていきたいということを、私の口から改めて申し上げておきたいと思います。

記者

今の、秋田県との協議、その話なんですが、局長を派遣されると聞きましたが、具体的に、国としてのスタンスは、再考を求めるというようなスタンスなのか、あるいは、具体的な数字の水準を示されるのか、その辺りのスタンスはいかがなんでしょうか。

大臣

だから、まず、大原則は、さっきも言ったように、ペナルティーを科さないと。過去、いろいろあったとしても、それを乗り越えて、みんなが理解と納得の上で、やっていくんだということを、まず認めてもらわないと、「あんな、今まで迷惑かけてきたやつは、とんでもない」、「正直者が馬鹿を見るようなことは許せない」みたいなことを言っていたんじゃ、これは話にならないわけですよ。
ですから、そういう意味で、まず、大前提を、この制度を、何度も言っているように、強制じゃないんですから、みんなが納得して入ってもらわないと困るわけだから、その上で、じゃあ、過去、しかし、そうは言っても、これだけの差があると、20何対、もう70に近い数字ですから、これはもう入らないという前提だから、20だろうが、0(ゼロ)だっていいんですね、極端に言えば。
だけど、今度は、もう入るという前提なんで、これが、もう、そのままでいいんだなんていうことは成り立たないわけで、ですから、「じゃあ、激変緩和もあるから、まあ、この辺のところでどうだ」とか、「ここまでは何とかできるけれど、何とかこれで納得してくれよ」ということにならないと、これは話にならないわけですね。
ですから、僕は、そんな難しいことを言ったり、どちらかに肩を持ったりなんていうつもりは全くありません。公平・公正にやってください、話合いで、しかし、今年、エイ、ヤーで全部できるとは思ってません、多少、2年、3年のことはいいでしょう、しかし、その、いく前提でそうなっていかないと。是非、皆さん方も、じゃあ、協議会の中身、取材されれば分かると思いますけれども、もともと、そんな非協力なやつはけしからんと、とんでもないという、そういう論理では、この制度は進んでいかないんです。ですから、そこを、ちょっと変えてもらわないと、物議をまた醸し出すかも知れませんが、どうしても、その制度は嫌だと、納得できないと、俺は70欲しいんだ、65なきゃ嫌だということにこだわるんだったら、もう、この制度に乗らないわけですから、だから、それはもう自分自身で考えてもらわざるをえないということです。

記者

今の問題に関連して、局長さんは、何日に派遣・・・。

大臣

だから、まだ決めていない。今朝、指示して、もう部長じゃ話にならないから、局長が行ってやってこいということを指示したということです。

記者

本日という可能性もあるのでしょうか。

大臣

まあ、ないでしょう。それは。

記者

週明けという・・・。

大臣

公務員ですからね、ちゃんと出張申請を書いて、判をずっと押して、行かなきゃいけませんから、政治家は自由に動きますけれども、役人はそういうわけにいきませんので、明日以降ということになると思います。

記者

昨日の秋田の協議会では、今までのペナルティーの3分の1を来年度で減らしていくんだというような内容だったと思うんですけれども、大臣としても、いきなり初年度から横一線でなくてもいいというお話なさってますけれども、そうすると、その、どのくらいの程度をもってすれば、大臣としては納得できるのでしょうか。

大臣

そんなことは、この場で僕が言うことじゃないと思います。最終的には、私が政治判断で決めることになると思いますが、まずは、局長が、前提を、まず考え直してもらいたい、いい、さっきも言ったけれど、わずか0.4減ることでさえ、こだわっているんですから、こんなんじゃ話にならないわけですよ。
しかも、さっき言ったように、今まで、コメ作ったら金は一銭ももらえないけれど、今度は、作れば作るほどお金入ってくるわけですから、例えば、10ヘクタールやったら、150万(円)、黙ってても入ってくるわけですよ、そうでしょう。こっちの自給力(水田利活用自給力向上事業)は別としても、別としても、こっちだけやったってそれだけ入ってくるということですから、これは税金なんですから、その人達のお金一銭も入ってないんですから、ですから、そいういう意味で、税金を、こんな厳しい経済状況の中で、5,618億、満額認めてもらって、それで僕らは使わせていただくわけですよ、だから、一円たりともそういう無駄は、使えないと、そういう意味で、有効にそれを活かしてもらうためには、やっばり、ちゃんとした使い方してもらわないと、それは国民が納得しませんよ。
今、ただでさえ、何で農家にだけ、何で農業にだけ、そんな手厚い保護やるんだみたいな声が、ないわけじゃないんですよね。僕ら、それを一生懸命説得して、お話しして、理解いただけるようにやってますけれども、しかし、今なお、国民全体で言えば、そういう声ってものすごく強いんですから、だから、それを、旧来はこうだったとか、自民党時代はこうだったとか、そんな論理は、もう通用しないんです、悪いんですけれど。

記者

確認ですけれど、現状としては、これ、秋田の、昨日決めた方針というのは、これは、ペナルティーに・・・。

大臣

決めたんじゃないんです、「物別れ」ね。

記者

大臣としては、ペナルティーに該当するというお考えであるということでよろしいわけですか。

大臣

ペナルティーって、どういう意味?

記者

昨日、秋田が決めようとした内容については、大原則には、反しているという・・・。

大臣

だから、ペナルティーはそのまま残せと言うことでしょう、残せと言うことでしょう、その人たちは。
だから、そういう考え方は、ペナルティーは科さないというのが、今度の、制度の、別に秋田のためにそう言ったわけじゃなくて、もともとの全体の制度を作る時に、そういう過去どうだったとかいうペナルティーは科しませんと、それが、この制度の大前提ですということを、一番最初の時に決めたわけですから。だから、そういう原則に従って、ただ、いろいろな地域事情や、激変緩和や、そんなことは、それはあるでしょう、僕は、だから、そんなことは途中から変えたんじゃなくて、最初から、教条的に言ってるのではなくて、そういうことは、十分加味してやればいいでしょうと。頭からズバーッとやるんじゃなくて、できるだけ話し合いをやって、積み上げて、どうしても、それで物別れならば、これは、しょうがないですけれども、まだ、そこの段階まで行ってないと思ってますから、だから、それを今まで部長も一生懸命やってくれましたけれども、部長で話がつかないとしたら、今度は局長に行ってもらって、髙橋さんの粘り腰で、しっかり、もう手紙書くんじゃなくて、直接、今度は、面と向かって話して説得してもらうということを、僕は、髙橋局長、高く買ってますから、彼なら、ある程度、理解をしてもらえるようにがんばれるんじゃないかということで、とりあえず・・・。

記者

再考を求めるということでよろしいのでしょうか。

大臣

もちろんそうですね。少なくとも、言えることは、38.2では僕は認めませんから、絶対に。ここから一歩ももう、引けませんだったら、もう、それは話になりませんね。

記者

つまり、現状のままで行くんであれば、戸別所得補償制度には入れないということでよろしい・・・。

大臣

もちろん、そのために交渉するのですから。ただ、あまり先を見越さないで。ただ、「これで認めて下さい」と言われても、「ああそうですか、まあ、しょうがないですね、ここの秋田は」なんていうことにはなりませんよということだけは、はっきりしています。

追記4.平成22年1月19日大臣記者会見

大臣
それから、本当は、昨日、臨時閣議の後、皆さんが言ってくれれば、是非、そこで発言したかったんだけれど、定例閣議の時しか、記者会見をやらないということなので、今日、事実上、一日遅れですが、ご報告申し上げたいと思いますけれども、例の秋田問題についてでございます。
もう、一部の新聞では報道されておりますけれども、先週末に、私が表を示して、こんなことでは、これはもう、参加するなということを、事実上、言っているようなものだと、こんなものは認められないと、直ちに、担当局長を現地に派遣をして、しっかり現地の皆さん方に納得いただけるように、行かせるということで、土曜日の日に、髙橋総合食料局長が行きまして、ご存じのとおり、午前中に知事に、そして、午後からの協議会にも、局長自らが出て、正直なところ、こんなスパッときれいに一発で片付くとは思わなかったんですが、最終的には、私なり、政務三役が出かけて行って、やらざるを得ないのかなということを覚悟していたんですけれども、局長もがんばってくれましたし、また、知事をはじめ、現地の皆さん方も、国の方針である以上、思いはいろいろあるとしても、それに従ってやっていこうということで、ご判断をいただきました。したがいまして、昨日ですけれども、正式に秋田県におきましても、県内の市町村に対して、22 年産米、食用米の生産数量目標の配分が行われたところでございます。
この件について、改めて、佐竹県知事をはじめとして、秋田県関係者や秋田県米政策推進協議会の方々など、地元で大変ご苦労いただいた皆様方に、心から感謝と敬意を表したいというふうに思います。特に、これまで、需給調整を遵守されてきた多くの秋田県の農家の方々には、深く感謝を申し上げるところでございます。今後は、米所得補償モデル事業の円滑な実施に向け、秋田県下一丸となって取り組んでいただき、その成果が挙げられるようお願いを申し上げたいというふうに思ってます。
同様な例が、実は、福島やいくつかの地域でもありまして、秋田が一番そういう分かりやすい構図というか、数量的にも多いところなものですから、それを注目しておられたところについても、秋田が、そういう形で、ペナルティーを全量解消すると、よく、前段では、4千8百(トン)と言っていたんですが、それは、大潟村とか、あそこだけだとそうなんですが、あと、能代市だとか、他のところも三か所ぐらいあるものですから、それを入れると、5千2百ぐらいに、正式には、5,216トンになりますけれども、全て、これを解消する、一発で解消することができるということでございますし、ある意味で言えば、これはもう、私が、当初から言ってきたように、激変緩和も、それはあると、今まで、協力してこなかった、新たに今回参加したいと言われる方達についても、そのことは、申し上げてきたわけで、そういう意味で言えば、その方たちもぎりぎり、これぐらいは認めていただければ、自分たちは、多少、他と差があっても、是非、参加したいというところで、うまく折り合っていただいたということでございまして、非常にいい形で決着ができたということで、お礼申し上げたいというふうに思っております。

記者

秋田の、生産する目標のことなんですけれども、ペナルティーを全量解消することによって、大潟村などの他市町村は、結果的に減反強化という形になるわけですけれども、そのことについて、やりきれなさというか、一部、不満みたいな声も挙がっていますけれども、そのことについては、大臣として、どのようにお考えでいらっしゃいますでしょうか。

大臣

そういう方たちの言い方としては、「正直者が馬鹿を見るのか」と、そういう言い方が多いと思うのですけれども、ただ、ちょっと、これは、もう繰り返し言っていることなのですが、たしかに、今、僕が感謝を申し上げたように、旧来、前政権とはいえ、僕らから言うと、「作らせない農業」と言ってきましたけれども、そういう政策の下に従って、粛々(しゅくしゅく)と協力をしてこられた、そういう方たちの、制度に従って、国の農業政策に、とにかく従ってやっていこうということで、やってこられた方たちのお気持ちは分かりますけれども、ただ、だからといって、僕らが言っているのは、今までは、作らないことに対する税金というのは、全くないのですよと。転作をしたら、ここには付いたにしても、このことによって、コメを作ったことで、1円たりとも、その人たち、もらってないわけですね。

(笹山注:これはまた、トンでもな屁理屈でありますね。減反を守ったことで、減反遵守派は、その時点で、本来なら得られたであろう機会利益を失ったのだし、減反非遵守派は、機会利益を享受できた。つまり、減反下において、減反破りをしたものは、コメ商品の希少性の環境の元で、機会利益を確保しえてきたということを、故意に赤松大臣は、見逃している。ということになりますね。)

ところが、今度は、コメを作れば、作ったことそのものに、今度は税金が入っていくわけですから、しかも、当初、地元が出してきた案のように、こうなっていると、他人の取り分を自分の取り分の方に乗っけて、余分に、その分を、税金をもらっちゃうと、補助金もらうと、見ようによっては、これは、もらってはいけない余分な税金を、補助金を、もらっちゃうということになるわけですから、これは、今まで、皆さんが、気持ちの問題とは別に、不正な形で、お金を余分に特定の人たちだけに交付するというわけには、これはいきませんよと。だから、それは、是非、理解してくださいということで、私も、記者会見で言ってきましたし、髙橋局長も、そういうことを言ってきました。
ですから、そういう意味で言えば、今までやってこられたことを感謝はしますし、否定はしませんが、だからといって、今までやってきたんだから、今まで協力しなかったやつと差を付けて、俺たちだけいい目をさせてくれということは通りませんねということなのです。
ですから、しかも、これは、あくまでも、国の政策だと、指針を文書で欲しいというので、そういう文書を出して、昨日、出しましたけれども、あくまでも、国の政策なので、地方が独自にやる制度じゃないんですと、だから、国の統一的な、全国統一的な制度でやる以上は、それに従ってやっていただかなければいけません。財政状況は厳しくて、みんな、ぞわぞわ切られている、補助制度がなくなる、交付金もなくなっちゃう、そういう中で、新たにこれは、税金を使って、国民の理解を得てやる事業ですから、これは、やっぱり公平さ、公正さがなければ、それはもう、国民は納得しませんから、そういう意味で言えば、この制度に入りたいと、入って交付金をもらいたいという以上は、その仕組み、基準、制度に従っていただけなければいけないということだと思います。
ですから、本来、あれらの分を、自分のところにくっつければ、もっとたくさん作れたのになと思われるかも知れませんが、前回も、多少、ほんの数ポイント下がるにしても、しかし、今度は、作ったことに、今までゼロだったものが、お金が、ドーンと入るわけですから、前も言いましたけれども、本当に、ただ、あそこで作るというだけで、150万(円)、200万(円)が、ドーンと乗っかってくるわけですから、しかも、転作したら、転作後にも、また付いてくるということなので、それは、「トータルすれば、前制度と今の制度と、どっちが得ですか」と言えば、少なくとも、前、この2年前、1年前と比べて、作る量が減っても、その人たちの実入りは、ドーンと増えるわけですから、そういう意味で、我々、強制したわけではありませんけれども、そういう方たちも含めて、是非、この制度で参加したいと、そういう選択をされたということだと思います。
あくまでも、僕は最初から言ってますが、これは、強制じゃないのです、入りたい人が入るのです、入りたくない人は、入らなくていいのですということで、一方、この制度、今までの農政に反対してきた涌井さんたちのグループも、是非、入らせてください、ということでやったと。ペナルティーは、全量、これでスパッと解決しましたけれども、あとは、若干の、経過がありますから、村の中でも、大潟村の中でも、その調整は、これは、自由に話合いで決めればいいわけですから、若干の差は付きますけれども、これは、みんなが納得して、こういう割合でいこうということを決めたわけですから、私は、別に自慢気に言うわけじゃありませんけれども、皆さんの努力で、本当に、いい結果に落ち着いたというふうに思っております。

記者

生産調整について、いろいろ話が飛んで、恐縮ですけれども、衆院選前の民主党の提案では、生産数量目標の配分主体というのは、国と都道府県と市町村が、農業者の意向を踏まえてするんだという提案だったわけですよね。今回、モデル対策ということもあって、そこまでの法改正というのは、時間的にも間に合わなかったかと思うんですけれども、来年産の、モデル事業から本格実施に向けた配分に向かっていった時に、今までどおり、生産数量目標の配分というのは、生産出荷団体がやっていくという方向がいいと今でも思われているのか、それともやはり、国とか都道府県とか市町村とかが、策定していった方がいいと思っているのか、そこら辺のところ、今の時点での、大臣としてのご見解は。

大臣

一番いいのは、地元の意見を尊重しながら、しかし、国のお金でやるわけですから、形式的には国が決めるというのが一番いいと思います。地元の意向を無視してやろうなんていうつもりは、さらさらありませんから。
だから、今回の秋田でも、結果的にはそういうことですから、地元の人が納得していただいたから、これで片付いたということで、地元の意向、これは全国どこであろうが、その意向は、十分尊重しながら、しかし、地元が決めたからといって、さっき言ったように、これは税金を使うわけですから、それは勝手に使っていいと、かつての制度を批判するわけじゃないですけれど、「つかみ金」みたいなのを渡して、これは、各県が自由に使いたいところに使いなさいと、じゃあ、俺のところは果樹にこれだけ注ぐぞ、あれにやるぞ、みたいな、そういうことが、今までは許されてきたかも知れないけれど、今後は、そんなわけに、なかなかいかんでしょうと。
ですから、あくまでも地元で話し合ってもらったり、あるいは、地元の意向はこうだということは尊重しますけど、あくまでも国の事業ですから、国のお金を直接払うわけですから、そういう意味で言えば、最終的には、国が決めさせていただくということが、一番いいんじゃないですかね。

記者

秋田の問題で、ちょっと確認させてください。佐竹知事は、2010年産米に科そうとしていたペナルティーの全量解消をもって、これでゴールなんだというふうな認識を持っているように聞いてるんですけれども、大臣の発言、過去の発言等振り返ると、要するに、まず参加できるギリギリのラインが、配分率で言うと、50点いくつだということで、今回それになったわけなんですが、それでもまだ、減反遵守派と自由作付派の間では、10ポイント以上の差があって、その中には、様々な要素があるらしいんですが、過去の累積ペナルティーを加味して、その差ができているという、要するに、ペナルティー的要素というのは、 2010年産米に関しては、全量解消されたわけなんですが、過去の分で、まだ10ポイント近くの差が生まれているというふうな指摘もあって、そうすると、大臣の認識としては、あくまでこれはスタートラインで、激変緩和に向けて、あと2、3年かけて、前回もおっしゃっていた、横一線になるようなことが望ましいんだというふうに僕は理解しているんですが、ゴールなのか、スタートラインなのかという、たぶん認識のギャップがここで解消されないと、たぶん、来年、再来年と、レベルはちょっと、差はちっちゃくはなってくると思うんですが、まだ、そういう税金を投入する上で、不公平感というのが残る可能性があると思うんですね。そこで、大臣のご認識というのは・・・。

大臣

だから、激変緩和というのは、急に極端に変わるから、激変緩和するんであって、「そのまま、ここが最終点ですよ」は、激変緩和じゃないわけですよ。だから、僕は、もう、これ、別に大潟村だから言うんじゃないんですよ、どの地域であっても、そういうことは、激変緩和措置はあってもいいけれども、ですから、2年、3年かけて、せいぜい、それぐらいの年数で、本来のあるべき姿にしていくように努力してもらうということですよ。

記者

残りの10ポイントは、2、3年かけて横一線になるようにというような思いは持ってらっしゃるということでよろしいでしょうか。

大臣

そうですね、そういうことだと思います。ただ、実際は、7ポイントぐらいじゃないのかな、あれはね。だから、次の年に、2、3ポイント、また次に 2、3ポイントやっていけば、できるような数字ですし、今度は、みんなが生産数量目標を守るわけですから、基本的には。だから、かつてのようなコメが暴落するとかいうこともあまり想定しにくいんですよね。そうすると、値段がしっかり保持されて、しかも、コメを作ることに、それが今までなかったのが、ドーンと、お金がくるということになれば、じゃあ、2、3ポイントが許容できなくて、この制度に、俺は参加しないんだと言うかといったら、言わないですよね。だから、それはそう心配してません。

2010年1月9日

30時間しか持たなかった菅さんの口先介入効果

Category: 未分類 – Tatsuo Sasayama 5:35 PM

減少幅は、市場予想の2万5000人減を大きく上回った。

これを受けて、ユーロ・ドルは、1.4263から1.4392に、また、ドル・円は93.43円から一気に92.27円台にまでなった。

結局、ドル・円は、一昨日の菅さんの口先介入前の円高水準に戻した格好となった。

菅さんの口先介入効果は、春の淡雪のごとく、わずか、30時間の効果しかなかったということになる。

所詮は市場にはかなわぬものと、菅さん、もってめいすべし。

2010年1月8日

昨日の菅さんの口先介入への市場の評価は?

Category: 未分類 – Tatsuo Sasayama 5:39 PM

今日のフィナンシャルタイムズの記事「Japan’s new finance minister in U-turn」なんか見ても、おおむね、好意的なとらえ方はされているようですね。

もっとも、この記事、日本人記者が書いたもんですけど。

問題は、日銀との協調だということが強調されている。
(The biggest challenge for Mr Kan, however, would be to work with the BoJ to tackle deflation, analysts said. )

白川日銀総裁が菅さんにあおられうるかどうか、このあたりがポイントになるのでしょうかね。

もっとも、日銀側は、成長への期待を高めるのは、政府の役割で、自分たちは、国民の期待が本格的になったら、いつでも、それに必要な流動性確保はいたしますよ、ってスタンスなのですよね。

すなわち、「デフレの主要因は、バブル崩壊後の国民の自信の喪失であり、これが需要不足を生み出しているのであり、日銀は、これについては、なすすべはないのだから、この自身回復がなせるのは、政府からの強いコミットメントしかないのだし、日銀は、もし、政府からの強いコミットメントがあれば、それに応じて、順々としたがっていくし、その結果、期待成長率が上昇していけば、日銀としては、そのような国民なり市場からの期待にいつでもこたえられるような、新型オペによるものも含めて、潤沢な通貨供給の供えはしておく。」というスタンスなのでしょう。

つまり「デフレスパイラルを防ぐために流動性を潤沢に供給し、金融市場や金融システムの安定をしっかり維持していく」までのことはいたしますが、それ以上のことは、日銀の出る幕ではありません、というスタンスなのでしょう。

だから、この名前のごとく、水のごとく、シラーっとした白川日銀総裁のスタンスに対して、今後、菅さんの”イラ菅”が、いつ極点となって昂じるのか?って言う構図になるんではないでしょうかね。

まあ、菅さんなら、タブーなしに、米国債(売却あるいは、日銀による米国債購入、政府短期証券(外国為替資金証券)と両建て関係にある埋蔵金的な米国債もふくめて-最も、こちらは、有力な国債利子収入の原資でもあり、利を生んでいく金の卵的なものなので、一概に民主党さんがいっているような静態的な意味での埋蔵金扱いは、できないのではないのでしょうかね?)にまで、言及するとも思われますが。

こりゃあ、究極の市場口先介入です罠。

それにしても、民主党政権になってから、直嶋発言、藤井発言、そして、今回の菅発言などなど、大臣の口先介入(verbal intervention)が多くなっているような気はしますね。

秋田の秋田弁(あつた弁)ナマハゲアニメ「んだがらしゃ」流にいうと、「大臣発言~~利用すぃて~~FX!取引すぃてる~~民主党関係者~~いねぇがゃ? ~~アヤスカっ!、アヤスカっ!、オメ、ほずぃねぇごど~~、するなでぃぁ~~」—といいたいのですが。

モラルハザード&インサイダー、皆さん大丈夫ですか?

もっとも、せっかくの昨日の大臣の口先介入も、今晩のアメリカ12月雇用統計にはかなわないのが、一抹の救いではありますが。

蛇足ですが、アメリカ雇用統計を利用したFX戦略をここでご紹介

米国の雇用統計(ペイロール)は、毎月第1金曜日のNY時間午前8時30分(日本では、米国が夏時間の場合は、21時30分、冬時間の場合は22時30分)に、米労働省から発表される。

この時刻にあわせて、EUR/USDをその直前で、ロングとショートと両建てにしておく。(両建て禁止のブローカーの場合は、別口座で、それぞれれたてとけばいい。ただし、この場合は、保証金余力にご注意。)

発表があって、
ロング(予測値よりも雇用統計の数値が悪いとみる。)の場合は、チャートがピーンと跳ね上がったところで、
ショート(予測値よりも雇用統計の数値が良いとみる。)の場合は、チャートが急激に下がったところで、
利確決済。

残ったほうは、市場が落ち着いてからクローズ。

こちらのほうが、下手な日本の大臣の口先介入よりも、実入りが多いと思いますよ。

民主党関係FX取引者さん—(wwww)

2010年1月7日

菅直人vs小野善康vs山形浩生のトライアングルだったりして

Category: 未分類 – Tatsuo Sasayama 5:40 PM

菅直人さんの財務大臣ご就任によって、俄然、脚光を浴びだしてきたような小野善康さん、まあ、菅さんと同じ東工大ご出身というような世俗的な連想から生まれているものなのでしょうが。

小野善康さんについては、私のサイトでも
本当に「言論不況」なのか。
小泉構造改革の視点の誤り-公的部門と私的部門とでは、やるべきことがちがうのに-
やなんかで、何度か取り上げさせていただきました。

この後者で取り上げたのですが、小野善康さんが主張される「合成の誤謬」では、ミクロで正しいことでも、それと同じことを私的部門も公的部門も同じやり方で同時にやれば、それは、マクロでは、誤ったやり方になるというのが、ミソですね。

いわゆる、部分最適・全体最悪の構図です。

で、ここに、絡んでくるのが、山形浩生さんです。

このサイトこのサイトでの山形vs小野のやり取りなんか、面白いですね。

山形浩生さんは、小野善康さんの言われる「良い公共投資を延ばすことの必要性」「需要創造型の良い公共投資」とは一体何なのかを、小野さんは指し示していない、と批判しています。

これに対して、小野さんは、構造改革と景気対策とは、全く別物であり、前者は、過去の損失の配分問題であり、後者は、カネからモノへの回帰問題だとしておられます。

で、その、カネからモノへの回帰を図るにはどうしたらいいのか、については、確かに、山形さんがおっしゃられるように、小野さんは、具体的な案を示しておられません。

私が察するに、それは、「需要サイドでのビッグ・プッシュ政策」なのではないかと、思っています。

では、「需要サイドでのビッグ・プッシュ政策」とは、なになのか?ということなのですが、残念ながら、まだ、答えはないようです。

子供手当てや農業者戸別所得補償などの直接支払い型の財政支出がそうであると主張される向きもあるでしょうが、少なくとも、それは、マッシプなという意味で、需要創造型の分散型ビッグ・プッシュではあるが、財政負担からいって、持続可能型のビッグプッシュではないとは言えそうです。

ひとつだけ、答えらしきものを言うとすれば、『デマンド・サイドでのビッグ・プッシュ』とは、『サプライ・サイドでの、おなじみのビッグ・ブッシュ』と異なって、「indivisibilities on the demand side」を喚起するものであるということです。

では、デマンドサイドにおける「indivisibilities」(不可分性)とは、何でしょう?

思い出すのは、過去の大量消費時代での大衆喚起による「indivisibilities 」の結果としての具現化ですが、これが、現代に再現できるはずはありません。

また、デフレの罠の存在は、せっかくのデマンド・サイドでのビッグ・プッシュを、音もなく無力化し、吸い取っていきます。

まさに、デマンド・サイドでのビッグ・プッシュの吸血鬼は、デフレの罠であるといえます。

『デマンド・サイドでのビッグ・プッシュ』が、阻害されなくいきわたるためには、やはり、日銀さんがいわれるような期待成長率の上昇にまたなけれはならないのでしょうか?

あるいは、範囲の経済学(Scale of Economies)を意図した今日的なビッグ・プッシュの手法、あるいは、範囲としての「indivisibilities」(不可分性)、を考えるべきなのでしょうか?

つまり、ネットワークによって一体化されたという意味での「indivisibilities」(不可分性)ということになるのでしょうか?

その場合の範囲の経済の効果発現を助長しうる外部経済とは、これまで(昔、ローゼンシュタイン・ロダンが均衡発展論批判において指し示したような)とは異なった社会インフラの具備なのでしょうか?

期待成長率に救いを求める構図は、小野善康さんの言のはしはしにも、見えかくれしています。

山形浩生さんは、ポール・クルーグマンのインフレターゲット論をいち早く日本に紹介したかたでもありますが、では、ご自身がリフレ論者であるかどうかについては、不透明な部分もあるようです。

一方の小野善康さんは、反インフレターゲット論者であると見受けられますが、そうかといって、完全な反リフレ論者であるともいえないようです。

一方、菅直人さんが最近言われている『第三の道』というのが、ちょっと、その内容が見えてこない(あれから一ヵ月半もたって、いまだに『深く考慮中』では困るんですが—)のですが、私なりに解釈すれば、サプライ・サイド経済政策とデマンド・サイド経済政策とのハイブリッドの道をさしているのかな?なんて、かってに考えています。

私自身として、最近出版されたアンソニー・ギデンズの『日本の新たな「第三の道」」なんてのが、いい線を指し示しているようにも見えます。

すなわち、市場至上主義を完全否定するのではなく、それに、福祉改革をハイブリッドに組み合わせた政策志向こそ、日本型社会主義国ニッポンの進むべき道なのかなあ?などと、考えています。

たとえば、非営利組織に対して外部経済の形成を促すようなビッグ・プッシュを与えることは、どうなのでしょう?

形の上では、デマンドサイドとサプライサイドとの中間へのビッグ・プッシュ(分水嶺へのインセンティブとビッグ・プッシュとでもいったほうがいいのでしょうか?)となりえます。

また、非営利組織が文字通りの非営利組織であると言う前提(このごろは、まがいものの非営利組織が多いのでなんともなのですが)ではありますが、投下されたインセンティブが、生産刺激的にも需要刺激的にも、不胎化されうるニュートラルなインセンティブとはなりえます。

これこそ、現代版バージョン『混合経済』の再来のスキームの到来ですね。

この場合は、トライアングル(公・私・非営利)の混合経済のスキームとなりえますが。

過去の混合経済のスキームが、1929年の大恐慌後に広まったスキームであるのと同じように、リーマンショック後の世界経済の混乱期に再び生まれつつある。ニューバージョンの混合経済のスキームへの模索の始まり、というわけです。

 

2010年1月6日

「期待成長率」の上昇に「期待する。」という妙なレトリック

Category: 未分類 – Tatsuo Sasayama 5:44 PM

うーん。

このサイト「[経済]白川方明日本銀行総裁のデフレ原因論→「日本銀行に責任ないってば」(要約)」
いい線、ついてますね。

何やら、日銀自体が、デフレスパイラル的アリ地獄論理に陥っているようで。

いったい、この「期待成長率」ってのは、科学的な分析に値する代物なんでしょうかね。

皮肉な言い方をすれば、「政府経済政策信頼感指数」「政策方向信頼感指数」ってことかな?

少なくとも、「日銀信頼感指数」ではないってことを、白川さんはいいたいようなんですが。

アメリカの「ミシガン消費者信頼感指数」(University of Michigan Consumer Sentiment Index)なんてのは、イベントになりうる指数なんだが、デフレの原因を、当の日銀さんが、この得体の知れない「期待成長率」に逃げ込んでしまうとは---

つまり、日銀が、デフレ対策を期待成長率の向上に求めること自体が、期待成長率を下げる要因になる、という輪廻の構図に政策当局者は気づくべきだと思うんですが。

世も末ですね。

余った新型H1N1用ワクチン処理に苦慮する各国事情

Category: 未分類 – Tatsuo Sasayama 5:42 PM

やはり、というか、ここにきて、新型インフルエンザワクチンが、当初見通しよりも、大量に余ることが確定的になってきており、各国は、その大量に余る新型H1N1用ワクチンの処理に一様に頭を痛めているようだ、

日本でも、そのワクチンを大量に余らした責任者の犯人探しがはじまっているようだ。

日本の場合は、
早々と輸入ワクチンを決定した舛添前厚生労働大臣
安全性の確認もそこそこに、海外ワクチンメーカーと契約を結んでしまった長妻現厚生労働大臣
一回接種か二回接種かで、混乱を引き起こした足立厚生労働政務官
日本政府に契約をせかせるばかりで、安全性の確認をせずに、日本の接種対象者に無用の『輸入ワクチン接種への心理的アレルギー』を作ってしまった海外ワクチンメーカー
小規模の医療現場で、使い残しで不評のワクチン大瓶(10ml)化を決定した厚生労働省
そして、何よりも、予想よりも、早く終焉に向かっているH1N1新型インフルエンザウイルス??
などが槍玉の対象に浮かんでくるのだが、海外の動向を見ると、ワクチンあまり現象は、ひとり、日本だけのものではないようだ。

いろいろな動きが世界各国にある。

フランス

まず、フランスだが、こんな事情のようだ。

フランスでも、当初、二回接種のプランで、ワクチンを手当てしたのだが、一回接種ですむとわかったので、その余剰分七千九百万服分(金額にして12億5千万ドル)を他国に売ることにしたという。

また、余剰分の10パーセントは、WHOに寄付するという。

フランスが予定していたのが、九千四百万服分のワクチンだったが、結果は、接種を受けたのが五百万人だったので、大量のワクチンが余ってしまった。

フランスから余剰分ワクチンを買ったのは、カタールで、その量は、30万服分であるという。

そのほか、フランスは、エジプトに対しても、二百万服分を売るという。

さらに、メキシコ、ウクライナも、フランスからのワクチンの販売先になる予定であるという。

ブルガリアは、フランスからの売り込みを拒否したという。

フランスでは、これにとどまらず、5000万服分の注文を製薬会社に対して解約を申し入れているという。

同じように、ドイツやオランダも、余剰分ワクチンは、他国に売ることを、昨年末に決定したという。

ドイツ

ドイツでは、五千万人分が、3月までに余ると見られ、これまで、ドイツ国民でワクチン接種を受けたのは、全国民のたった5パーセントであったという。

ドイツの余剰ワクチンの売り先としては、ウクライナが上がっており、二百二十万服の売却を交渉中であるという。


オランダ

オランダは、一千九百万服の余剰分のうち、二百万服の売り先を確定したという。

スペイン

一方、スペインは、製造元に余剰ワクチンを返せるかどうかについて、交渉中だという。

スイス

スイスは、七百七十万人の国民に対して、千三百万服を用意したが、四百五十万服が余っているという。

これについては、一部を他国に売却、一部をWHOに対して寄付との方針とのことである。

カナダ

カナダでも、ワクチンが余っているようだ。

カナダでは、当初、五千六十万服のワクチンを注文したが、インフルエンザシーズンが終わる4月までに、二千万服が余るという。

カナダでは、ワクチン接種の出足は早く、10月26日時点では国民の46パーセントが接種するという勢いであったが、その後、12月に入り、めっきり、出足が鈍り、生産もとのGlaxoSmithKlineも、出荷をとめている。

なお、カナダでは、妊婦用のワクチンをオーストラリアから、二十万服も輸入しており、トータルでは、金額にして四億二百五十万ドルとなっている。

こちらは、まだ、余剰ワクチンの処理の方向は決まっていないようだ。

第三波に備えるという動きもあるようだ。

というのは、ワクチンのアジュバントの保存期限が三年、抗原(アンチゲン)の保存期限が18ヶ月と長いので、来シーズンにまでもたせうる、という見解も専門家の間ではあるようだ。

ただ、現在の新型がこれまでの季節性に含まれてしまうのか、それとも、新しい変異ウイルスが来シーズン発生するのか、などについての不確定要因が多いため、当局も、方針を打ち出せないでいるようだ。

参考「Excess H1N1 vaccine could be sold, kept in reserve」

日本

日本では、国産ワクチン5400万人分プラス輸入の9900万人分(一回接種換算、当初は二回接種換算で、GSKが3700万人分、ノバルティスファーマが1250万人分、合計4950万人分であった。これが途中で一回接種と変わり、4950×2=9900万人分となった。)=1億5300万人分であり、これが、一部一回接種ともなったことを加えて、インフルエンザ事態が急速に下火になったため、正月の現時点で、現場では、国産ワクチンですら、過剰気味となっているようだ。

これに、来月には、九千九百万服の輸入ワクチン分が加わる。

輸入ワクチンに対しては、さらに『輸入ワクチン・アレルギー』の忌避感が接種対象者に伴うので、ワクチンのいっそうの過剰感が増大するのは必至のようである。

ただ、まあ、日本の輸入ワクチンも、カナダと同様、アジュバントと抗原(アンチゲン)とが、接種段階まで別容器に入っていて、接種の段階で、常温にして混ぜるタイプなので、保存期限に余裕があることが幸いしているのだが、しかし、それが保存可能としても、来シーズンでのウイルスのタイプや、季節性ウイルスの変異の状況がわからないので、それが使用できるかどうかは、誰しもわからないということなのだろう。

WHOでは、ワクチン余剰国に対して、WHOを通じての貧困国への寄付を呼びかけている。

その対象国は、次のとおり
オーストラリア、ベルギー、ブラジル、フランス、ドイツ、イタリア、ニュージーランド、ノルウェー、スロベニア、スウェーデン、スイス、イギリス、日本、アメリカ、

2010年1月4日

インセンティブなき民主党政権の成長戦略

Category: 未分類 – Tatsuo Sasayama 5:48 PM

うーん。

これですよね。

市場はどう受け止めるんでしょうかね。(立会い時間中の発表であったにもかかわらず、日経平均は反応せず。)

この成長戦略の基本方針要旨をみますと、

これら項目すべて、結果の荷姿ですよね。

ストーリーがない。

この荷姿に至るインセンティブについては、皆目かたられていないんですよ。

馬が水を飲んだ後の姿しか書いてなくて、どうやって、馬を水辺に連れて行くか、どうやって、馬に水を飲ませるのか、についての、戦略はまるきし書いていないんですわ。

需要創造という言葉は、文中に踊れども、その創造のための戦略については、まったく触れていないのである。

馬を水辺に連れて行くニンジンの中身を示さないで、何が戦略ですか。

政治のリーダーシップにより「新需要創造」「需要からの成長」を目指し、「環境・エネルギー」「健康(医療・介護)」「アジア」「観光・地域活性化」の4分野で、国民生活向上に主眼をおいた需要や雇用の創出をはかる
とはいわれているんですが。

ディマンド・プッシュ(demand-push)型の成長のお題目を唱えるのであれば、そこにいたるインセンティブのストーリーを示さなければならないのに、そのストーリーを示せ得ないでいる。

どうもこの政権は、「内需」というキーワードを狭義に捉えすぎているような感じがしていますね。

一口に「内需」といっても、①生活必需品、②最終消費財、③中間財、④インフラ耐久消費財 これらそれぞれに対する内需があるわけでして、その最終消費先の帰属が、日本か海外かによって、内需か外需かの仕切りができているということでしょう。

ですから、外需振興と内需振興とを、画然と分けて考えること自体がナンセンスのようにも思えますね。

ところが、どうも、民主党政権は、このうちの、生活必需品、最終消費財にのみ目が行ってしまって、直接型支払いをすれば、内需がついてくる、との短絡的な考えをもっていらっしゃるようにも、見受けられますね。

ごくマクロ的に考えれば、内需振興を標榜するのであれば、
①デフレ対策
②円高対策
③新しい形の公共事業によるビッグプッシュ対策、
④地域への細かいSME換金回路の構築、
この四つに絞られうると思うんですけど。

なぜなら、
①いくら、直接型支払いによって、末端消費者の購買力を高めようと思っても、そこには、すでに「デフレの罠」が存在しているので、その罠に、購買力は、吸われてしまうということ。
②いかに、内需振興といっても、クローズドシステムでの内需振興はありえないわけで、当然、円高対策を含めた、従来どおりの輸出振興策を伴わなければ、波及効果のある中間財に対する内需は生まれ得ないということ、
③インフラ耐久消費財に対する新しい形の公共事業での内需振興対策を、新しい視点から考えなおさなければならないこと
④バラ撒きが単なるバラ撒きに終わらないためには、バラまきからの卒業回路が必要ということですよね。これは、マイクロ・クレジットの考えに似たもので、地域に細かいSME(Small and medium enterprises)の回路を作っていく

ということですよね。

このそれぞれに、インセンティブを引っ付けていけば、成長戦略の骨格はできると思うんですけど。

このようなマクロの整理から見てみると、果たして、この民主党政権の新成長戦略は、答えているかと言えば、何も答えていないということになるんじゃないでしょうかね。

やはり、これをみると、経済オンチがそろった内閣という世間のそしりは、まぬがれえないようですね。

まあ、菅さんは、「やっつけ仕事でホッチキスでとめるのはいやだ。」というのですが、この要旨を見ると、とめうるホッチキスの針自体も、かなり危ういんでは、などと、心配になってきますね。

この新成長戦略には「輝きのある日本へ」という副題がついていますが、これでは、「輝きのある日本」ではなくて、「つぶやきのある日本」、「ポヤキのある日本」になってしまいますよ。

最後に、このサイト『A Tale of Two Theories: Supply Side and Demand Side Economics 』の紹介をしときましょう。

サプライ・サイドに立った経済政策も、デマンド・サイドに立った経済政策も、ともに、限界がある、というお話ですね。

参考 その他のサプライ・サイドとデマンド・サイドの経済政策に関するサイト

Demand-Side versus Supply-Side Theories of Trade Policy: An Empirical Test」

Demand-Side or Supply-Side – Tax as a Policy Tool

Link between demand-side and supply-side sources of inflation

Resurrecting Fisher and the demand for supply-side economics

The Supply-side and Demand-side Effects of Government Size and Investment

Macroeconomics – Cyclical fluctuations – demand and supply-side shocks

Demand Side Supply side Infrastructure

Supply Side Vs. Demand Side

Re: Supply side VS Demand side

ニューヨークタイムズ紙の「日本の失われた10年を避けるために」との年頭論説

Category: 未分類 – Tatsuo Sasayama 5:46 PM

ニューヨークタイムズ紙の昨日の年頭論説(社説)に「日本の失われた10年を避けるために」(「Avoiding a Japanese Decade 」とのコラムが載っています。

内容(全訳)は下記のとおりです。

ありがたいことに、2009年は、年初よりもいくらかよく終わった。

エコノミストは、アメリカ経済回復定着の兆しが見えたと、話している。

消費者信頼指数は改善した。

株式市場は、上昇した。

しかし、すべての成長においては、アメリカ経済は、非常に脆弱のままにある。

これらの経済的リスクを考える上で、日本の1990年代における経験を考慮することには、意義がある。

不動産バブルは、金融危機の火付け役となり、続く10年にわたる景気停滞へと連なる。

日本政府は、必要なことをなすべき決断に欠けていた。

日本政府は、金融機能の正常化に失敗し、景気回復が定着する前に、初期の財政政策出動による景気刺激策を、やめてしまった。

それによって、日本経済は、アジア通貨危機や2001年のインターネットバブル経済の崩壊を含む、、外部からのショックに弱いものとなった。

日本の年間成長率は、1973年当時は平均4パーセントあったものが、1992年から2003年にかけては、平均1パーセント以下に落ち込んだ。

オバマ政権の経済アドバイザーは、日本の経験について学んできた。

しかし、十分には学んでおらず、ましてや、アメリカ議会は、そのことに関心すら抱いていない。

もし、彼らがそのことに注意を払わなければ、結局は、日本経済をして失われた10年にせしめたような、大きな誤りを繰り返すことに終わるだろう。

アメリカ経済回復の兆しは、ようやく、土の中から芽を出したばかりのようなものなのに、すでに、アメリカ議会では、共和党や保守的な民主党の議員のなかには、オバマ政権に対して、赤字予算を切り詰めるための何かをしなければならないとの要求を突きつけている。

われわれが憂慮しているのは、政治的な「声高な要求」に対しては、抵抗しがたいものがあるということである。

日本政府は、1997年に、3年間の中途半端な経済成長のあと、財政刺激策をストップしてしまった。

日本政府は、消費税を上げ、一時的な所得税減税を終了してしまい、社会保険料の値上げをしたが、その結果、日本経済の回復を、つぼみのうちに、摘み取ってしまった。

日本が犯したもうひとつの失敗は、銀行の正常化をしようとしなかったことだ。

金融監督機関は、銀行や債務会社に対して、数兆円もの不良債権があることを認識させようとしなかった。

日本の銀行は、ゾンビのごとく、合併を繰り返し、転がっていき、支払い不能の会社を立ち上がらせるためだけの無駄な信用を与え続けてきた。

アジア通貨危機がおそったとき、多くの過小資本の銀行は、倒産した。

オバマ政権は、銀行に対して、これまで、非常に寛大であるとはいえなかったが、しかし、それでも、十分に積極的であったとはいえない。

銀行の破壊的なリスク・テイクを抑制することを意図した規制改革について、議会での進捗状況は、ゆっくりしたものとなっている。

アメリカ財務省は、銀行に対して、資本増強を強制しているにもかかわらず、いくつかの大手金融機関を含む多くの銀行の自己資本は、依然、薄く弱いままとなっている。

銀行は、不良債権の処理や損切りに対して、気が進まない。

銀行は、リスキーな商業ローンや、モーゲージローンや消費者ローンを、一杯詰め込んだままにある。

一方、銀行経営者は、納税者の寛容と忍耐から、気前よく公的支援を得た後も、巨額なボーナスを自分で自分に支払うことに固執していることで、事態をより悪くしている。

ここには、二つの大きな問題がある。

銀行経営者のリスク・テイク好きの性向は、少しも、抑制されていないということ。

そして、アメリカの大衆は、まったく、うんざりしている、ということである。

このことが何を意味しているかといえば、たとえば、FEDが低金利の資金提供を引き上げるようなことで、もし、他の金融機関の危機があったとしても、如何に必要であったとしても、議会に他の救済措置を認めさせることが、非常に難しくなる、ということである。

それでも、オバマ政権は、これまでのところは、日本政府がかつて、金融危機でおこなったことよりも、危機対処においては、かなりよくやっている。

2009年と同じように陰鬱ではあるのだが、財政面での景気刺激策なくして、また、FEDからの膨大な通貨供給なくして、起こりうることと比較すれば、そのこと自体は、たいしたことではない。

ホワイトハウスは、いま、来年のための他の小型の景気刺激策を進めようとしている。

さらに改革を進め、経済を押し上げるところにチャンスはある。

もし、日本の失われた十年に重要な教訓を見出すとすれば、中止半端なその場しのぎの策は不要だということだ。

以上、翻訳終わり