ハードディスクを交換した後、それまでWindows 標準でついてきていたOutlook Expressメールソフトで受信したメールを見られるようにしたいと思われたことはありませんか?
受信したメールを見られるようにするには、以下の手順によります。
①交換したハード・ディスクをアダプターを使って、現用のコンピュータにUSB接続する
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交換のためはずしたハード・ディスクを現用のコンピュータにUSB接続するには、上記の写真のようなアダプターを使います。
二-三千円程度で「KAMA CONNECT」などの商品が入手可能のはずです。
このアダプターを使えば、クラッシュしたハードディスクに新たにOSを上書きしなくても、そのまま、新しいハードディスクに変えたほうが、手間隙かからなくすみます。
もっとも、それらの交換後のハードディスクの残骸が、部屋中に散らばるというデメリットはありますが(笑)
なお、ハードディスクがSATA形式の場合には、アダプター(1,500円程度)が必要になる場合もありえます。
これらの変換器を通して現用のPCにUSB接続しますと、マイコンピュータに、交換前のハードディスクがEドライブなどの形で認識されるはずです。
この認識されたハードディスクから、以下の手順に基づき、交換前のハードディスクからOutlook Expressメールソフトで受信したメールを読み取ることができます。
あるいは、交換前のハードディスクから、以下の場所にあるメールファイル「Outlook Express」をそのまま、コピーし、現用のコンピュータにファイル『再現メール』(例)を作り、貼り付けておいてもかまいません。
②隠しファイルとなっているファイルを読めるようにする。
「コントロールパネル」をクリックし、そのなかの「フォルダオプション」をクリックする
「表示」をクリックする。
「詳細設定」のなかの「ファイルとフォルダの表示」の下にある「〇すべてのファイルとフォルダを表示する』の丸印にチェックを入れる。
一番下の「適用(A)」を左クリックする。
③Outlook Express で受信したメールのファイルの場所を探す
C ドライブの
「Documents and Settings」
→「ユーザー名」
→「Local Settings」
→「Application Data」
→「Identities」
→「よく分からない英数字」
→「Microsoft」
→「Outlook Express」
ここに受信したメールが、暗号ファイルである.dbx(ディービーエックス)ファイルとしてあります。
①で「Outlook Express」をそのまま、コピーし、現用のコンピュータにファイル『再現メール』(例)を作り、貼り付けた場合には、この『再現メール』に受信したメールが、暗号ファイルである.dbx(ディービーエックス)ファイルとしてあります。
④.dbxファイルを開くソフトをダウンロードする
.dbxとは、Microsoft社のメールソフト(メーラー)である「Outlook」「Outlook Express」によって用いられるデータ保存ファイルに付く拡張子のことです。
.dbxファイルには、「受信トレイ」のように仮想的に作成されたフォルダのデータが収められています。
中身が符号化されているため、通常は読み取ることができません。
この暗号を読み取るには、DbxRescue(ver.1.05)というメールデータ救出ソフトが必要です。
DbxRescueソフトは、Outlook Express の壊れたデータファイル から、できるだけメールデータを救出することを目的としたツールです。
DBXファイル (OE5/6) 及び MBXファイル (OE4) に対応しています。
DbxRescueソフトは、こちら
http://www.vector.co.jp/soft/dl/win95/net/se271878.html
からダウンロードします。
⑤ダウンロードしたDbxRescueの使い方
まず、解凍したファイルのアイコン「DbxResq」をクリックします。
「DbxResq」というポップアップメニューが登場します。
画面のそれぞれの項目の説明と使い方は次のとおりです。
[ 入力ファイル ] : 対象となるDBXファイルを指定する。直接入力可。
(「ファイルを開く」ダイアログを使って指定する。
* エクスプローラなどからファイルをドラグ&ドロップしても可。)
[ 出力フォルダ ] : 救出したEMLファイルの出力先フォルダを指定する。(新らしくそのためのフォルダを作っておくといい)
(「フォルダの参照」ダイアログを使って指定する。
* 入力ファイルのファイル名に従って、自動的にフォルダ候補が表示される。
* 空欄の場合は、[入力ファイル]と同じ階層に新フォルダを自動的に作成される。)
[ ゴミフォルダ ] : ゴミデータと思われるファイルを出力するフォルダ名。
[ 解析モード ] : ファイル解析のレベル。
[ 簡易モード ] : 速度=普通。4バイトずつ解析。軽度の破損ならこれでOK。
[ 詳細モード ] : 速度=めっさ遅い。1バイトずつ解析するので覚悟が必要。
[ バッファ ] : メモリバッファサイズ。大きくすると処理速度が向上するかも。
(* 上げ過ぎるとスワップが発生しやすくなり、逆効果。ほどほどに。
[ 状況 ] : 処理状況の表示。
[ 開始 ] : 処理開始。せめて[入力ファイル]は指定してから。
[ 中止 ] : 処理中止。中断ではないので再開は不可。
[ 終了 ] : プログラムの終了。実行中の処理がある場合は強制的に中止される。
⑥具体的な進め方
まず、デスクトップに『再現メール』などとしたファイルを作ってください。
そこに、
「Documents and Settings」
→「ユーザー名」
→「Local Settings」
→「Application Data」
→「Identities」
→「よく分からない英数字」
→「Microsoft」
→「Outlook Express」
の最後の「Outlook Express」のファイルの中ですでに可視化している.dbxファイルをコピーし、この『再現メール』ファイルに貼り付けます。
次に、「DbxResq」のポップアップメニューにある「入力ファイル(I)」の「参照(B)」をクリックし、デスクトップの『再現メール』ファイルの中の再現したい.dbxファイルをクリックします。
次に、『出力フォルダ(O)』の参照をクリックし、『再現メール』ファイルを出します。
次に、『解析モード(M)』のうち、『簡易モード』の丸印にクリックを入れます。
次に『開始(S)』をクリックしますと、再現が始まります。
解析が終わりますと、『状況』の横に「***個のメールファイルを出力しました』とのメッセージが出ます。
『終了(C)』をクリックし、解析を終わります。
⑦出力後のファイルの見方
デスクトップの『再現メール』の中を見ますと、数字のたくさんついたファイルがいっぱい出ているはずです。
この一つ一つが、再現されたメールのファイルです。
あんまりいっぱい出てくるので、あらかじめ『重要メール』などとした出力用ファイルをそれぞれ作っておいたほうがいいかもしれません。(これらを後で、OutlookExpressソフトで再現する場合にも、この方が都合がいいようです。)
ファイルについている数字は「発見位置(16進数)」の数字です。
これらは、EMLファイル (*.eml) の形式です。
EMLファイルは Outlook Express にドラグ&ドロップすれば再取り込みが可能となります。
そのうちのひとつをクリックしますと、ひとつのメール・ソフトがひらき、ひとつのメールが再現されるはずです。
そのほかに『trash』(ごみのファイル)ファイルもあります。
これら、「ゴミの分別」についてですが、データ中に “To:” または “From:” が含まれない場合は、ゴミフォルダへ移動します。
日本語以外の環境で使用する場合、たとえば、英語で使用する場合は、”Japanese.lng” を “Japanese.ln_” に変更します。
それ以外の言語で使用する場合は、”English.ln_” を “< 言語名>.lng” にコピーしてから、テキストエディタで編集してください。
なお、ツリー構造は復旧できませんし、すべてのデータが復旧できるわけではないことも、ご承知ください。
⑧まとめて再現メールを見る方法
以上の手順で、再現されたメールのひとつひとつを個別にクリックすれば、メール・ソフトが立ち上がり、見ることができますが、再現メールの数が多い場合は、大変です。
そこで、以下の方法で、再現された多くのメールを一括して見ることができます。
EdMaxというメーラー(フリー版)をダウンロードしてください。
EdMaxにてアカウントを作成
アカウント内に適当なフォルダを作成(EdMaxを開き、上の「ファイル」→「新規フォルダ」→左のメニューに出たフォルダに名前を入れる)
そのフォルダの上に、emlファイルをまとめてコピペしドラッグしてインポート
(マウス左クリックで「.eml」フォルダをまとめてコピーしてきたものを、左側のメニューの中の新しくできたフォルダの上までドラッグしてきて、インポートしたいフォルダの上で左クリックをはずす。→「インポート」というポップアップが出てくる→出てきたポップアップメニューの中の「○ eml(*eml)」の丸にチェックを入れる。→右の「OK」をクリック→フォルダの中にメールがインポートされていく。)
作ったフォルダの場所は、「マイコンピュータ」→「ローカルディスク(C)」→「ProgramFiles」→「EdMax」→「Account」→「Account」→「受信」→「新規作成ファイル」)
インポートしたメールを書き出す前に
設定 > メーラー設定 > 表示 > ヘッダカスタム表示
にて通常表示するヘッダをSubject(件名)とDate(送信日時)にしておく。
フォルダ内のメールを「すべて選択」
ファイル > エクスポート
形式は「テキスト(通常ヘッダ付き)」を選択
ファイル名を記入し保存
HTMLメールはソースコード(HTMLタグの付いたテキスト)がそのまま保存
⑨おわりに
以上がDbxRescueというソフトを使った、Outlook Expressメールの再現方法です。
なお、このメール再現は、以前にメールのファイルの容量圧縮のために「フォルダの最適化」 を行った後の場合では、再現できません。
その他、最新版の配布と、掲示板でのサポートは以下のURLにて行っています。
http://www.geocities.jp/zzuketta/
現在、Outlook Expressというメール・ソフトは、Windowsにはバンドルされておらず、代わりに、 [Microsoft Office Outlook] に移行しています。
Outlookの場合ですと、たとえデータが壊れても付属の scanpst.exe すなわち「受信トレイ修復ツール」で、簡単に強力に修復できます。
このように再現で苦労したあなたですが、今後は、メール内容の再現に厄介なOutlook Expressは使わないにこしたことはないのですが、そのほかのメールソフト( [Mozilla Thunderbird]、 [EdMaxフリー版]、 [電信八号]、 [Sylpheed]、 [Pochy]、 [Becky!]、 [EdMax]、 [AL-Mail]、 [Eudora]、 [Shuriken]、 [秀丸メール(旧・鶴亀メール)])などを試してみるのも一方法かと思います。
私は、この中の [Becky!]を使っており、その後、快適です。
日本の民主党政権が目指している農業者戸別所得補償というスキームは、その当事者に言わせると、EUの直接支払いを雛形にしたというのだが、その雛形となったというEUの直接支払い自体、すでに、大きな変貌を遂げている。
現在の日本の農業者戸別所得補償スキームを見る限り、その雛形は、現在の2003年のFischer reform(New Cap)ではなく、その前の改革以前の1992年のMacSharry reforms(Old Cap)であると見られる。
2003年のFischer reform(New Cap)において、EUが改革を目指したポイントは、それまでのマーケットを通して(Market Measures)支払う共同市場組織(CMOs)と呼ばれるスキームや、家畜の個体別支払いや地域限定支払い(Coupled Payment)から離脱した、生産とは連動しない、デ・カップリングした支援であり、シングル・ペイメント・シェーマ(single payment scheme=SPS)といわれるものであった。
シングル・ペイメントの目的は、農家に、生産調整を許容しながら、何を生産するかを農民の意思に任せつつ、自らの能力やスキルに応じた安定した収入を得させるためのものである。
シングル・ペイメントを農民が得るためには、一定の資格を必要とし、この資格は、これまでの生産実績や、計画初年度の実績によって決められる。
このシングル・ペイメントに加えて、農家は、蛋白作物、コメ、ナッツ、馬鈴薯でんぷん、牛乳、乳製品、種子、綿花、オリーブ、牛肉、子牛肉などについては、2012年終了を前提として、特別支援措置がある。
さらに、一定のシーリングの元に、シングル・エリア・ペイメント(Single Area Payment Scheme=SAPS)と呼ばれるものがある。
なによりも、2003年のFischer reform(New Cap)において特記すべきは、クロス・コンプライアンス(Cross-compliance)という概念が設けられたことにある。(こちらもご参照)
すなわち、農家が直接支払いを受けるためには、公衆に寄与し得、動植物の健全な成長に寄与し得、環境と動物福祉に寄与し得、農家自ら所有する農地をよい農業条件と環境条件に保つことに寄与し得るための、一定の条件に適合しなければならない、ということである。
その基準に達しない地域なり農家に対しては、支払いの総額は減少しうるということになる。
また、これは牧草地についても適用され、農業用地のトータルの一定割合に牧草地が保たれる必要がある、という制約も加わる。
しかし、この現在の2003年Fischer reform(New Cap)も、すでに次のような厳しい批判にさらされている。
すなわち、クロス・コンプライアンスによって正当化された一般支払いよりも、必要とされる公共財を生産する農家へのターゲット支払いを進めるべきである、とのStefan Tangermann氏らによる批判である。
氏は、その意見で、現在のニューCAPによる直接支払いは、EUの財政的理由で、2013年以降は立ち行かなくなるとしている。
その上で、氏は、2013年以降のCAPのスキームを模索する上で、現在のCAP予算を農村開発のための個々の施策に振り向けるべきである、と、主張している。
EU圏の財政悪化によって、農家への直接支払いに対する社会的許容を鈍らせているのは、農業部門以外の部門の経済的疲弊化である。
農業部門のみ、どうして優遇されるのか?との不公平感が農業外部門において充満しつつある。
参考「How can direct payments be justified after 2013?」
Konrad Hagedorn氏も、農業の多面的機能インセンティブに直接支払い政策を選んだ場合、取引費用では、直接支払い型インセンティブは、インセンティブではベストな選択とはいえず、面的な制度設定変更のほうが効果はある、としている。
参考「Multifunctional agriculture : an institutional interpretation 」(Hagedorn Konrad )(markets:understanding the critical linkage)(October 28-29, 2004)
このようなEUにおける直接支払いの議論経過を見てみると、日本でようやく始まるクロス・コンプライアンスなき、原初的形態での直接支払い=農業者戸別所得補償スキームには、EUとは二周も三周も遅れたスキームの稚拙さが見られる。
日本においても、直接支払い政策に移行すればするほど、ミクロの面での不公平間が強まってくる。
農業に対する直接支払いが社会的に是認されるのは、その支払いが環境などの外部経済に資するというクロス・コンプライアンスの条件に適合してのことであるが、日本でこれから試行しようとしている在来型のゼネラル・ペイメントでは、そのトレードオフとなる社会効果が期待できない。
農業保護の甘い論理構成として、緑資源に資するから、とか、農業は自然と一体だから、といった論理は、クロス・コンプライアンスの点からは、もはや通用しない。
クロス・コンプライアンスの観点からなら、「では、その論理なら、環境に直接投資したほうが」、ということになってしまうからだ。
また、カロリー・ベースでの食料自給率の向上は、消費者・国民全体に資する、と主張する向きもある。
では、カロリー自給率の向上が、農業に対する直接支払いのクロス・コンプライアンスとして位置づけられうるか、といえば、納税者でもある農産物消費者にとっては、きわめてメリットの少ない、対価といえる。
つまり、カロリーベースで低い自給率をいち早く改善できるのは、高い飼料自給率だからだ。
カロリーベースで低い自給率をいち早く改善できるキーマンは、納税者でもある農産物消費者に協力を求めるよりも、まず低い飼料自給率の改善からはじめるべき農業者自身にあるからだ。
プロゴルファーの石川遼君を動員してのカロリーベースの食料自給率向上キャンペーンは、、茶の間の納税者でもある消費者に向けられるべきなのではなく、まず、カロリーベース自給率を大きく左右している飼料自給率向上の鍵を握っている畜産当事者に向けられるべきものだ。
農家に対する直接支払いの政策目的は、決して、農家の生活安定とか農家の消費性向上昇などにあるのではなく、あくまで、クロス・コンプライアンスにもとづいた外部経済の向上にあり、そのことによる行政効果と政府支出の軽減が、トレードオフの対極にあるということだ。
今後も、農家に対する直接支払いが在来型のゼネラル・ペイメントにとどまる限り、それは、愚民政策であり、ポピュリズム政策であり、ばら撒き政策との揶揄・そしりを免れない、ということだ。
そして、これらのスキームに永続性がないことを一番知っており、それについて一番不安を抱いているのは、ほかならぬ農民自身である。ということだ。
先日のFOMC発表後の急速な円高について、その原因が、アメリカの景気後退予測にある、などと言われているが、ドル売りの説明にはなっても、円買いの説明とはなっておらず、その指摘は本質を突いていない。
日本では、マスコミでも、ドル円相場だけをテレビで発表するせいか、円高になれば「円高ドル安」との言葉を使うが、確かにドルは円に対しては弱いが、では、他の通貨に比してどうかといえば、他の通貨に対しては、強いのである。
つまり、円に対してだけ、ドルは安く、その他の通貨に対しては、決して安くはないのである。
今、すべての通貨に対して、強いのは円であり、弱いのはユーロなのだ。
今回の円高の要素としては、次のようなものがありうる。
①円高と連動している日米国債の金利格差が、今回のFOMC決定後縮小しているという要素
②リスク回避通貨(Risk Averse Currency)として円がスイスフランとともに投機筋から選好されているという要素
③業績予想の前提になる産業界の想定為替レートに比較して相対的に円高となっているという要素
④ユーロ圏でのソブリン・リスク増大の余波と、ソブリンCDSスプレッド(ソブリン・クレジット・デフォルト・スワップ-Sovereign Credit default swap)拡大によるユーロ安・円高という、ドル圏事情とはことなるユーロ圏事情での円高という要素(参考-Markit)
⑤世界各国が自国通貨安について、為替介入せず、慇懃な無視をする方針に変わってきているという要素
今回のFOMCの発表後、ドルが売られ、円が買われたのは、FOMC声明でMBS満期到来分を米国債に振り向けるとの決定で米国債の金利が低下し、円高につながる日米国債金利差が縮小したことが大きい。、
ちなみに、日米2年もの国債の利回り格差は、FOMC声明前には、日本国債0.16 米国債0.65 であり、 日米利回り格差0.49であったものが、 FOMC声明後には、 日本国債0.14 米国債 0.50 となり、日米利回り格差0.36となり、これによって、日米の利回り格差は0.13縮小した。
参考
「米国債2年もの利回り推移チャート」
「日本国債2年もの利回り推移チャート」
「米国債10年もの利回り推移チャート」
「日本国債10年もの利回り推移チャート」
また、ロンドン銀行間貸出金利であるRIBOR金利のドル建てと円建ての金利格差についてみても、8月2日と8月11日比較で、翌日物0.00593、3ヶ月もの0.06031、6ヶ月もの0.07619それぞれ縮小している。
参考
「LIBOR 日本円金利推移サイト」
「LIBOR 米国ドル金利推移サイト」
ここで円安時代を振り返ってみよう。
円も金利も安いときに、円ベースで借り入れて、これを円売りドル買いで、ドルに換えて、運用資金をドルロングポジション、円ショートポジションにして、円を売り持ちにしておく。
その後の円相場にもよるが、調達時の低金利と、円をドルに買えるときの為替差益と、円が安くなることで、ドルロングポジション、円ショートポジション自体も、利益を生み出すという、一挙三得が得られてきた。
その後、日本の政策金利は、これ以上下げられないという非負制約の元に事実上金利政策の無効化を迫られたが、リーマンショック以降、世界各国の金利の低下傾向が始まり、世界の金利と日本の金利との格差が縮まってきた。
こうなると、それまでの円キャリ時代の円ベースの借り入れを返そうとする動きが強くなる。
円ベースの借り入れ返済金を確保するために、ドル売り円買いが急激に増える結果、円があがってきた。
円が上がることによって、今度は、ドルロングポジション、円ショートポジションに損が出始めるので、急速にポジション解消にはいるうごきがでてきた。
ポジション解消によって、更なる円高に見舞われ、円キャリートレードの巻き戻しによる動きがいっそう強くなってきた。
これが、いわゆる円キャリのアンワインド現象である。
また、世界の高レバレッジ規制が、これに輪をかけてくる。
では、なぜ、日米の金利格差は縮小してきたのだろうか?
その質問は、逆に、「では、なぜ、これまで、日米の金利格差は広く温存され続けてきたのだろう?」という疑問にそのままつながる。
ここに、5年前に私が書いたブログ記事「日米金利差放置を求めるグレン・ハバードさんの意図は、ドル暴落阻止メリットにあり。」がある。
この時期は、まさに円キャリ全盛期時代の円安時代である。
しかし、このころには、すでにアメリカの為替政策に変質が見られ始めている。
本来、アメリカにとってドル安は経常収支の赤字につながり、レーガン時代の「双子の赤字」のように、巨額な財政赤字を抱えていれば、さらなるドルの暴落を招くものであるから、ドル安は阻止すべきものであったはずである。
しかし、スノー財務長官の時代にドル安容認発言がされてから、そのドル安阻止一点張りの方向は、変化してきた。
ドル安であっても為替介入せず、慇懃な無視(ビナイン・ネグレクトThe Benign Neglect of The Dollar )をする、という方向に変わってきた。
その方向転換の大きな要因になったのは、中国という巨大な市場の出現であったものと思われる。
中国市場という巨大な輸出入のバッファーがあることで、双子の赤字に対する金利、ドルの敏感な対応を不要にしてきた。
双子の赤字問題と、ドル高ドル安の問題とが、セパレートされてきたともいえる。
これまでは、自国通貨安となれば、輸入される価格が高くなって、輸入が減少してき、結果、貿易収支赤字は改善に向かったたが、今は、自国通貨安となっても、輸入インフレは起きないのだ。
一方、いくら巨大な財政赤字があっても、いくら巨大な貿易赤字があっても、そのこと自体で、自国通貨の高安とは連動とならない。
このように、アメリカの双子の赤字の存在自身が、もはや、ドル・円を動かさない要因になってきていた。
また、日米の金利格差が存続している以上、ドルの暴落はありえない、という安心感もそこにあったのだろう。
このように、ドル安の大きな要因は、アメリカが、もはや、双子の赤字解消のために、わざわざ、ドル高を志向する必要がなくなり、ドル安でもって、世界の経済の中での弱いふり競争をすることに大きなメリットを見出してきたからである。
だから、一人日本だけが円高阻止の国際的な協調介入を呼びかけても、G7国はどの国ひとつとして動かないのだ。
これまで見てきたように、まさに、今回の円高の要因は、日米金利格差の縮小によるところが大きい。
日本より政策金利が高い国であれば、自らの裁量で自国の政策金利を下げることで、それより低位にある他国との政策金利の金利格差を縮小させ、自らの国の通貨安に導くことができるのだが、すでに、これ以上金利を下げることができない非負制約のもとにある日本の場合には、マイナス金利政策でも採らない限り、それができない。
つまり、自らの裁量ではもはや自らの通貨水準をコントロールし得ない日本の円という通貨に対して、他の国は、リスク回避の逃避港としての限りない魅力を、そこにもとめているはずなのだ。
その意味で、他国にとっての円という日本の通貨は、
金利水準の非負制約に『追い込まれた通貨』、
自らの裁量を著しく制約された『去勢された通貨』、
としての都合の良さを備えた通貨としてみなされているのである。
キャリー・トレーダーが好む危機回避通貨(Risk Averse Currency)としての条件は
①アメリカとの利率の乖離が下方に著しく少ない国(スイス0.日本マイナス0.15)の通貨
②商品相場との連動性が少い国(オーストラリアとカナダとニュージーランドは失格)の通貨
であるといえる。
では、ほかに、日米金利格差を広げられる余地は、日本にあるのだろうか?
残念ながら、日本の政策金利が非負制約の下にあり、さらに、デフレが実質金利(「名目金利-インフレ率」であり、デフレの場合は、デフレ率の実数を名目金利に加えた数字)を押し上げている以上、皆無である。
もしあるとすれば、次の二つの選択肢しかないように見える。
ひとつは、マイナス金利を日本が志向すること(ご参考「デフレ・スパイラルから逃れられうるマイナス金利のスキームを日本でも検討すべきとき」)であり、もうひとつは、為替介入の変形として、日銀による米国債購入を志向すること(参考「「日銀による米国債直接購入」というバイパス的為替介入スキーム」)である。
しかし、現在の日本の弱体政権では、これら、いずれも、法律改正を伴う荒業には耐えられ得まい。