笹山登生のウォッチ&アナライズ –


2010年2月1日

「賢人への信頼性揺らぐダボス会議」とのニューヨークタイムズ紙記事

Category: 未分類 – Tatsuo Sasayama – 2:40 PM

注目の今年のダボス会議も、終幕したが、今年は、中国の意気軒昂ぶりと、金融規制に対する賢人の無策ぶりのみが、際立つ会議ではあった。

その辺の事情を、ニューヨークタイムズ記事『Leaders in Davos Admit Drop in Trust』では次のように伝えている。

以下は、この記事の翻訳である

今年のダボス会議で、持ち帰られる成果があったとすれば、それは、政府や企業、とりわけ銀行業に対する信頼は、アルプスのリゾート地の氷結した街路で、確かな足元を確保するのと同じように、心もとないものとなっている、ということだ。

金融制度が、一年前のダボス会議で多くのスピーカーが垣間見たような深淵からは引き戻されえたということについては、全体的に安堵が広がっていた。

イギリスの銀行であるHSBCのStephen K. Green氏が、「信用においては、巨大な崩壊があったにせよ、われわれが一年前にいたところよりも、いい場所にいる。」という言い方をしたように。

世界経済協議会における四日間にわたる非公式会合において、銀行家、中央銀行そして政治家は、マーケットや銀行を規制するためのベストの前進策についての合意には、なんら至らなかった。

多くの銀行家のように、グリーン氏は、『大西洋の両サイドにおける政治的イニシアティブ』の必要性を認めはしたが、政治家に、その領域を譲ろうとはしなかった。

『これは非常に重要なことであり、我々は、赤ん坊をあったかい風呂水から投げ出すことはしない。』と彼は言った。

金融サービス産業のメンバーは、如何に彼らが、公的な評価をうしなかったかということに気づき、悲しげに見えた。

民間株式会社が、 オバマ政権の銀行規制案を支持するかどうかについての論評において、企業買収グループCarlyle Groupの最高経営責任者であるDavid M. Rubenstein氏は、次のような軽口をたたいた。

「我々のポジションは、決まっていない。なぜなら、 もし、我々が賛成を表明すれば、このオバマ提案はとおらないであろう事を、我々は、 恐れているからだ。」

おそらく、巨満の投資家やGeorge Sorosは、もっとも簡潔に、その両価性を足し算している。

彼は言う。

「あなたは、銀行規制を最小限にとどめたいとおもっているのだろう。 なぜなら、規制は、マーケットにゆだねるよりも、悪いものとなるからだ。しかし、あなたは、その規制なしで済ますことはできない。」

だから、これまで、新しい国際通貨制度やドルに替わる新しい準備通貨の創設をするよう促してきたフランスのNicolas Sarkozy大統領から、この雪いっぱいの会合の依然中心となっている、怒れる労働組合の代表や、スーツを着込んだ白人のビジネスマンにいたるまで、ひとつの確実性は、次なる不確実性へとつながっているようにも見えるのだ。

多くの有力な参加者は、次のように言う。

「この三年間の間に経験した金融恐慌、救済、 解決策の模索は、前例のないものであった。」と。

このこと自体が、解決策の模索を困難にしているのだ。

すなわち、いつをもって、混乱から抜け出したとするのか、我々は、その時期をどう定義づけるのか?

そして、西においては、オバマ大統領に見るように、政治家に対して、広範囲にわたる痛みを和らげるようにとのプレッシャーが増している。

最近のオバマ大統領のウォール街への攻撃は、実体経済と雇用に焦点をあわせた一般教書とともに、このダボス会議での討論に対しても、一定の背景となるものを与えている。

オバマに同行して、このダボス会議に来た唯一の政府高官である、オバマ大統領の経済顧問であるLawrence H. Summers氏は、土曜日に開かれた満員の聴衆の前で、オバマ大統領が、なぜ、この金融機関規制問題を最優先にしているのかについて、今のアメリカにおいては、25歳から54歳にいたる人の五人に一人は、失業者であるということを特筆することで、その理由を示唆した。

アメリカ経済は、2009年の最後の第四半期において、力強く成長したものの、いつまでも続く失業は、彼が述べたように『統計上の回復と人的不況』の状態をうみだした。

経済の回復につれて、これまで7か8あったものが、1に低下すると予測するのは、理にかなったことではある、と、 彼は言う。

しかし、1960年代半ばには、その年代では、95パーセントの雇用を確保していたことをおもえば、今の事態は、それとはあまりにもかけ離れている。

これらと対照的に、同じ討論でも、中国人民銀行副総裁の朱民氏のプレゼンテーションは、楽観的なものであった。

「中国にとっては、この一年は、いい年であった。」

朱民氏は、統計数字をすらすらというまえに、 こうきりだした。

その統計数字は、エコノミストの心すらギョッとさせるものであった。

たとえば、 鉄鋼生産における二億トンの過剰生産能力は、2008年のEU加盟27カ国において作られる鉄鋼一億九千八百万トンにほぼ等しいものである。

今年の中国のダボス会議に向けた代表団は、この40年のダボス会議で最大のものであった。

この中国の代表団は、次期首相と予想されている中国副総理李克強氏によって、率いられたものだ。

彼らの風貌には、二年前のそれよりも、より、自信にあふれたように見え、それは、ダボス会議の参加者の多くが言うように、、世界の力の西から東、とくに中国への明らかなシフトの反映である。

この西から東への力のシフトの効果や、それが、東西の協力につながるのか、それとも対立につながるのか、は、西の政治家、とりわけアメリカの政治家の関心事である。

中国は、『信頼こそ、このダボス会議での答えである』とも言う。

「中国人とアメリカ人とヨーロッパの人々と、われわれ中国人との間には、相互理解が欠けている」と、中国の元政治家で北京のシンクタンクCIFF中国國際金融論壇の成思危氏は言う。

「これらの関係を安定的なものに保つ唯一の方法は、相互の信用を構築することである」と成思危氏は言う。

しかし、世界の力のバランスが中国と南アジアに傾くことで、ヨーロッパやアメリカや日本は、自らの経済力の低下や急速な失速を目の当たりにすることになる。

相互信頼の構築は、このような痛みが続くであろうとの恐れや、現世代の労働力世代が親の時代よりも繁栄しないことへの恐れがある限りは、これまで以上に難しいことであろう。

世界の多くは、この力の西から東へのシフトを気にかけているし、それをどう予測していいのかわからないでいる。

「世界を支配するスーパーパワーから多極世界への過渡期においては、多くの不確実性を見なければならないし、多くの偶発性も見なければならない。」と、ドイツ銀行会長のJosef Ackermann氏は言う。

ダボス会議におけるいくつかの討論から生じている困難性の一部は、グローバリゼーションや相互関連性の進展にもかかわらず、 解を 見出すことが、個々の国家や企業や銀行の肩に、大きくかかっているということだ。

世界経済の方向をコントロールする本体として、これまでのG7に取って代わって出現したG20へと相互団結することで、政治家やエコノミストは、アジア最初の会議となる今年11月に韓国ソウルで開かれるG20会議に先立って、6月までに、 政策提案を策定するものと思われる。

アメリカやヨーロッパにおける失業者たちとは程遠い存在であるこのグループが、これら失業者たちの痛みを和らげることができるかどうかは、わからない。

しかし、 Ackermann氏は、次のように言う。

「いち早く、 このシステムに自信を回復させる何かが起こらなければならないのだ、ということを、我々のすべては知っているのだ。」と。

By ALISON SMALE

Jack Ewing and Katrin Bennhold contributed reporting.

以上、 翻訳終わり

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