菅総理は、ドーマーの公債命題ってのを知っているのだろうか?
国債の新規発行高=(政府支出―税金)」+(名目金利×国債発行残高)」
つまり健全に国債発行のためには、
①プライマリーバランス(政府支出< 税収)
と同時に
②「名目GDP成長率>名目金利」
が必要ということ。
時間軸政策が有効なのは、「現在の短期金利の低金利状態が将来も続かせる」と政策当局が国民にコミットメントすることによって、「長期金利も長期に低利水準に推移できる」、との国民との信頼の前提があればの話である。
時間軸効果が期待できれば、インフレの拡大・物価上昇と景気の拡大をもたらしうる。
しかし、自然利子率(完全雇用前提で投資と貯蓄均衡前提での利子率)が低下するとの予測のもとでは時間軸効果は阻害される。
自然利子率(完全雇用前提で投資と貯蓄均衡前提での利子率)が低下するとの予測が抱かれてしまうのは、長期的には潜在成長率の低下であり、短期的には、各種の経済ショックの複合による期待成長率の損傷である。
「自然利子率(完全雇用前提で投資と貯蓄均衡前提での利子率)>貨幣利子率」
の場合は、
「投資超過によるインフレが発生」
だが、
「自然利子率< 貨幣利子率」
の場合は、
「投資不足によるデフレの発生」
となる。
貨幣利子率を引き下げないと、更なるデフレの発生となり、インフレの発生とはならないのだが、貨幣利子率は、ゼロ金利の元では、これ以上下げられないという非負制約の下にある。
貨幣利子率(名目利子率)は下げられないが、実質利子率(名目金利ーインフレ率)は下げられる余地はある。
現在は、名目金利が非負制約の下にあるので、上記公式での<str「-インフレ率」< strong=””>部分がデフレによって、プラス要因となって、実質金利を押し上げている状況である。
参考「REAL INTEREST RATE FORECASTS」)</str「-インフレ率」<>
つまり、デフレの罠脱却のためには、自然利子率上昇を左右する技術革新や期待感、実質利子率の低下を左右するマイナス金利政策とインフレ率上昇政策の両方が必要ということになる。
今回の菅政権提示の消費税増税が、これら
①自然利子率の上昇
②インフレ率上昇
のいずれにも寄与しないばかりが、いずれのブレーキ要因となる。
つまり消費税増税は、プライマリーバランス改善の特効薬のつもりが、他の税収を左右する潜在成長率を損ない、結果プライマリーバランスすら改善できなくなる。
また、デフレの罠を放置したままでの消費税増税は、サプライサイドからの消費税の価格転嫁(前方転嫁)を困難にいっそうさせ、結果、「投資減少→産出減少→消費・投資減少」の負のスパイラルに産業界を陥れる。
まさに、デフレの罠をそのままにして、消費税をUPさせても、「国民の財布→国庫の財布」へのシフトが起きるだけなのだ。
もっとも、これについては、非ケインズ効果を標榜するサイドからは、反論もあるであろう。
つまり、家計や企業の行動が、短期的な見通しだけでなく、長期的な見通しをもふまえての経済行動をとるとすれば、将来の年金不安や国家のデフォルト懸念を元に、家計や企業がてforward looking な経済行動をとるとすれば、当面の増税は、長期的な不安を解消し、あながち、消費税の増税はむしろ当面の消費を増大させるのではないか、といった指摘である。
非ケインズ効果が発現しうる条件として、次のものがある。
①財政改革が今後、継続的に続けられていくということについての、コミットメントが、政策当局と国民との間に、どの程度、硬くなされているのか。
②金融システムの安定性がどの程度あり、それによって、資産価格の下落からのがれうる可能性がどの程度強いのか。
連立政権という不安定な政情の元においては、昨年の総選挙において民主党が確約したマニフェストが次々と保護にされていく現状では、非ケインズ効果は、なかなか発現しにくいのではなかろうか。
たとえ、消費税増税を福祉目的税化し、国民の将来の不安を取り除くためのものとしたところで、それによる非ケインズ効果は、発現し得ないことは明白である。
「Kalecki on the causes of unemployment and policies to achieve full employment」
「Martin Wolf hits several nails on the head «Freethinking Economist」
「To Establish Sustainability of Government Deficits:
Methodology and Application」
「Interest Rates and Fiscal Sustainability」
「「デフレの罠」脱却のための金融財政政策のシナリオ」(岩本康志)
「財政再建と望ましいポリシーミックスのあり方」
「量的緩和政策と時間軸効果」
「財政赤字」
「財政運営の安定性」