農業者戸別所得補償のスキームと受託農業経営事業との関係について、ちょっと心配になってきましたので、農業協同組合受託農業経営事業と所得税との関係を以下に見てみますと
受託経営事業の場合
受託経営事業収益=委託者事業所得(農業所得)
(受託経営事業から生ずる損益は、委託者に帰属)
委託者が、受託経営事業にかかる農耕に従事したことにより、受託者から受ける報酬=委託者または家族の給与所得+委託者の事業所得(委託者が負担する受託経費のうちの作業費)
所得者の判定=委託者(事業主が委託者と異なる場合には、その推定した事業主)
収入金額および必要経費の計算
農業所得の収入金額=委託者に通知された受託経営事業からの配分見込額-必要経費(当該委託農地にかかる固定資産税+受託経営事業の用に供された減価償却資産の償却費)
委託耕作の場合
委託者の事業所得(農業所得)=委託者の当該農地から生ずる収益(当該農地の受託耕作により委託者から受ける報酬を含む。)
受託農業経営に係る損益の帰属及び損益の委託者ごとの算出方法
総販売額(共済金等を含む)×〔基準収量にもとずく委託者の収量の合計÷基準収量にもとずく受託農業経営による収量の合計〕-受託経費
受託経費の計算
資材費及び共済掛金(面積比例)+事務管理費(面積比例)+水利費その他の負担金(当該委託農地の負担実額)+カントリーエレベーターその他の乾燥調製施設の利用料及び販売経費(収量比例)
以上ですが、戸別所得補償となりますと、受託農業経営事業のほうでも、「販売金額< 生産コスト」の利益が出ない場合となりますが、この場合も、この公式と平仄を合わせないといけないことになるんじゃないかと。
つまり、この場合は、委託者が得た戸別所得補償金額の一部を、今度は逆に、受託者に対して、逆配分しなければならないことになりますよね。
となると、こちらの受託農業経営事業のほうでは、面積割と、収量割と、実額割と、収量ベース、販売ベースなどが、ごっちゃになって、果たして、戸別所得補償においての、受託者と委託者との公平性確保はできるんだろうか?
戸別所得補償の方では、補償金は農作業の受託組織に交付されるとしているようなのですが、これだと、上記の国税庁の見解での「受託経営事業から生ずる損益は、委託者に帰属」と背馳してしまいますね。
さらにいえば、転作団地の受委託などの場合には、受託農家の水稲作業と委託農家の水田とを連担させて転作田とするわけで、連作障害を避けるために、ブロック・ローテーションを組ませることが多いんじゃないかと。
この場合、どうやって、各年度の米・大豆などの戸別所得補償の配分をするのか、ちょっと気になるところです。
これらの集団転作で、とかく、いざこざが起こり、結局は、集団崩壊につながり勝ちなのが、大豆という損なルーレットがいつ回ってくるのか、などという、ローテーションの組み方を原因として起きる場合が多いからです。
この点、もうちょっと検証しなければなりませんが、
ざっと見て、戸別所得補償のスキームは、これらの受委託スキームとバッティングしてくる点が多いように見えますが。
どうなんでしょう?
まあ、頭がいい飯米農家は、逆配分のデメリットから逃れるため、いち早く、受委託事業からめけ出して、飯米偽装農家を演出する輩も出てくるかも知れませんがね。
つまり、協同組合原則の「集まって強くなる」んではなくて、「群れないほうが、メリットがある」という考えが主流になりかねない、ということへの懸念ですね。