笹山登生のウォッチ&アナライズ –


2009年11月22日

覚書-専門家が、ウクライナのH1N1新型インフルエンザ・ウイルスのD225G変異が肺に集中していることに関心を持っている理由

Category: 未分類 – Tatsuo Sasayama – 6:45 PM

このサイトにおいでいただいた方へ

この情報は11月22日時点での情報です。
今回のウクライナを初めとしたH1N1新型インフルエンザ・ウイルスのD225G変異につきましては、このサイト以外にも、私のブログ記事では、下記で取り上げておりますので、あわせてご参照ください。
あたらしい記事順です。

D225G変異H1N1新型インフルエンザ・ウイルスに対してワクチン不全ありとWHO確認 (11月28日時点)
ウクライナ・ノルウェイ・香港共通のH1N1新型インフルエンザ・ウイルス変異について(11月25日時点)
ウクライナで大量死亡の新型インフルエンザ・ウイルスは、肺組織で集中し変異していることが判明(11月19日時点)
ウクライナでH1N1新型インフルエンザ感染者が呼吸器疾患で大量死亡 (11月9日時点)

2009/11/22(Sun)

①鳥インフルエンザ・ウイルスはシアル酸がガラクトースにα 2,3 結合したもの(SAα2,3Gal)を認識し、
ヒトインフルエンザ・ウイルスは主としてシアル酸がガラクトースにα2,6結合したもの (SA α2,6Gal )を認識する。

②ヒトのレセプターの分布は、鳥インフルエンザ・ウイルスの場合と、ヒトインフルエンザ・ウイルスの場合とでは異なる。

③ヒトインフルエンザ・ウイルスの場合のヒトのレセプターの分布は、、ヒトの上部気道の上皮細胞にしかない。

④鳥インフルエンザ・ウイルスの場合のヒトのレセプターの分布は、ヒトの呼吸器の深部(呼吸細気管支と肺胞細胞の一部)に、多く存在する。

⑤このヒトの呼吸器におけるヒト・ウイルスと鳥インフルエンザ・ウイルスのレセプター分布の相違は,H5N1 ウイルスが人から人へ伝播しにくい事実にも関係している。

⑥ヒトが鳥インフルエンザ・ウイルスを効率よく伝播するためには,HA がヒト・ウイルスのレセプターを認識できるように変異する必要がある。

⑦ヒトが、鳥インフルエンザ・ウイルスに感染すると、重篤な下部呼吸器障害を引き起こすことがあるのは、このレセプターの分布(呼吸器の深部に鳥インフルエンザ・ウイルスのレセプターがある。)の違いと、ウイルスの変異によるところが大きいと見られる。

⑧今回、ウクライナでの新型インフルエンザ感染者が、いずれも重篤で、しかも、その死亡者を含めた重篤者の肺でのウイルスが、いずれも、D225G変異をおこしおり、上気道でのD225G変異が1つしかなかったということが、上記のことと関係あるのか。

⑨ポジション225変異は、H3N2によく見られるアマンタジン耐性変異であり、H1N1においても、劇症性を付与しうる変異であるされている。

アマンタジン耐性変異であることと、ウクライナとの関係はあるのか?

⑩また、1918年のスペイン風邪において、採取された二つのウイルス A/New York/1/1918 と A/London/1/1919 にも225において、同様のD225G変異が見られたこととの関係はあるのかどうか。

⑪1918年のウイルスのシーケンス分析において、受容体特性は、「SA α2,6Gal」 と、「SAα2,3Gal」と、「SAα2,3GalとSA α2,6Galとの混合」との三つのタイプが見られた。

⑫受容体特性の「SAα2,3Gal」から「SA α2,6」への変化自体は、劇症性を付与するものではない。
「SAα2,3GalとSA α2,6Galとの混合」についてはどうか?

⑬CDCのNancy J. Cox 氏をはじめとする59人からなる研究チームのH1N1 新型インフルエンザウイルスの遺伝子分析によれば、8つのセグメントのうち、ヘマグルチニン(H)を含む3つの遺伝子セグメントは、1918年のスペイン風邪のH1N1に由来するものであり、その後、ずっと豚に存在していたものであるが、その間においても、変異はしていなかったとしている。
遺伝子セグメントでは、ポリメラーゼB(PB)遺伝子はヒト由来、他の二つは鳥由来であったとしている。
また、1918年のH1N1とH5N1とは、毒性があることを示す遺伝子セグメントを、同じNS1セグメントにおいて有しているが、今回の新H1N1は、そうではないという。
感染性を示す遺伝子セグメントにおいても、今回の新H1N1は、1918年のH1N1にあったものを失っているという。

参考 関連する私のブログ記事

やはり新型ではなかった、今回のH1N1新型インフルエンザ・ウイルス
ウクライナで大量死亡の新型インフルエンザ・ウイルスは、肺組織で集中し変異していることが判明
ウクライナでH1N1新型インフルエンザ感染者が呼吸器疾患で大量死亡

その他関連サイト
Role of sialic acid binding specificity of the 1918 influenza virus hemagglutinin protein in virulence and pathogenesis in mice.」
virus: alpha2,6-sialyllactose-avian flu citations

 

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