笹山登生のウォッチ&アナライズ –


2009年11月19日

直接支払い型インセンティブにおけるトランザクション・コストの増嵩

Category: 未分類 – Tatsuo Sasayama – 8:31 PM

民主党政権になってから、新しいスキームのようにもてはやされる直接支払い型補助金なのだが、私がずっと疑問に思っているのは、このスキームの限界は、徴税コストと、補助金配布コストとが、ダブルにかかるのではないのか?との点についての疑念であった。

このサイト「Multifunctional Agriculture: an Institutional Interpretation 」(Konrad Hagedorn )は、私の疑問にいくらかでも答えてくれたサイトである。

ここでは、農業の多面的機能に対するインセンティブとして、ターゲット政策と、直接支払い政策とを選んだ場合、その取引費用(トランザクション・コスト)において、直接支払い型インセンティブは、価格支持政策に比べると、インセンティブの選択においては、ベストの選択とはいえない、としている。

むしろ、面的な制度設定の変更によったほうが、インセンティブ効果はある、としている。

確かに、単純に考えてみれば、先の定額給付金の支払いにおける事務費や送金手数料を含めたトランザクション・コストによって、誰が潤ったかをかんがえてみればよくわかるのだろう。

また、さらに言えば、直接支払いをするためのソフトインフラのあるなしが、これらのトランザクション・コストの低減に寄与するのだろう。

たとえば、小切手支払いの可能性とか、対象者選択のための背番号制などのあるなしが、送金手数料事務費の低減に大きく寄与しうる。

それらのインフラの整備なしで、単純に、直接支払い型補助金に依存するということは、ざるに水を注ぐのと同じ、きわめて、リーケージの多いインセンティブとなるのだろう。

私は、減税か、直接支払いか、との選択のほかに、日本型ドネーションのスキームが必要であると、かねてから思っている。

キリスト教的なチャリティやドネーションの習慣がない日本においては、寄付税制の充実が欠かせないように思える。

これは、国税当局にとっては、徴税の邪魔者スキームとしかとらえられないかもしれないが、今の世の中、日本型ドネーション・システムのスキームは必要に思える。

冠つきの寄付金控除の拡大をすることのほうが、派遣切り・ホームレス対策には有効なのである。

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