基本的な考え方が整理されないままに、民主党新政権では、選挙目当ての直接型支払いのスキームが横行しているようだが、ここいらで、負の所得税(”negative income tax”)と直接支払い( “direct payment”)と所得再配分(”income redistributing”)との考えについて、整理してみる必要があるのではなかろうか?
篠原孝さんの今日のブログ「フランスの少子化対策の解決の手法」なんかを見て、そう感じた。
本来、所得税による所得再配分(”income redistributing”)機能が限界に達した場合、初めて、負の所得税(”negative income tax”)と直接支払い( “direct payment”)のスキームが登場するはずなのだが、その臨界点-限界税率(Marginal Tax rate)がゼロの状態-にまで達しない段階での直接支払いによる負の所得税的なスキームが横行すると、歪曲された所得再配分機能のスキームとなってしまうのだが。
フリードマンが志向した負の所得税とは、累進課税をフラットにする代わりに、正の所得税と負の所得税とによって、浮きの水準(フローティング)が調整でき、課税水準のシンプル化によって、徴税コストを最小限にする、ということなのだが。
累進税率を残したままでの給付付き税額控除は、=負の所得税とはいえないのである。
現在の日本の状況では、累進課税構造と負の所得税的な直接支払い的補助金のオンパレードとなってしまうと、徴税コストはそのままにして、さらに、直接支払い的なトランザクションコストが高い歳出構造となってしまう。
これによって、国民からの貴重な歳入が、途中段階で、事務費支払いなどの膨大な事務コストによって、リーケージの多いものになってしまい、従って、歳出効果も限定的なものとなってしまうおそれがある。
ちなみに、こんなケースを考えてみるとよくわかるだろう。
「生活保護を受けていて、子供手当てをもらっていて、農業者戸別所得補償を受けていて、しかも、失業中なので、失業手当ももらっている」なんて、措置三冠王的ケースだ。
本来は、これらの措置的な支払いは、負の所得税一本あれば、これですむものが、各種に分岐した直接支払いの受け取りによって、国家財政的には、きわめてロスの多いものとなってしまうのではなかろうか。
この場合、欧米でのドネーション(Donation)の機能が、これらのトライアングルの間の緩衝バッファーセクターになりうるはずなのだが、日本には、それがない。
以下、次のトライアングルで、正月休みの間、ちょっと、考えてみたい。
皆さんもどうぞ。
「”negative income tax” と ”income redistributing”」