今年ジャクソンホールでのシンポジウムで話題になったSerkan Arslanalp とBarry Eichengreenの両氏による論文「Living with High Public Debt」(「高い公的債務との共生」) kansascityfed.org/Jackson%20Hole
が注目を浴びています。
長文ですが、内容をまとめると下記のようです。
ここでは、公共債務の高水準が今後も続くと主張しています。
その理由として、以下の点が挙げられています。
①歴史的な事例(19世紀のイギリスやアメリカなど)のように、政治的に実行可能な大規模な基礎財政収支の黒字化が現在では実現しづらい。
②利子率と成長率の差(r-g)が債務削減方向に大きく動くことは考えにくい。
rとgの決定要因は徐々に変化するため、新技術が成長を促進してもタイムラグがある。
③予想外に高いインフレでない限り、インフレが債務水準を大幅に減らすことはないだろう。しかし、高インフレはコストがかかり、政治的な反対に遭う。
④金融自由化と投資家の反対により、金融抑圧政策(利率の上限設定など)は以前よりも実施しにくくなっている。
⑤クレジット数の増加、公的貸付の減少、標準的なプロセス外での新しい債権者の登場(例:中国)により、債務の再構築が困難になっている。
⑥一方で、より多くの安全資産の供給が安全資産の不足を和らげ、非常に低い利回りを改善する可能性がある。
ただし、これは債務が安全な避難先としての地位を維持することにかかっている。
結論として、多くの国々で高い債務比率が続くでしょう。
財政改革は依然として必要ですが、劇的な債務削減は考えにくいです。